マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【授業メモ】「西洋哲学の起源 第14回 トマス・アクィナス」

放送大学 桑原直己先生

1.トマス・アクィナスの生涯

・1225頃南イタリア小領主の末子 モンテ・カッシノ修道院ナポリ大学 アリストテレス哲学とドミニコ会に出会う →ドミニコ会修道院→アルベルトゥス・マグナスの弟子
パリ大学に派遣→イタリア各地を歴訪 ドミニコ会の学校で教授と著作活動→パリ再派遣→教皇の神学顧問を要請されたが、公会議に出席する途中1274年没す

2.トマスとアリストテレス哲学

・第2回パリ大学時代、左右両翼の論敵と論争 プラトン的・アウグスティヌス的な思想とキリスト教そのものとアリストテレス哲学の再統合を試みる

3.存在の形而上学と神

・「生物学者」の発想を基盤とする哲学者 「現実態」と「可能態」 幼虫と成虫や種子と花など
アリストテレス「四原因説」 木 → 机、家
・「存在者」→「存在そのもの」を主題にする 「存在の形而上学
・神=「自存する存在そのもの」
・「否定神学」=消去法 これは神ではない
・神=存在そのものの根拠 被造物が存在するということは、神が存在するということ

4.知性の問題とトマスの認識論

・「能動知性」/「可能知性」 「内在説」/「離在説」 トマスは能動知性内在説をとる 「知性的魂」 人間は小さな神のようなもの

5.倫理学

アリストテレスの「自己実現
・「枢要徳」
・神の「恩恵」 「信仰」「希望」「愛」 他人を頼る 負けるが勝ち
・神から「注がれる」ことによって生成する
・神に感謝する
・「愛」豊かな生命エネルギーの充溢 宇宙がつながっていること

 
◆要約:トマス・アクィナスの肝は「現実態」と「可能態」、生物学的に考える思考。人は「可能態」、まだ途中なので、完成を迎える可能性がある。神はすべての根拠。あとは難しすぎてわからなかった。

【授業メモ】「西洋哲学の起源 第13回 盛期スコラ学とイスラム哲学」

放送大学 桑原直己先生

1.大学ースコラ学の場

・13世紀、大学という新しい知的空間の出現で哲学と神学を中心とする諸学問が飛躍的に発展

1.1.大学の成立

・大学、12世紀に「知識人のギルド」として成立。パリ大学ボローニャ大学、オックスフォード大学など「自生的大学」。教皇の庇護を求める。
・皇帝フリードリヒ2世、ナポリ大学。官僚などを養成する目的。国立大学の草分け。
・通常、神学、法学、医学、人文の4つの学部

1.2.講義と討論―スコラ学の著述スタイル

・「講義」と「討論」
トマス・アクィナス神学大全』のような著作であっても、討論の形をつかって書くことでダイナミズムが生まれる。

2.托鉢修道会―修道制の変化

・都市化、貨幣経済の発達にともなって、格差社会になってきた。貧しい人々の思いに応えるという宗教的課題を帯びてきて、過激な修道者の中には、教会の権威を拒み、異端になるものを現われた。
ドミニコ会フランシスコ会 「定住」「土地所有」の原則を放棄 「托鉢(=乞食)修道士」
ドミニコ会、聖職者 上から/フランシスコ会 民衆的宗教運動起源 下から

3.イスラム哲学

4.アリストテレス哲学の変容

4.1.アリストテレス哲学流入以前の西欧の知的世界

・当時のスタンダード=アウグスティヌスキリスト教化された新プラトン主義

4.2.アリストテレス受容をめぐる対立

・「アリストテレス・ショック」=キリスト教と相容れない部分がある
・3通りのリアクション(1)保守的アウグスティヌス主義(2)急進的なアリストテレス主義(3)キリスト教的中道アリストテレス主義 代表がトマス・アクィナス

5.フランシスコ会の大学進出

5.1.オックスフォード学派

・ロバート・グロステスト 幾何光学的視点 「光」を原理とする
ロジャー・ベーコン 経験的知識や実験観察を重視 近代科学の先駆者

5.2.アレクサンデル・ハレンシス

・ボナヴェントゥラの師

5.3.ボナヴェントゥラ

5.3.1ボナヴェントゥラとプラトンアリストテレスアウグスティヌス

アリストテレス→「学知(サイエンス)の師」 プラトン→「英知(サピエンス)の師」 アウグスティヌス→英知と学知両方に目を向けたとして一番評価

5.3.2.範型論

アウグスティヌス「神は存在の根源、認識の根拠、生活の規範」

5.3.3.キリスト中心主義

・キリストという媒体の中に形而上学の全体が包含されている

5.3.4.哲学と神学

アリストテレスは神を無視しているから駄目。プラトンであっても原罪を意識していないので駄目

5.3.5.神へと向かう上昇的認識

・無限なものに対する先行的知識 神に対する先行的知識

5.3.6.「主意主義」――意志と愛との主導

・「認識」「知性」に対する「愛」「意志」の優位を説く=主意主義

6.アルベルトゥス・マグヌス

ドミニコ会 中道アリストテレス主義 実証的な研究に深い関心
 
◆要約:13世紀は大学によって学問が飛躍的に発展した。ギルド的な自治的大学と国立大学に別れた。そこでは講義と討論。一方で托鉢修道会も広がった。フランシスコ会ドミニコ会。それは後に大学にも入っていった。イスラムとの交流で「アリストテレス・ショック」が起こった。3つのリアクションに別れた。ボナヴェントゥラは保守的アウグスティヌス主義。

【授業メモ】「西洋哲学の起源 第12回 中世初期の哲学」

放送大学 桑原直己先生

1.中世の世界―政治的多元性とキリスト教のもとでの統一

・中世=「封建社会」。分権的、政治的に多元的な社会。
・そのなかでキリスト教が普遍的な絆として機能。
神聖ローマ皇帝教皇から「戴冠」を受ける。
教皇と皇帝という2つの焦点をもつ楕円社会

2.中世初期の世界

2.1.農業経済とベネディクト型修道院

・6世紀ベネディクトス モンテ・カッシーノ修道院 『戒律』 「祈り」「勉学」「労働」の日課。特に労働(写本と農作業)を重視。

2.2.中世初期の知的世界の担い手としての修道院

・各地で戦争が起こり、聖堂が壊されたり文化が衰退した。そのときに修道院がそれを守った。

3.カロリング・ルネサンス

3.1.アルクイヌスとカロリング・ルネサンス

・9世紀カロリング朝カール大帝 ブリタニアの修道士アルクイヌスを招聘し学問と教育の復興を図る=「カロリング・ルネサンス
・学校制度を整備 神学、教父哲学が中心

3.2.ヨハネス・スコトゥス・エリウゲナ

・『自然について』4つの自然

4.時代の変わり目としての11・12世紀

4.1.都市的中世への変化と12世紀ルネサンス

・農業経済→都市と貨幣経済の発達
・「内向的」な修道院学問→大聖堂付属学校を中心とした「外交的」な学問 「スコラ(学校)学」
・知識人たちの自由な交流。優れた教師を求めて生徒が集まる。私塾的都市学校→のちの大学 この時期におけるこうした知的世界の発展は「12世紀ルネサンス」と呼ばれる

4.2.「修道院神学」対「初期スコラ学」
4.3.ペルトス・アベラルドゥスと普遍論争

・「唯名論存在論」という図式で知られるいわゆる「普遍論争」
・普遍とは、知性が個々の事物から抽象したその本姓に対する普遍的認識を表現する「言葉」である
・善悪とはその行為そのものに属するのではなく、行為者の意志に存する。罪の本質とは神との人格的関係が損なわれることであり、つまり良心に逆らう決断をすること。

4.4.シャルトル学派

・11世紀初頭 フランスのシャルトル司教座聖堂付属学校が名声を集め多くの学者が集まる
・比較的自然科学を重視

4.5.カンタベリーのアンセルムス

・「知解せんがために信ずる」「知解を求める信仰」
・『プロスロギオン』での神の存在証明。神を考えられるということは、神は存在しうる。神は偉大だから存在しうるということは存在する。

4.6.クレルヴォーのベルナルドゥス

・シトー会。修道院神学をとくにその清貧の理想においてもっと厳格に。
・自由の三段階説 「自然本性の自由」「恩恵による自由」「栄光の自由」

4.7.サン=ヴィクトル学派

★ここが重要
フーゴー 学問全体を整理し体系化
哲学
 理論学・・・自然学、数学、神学(形而上学を含む)
 実践学・・・政治学家政学倫理学
 機械学・・・演劇学、医学、狩猟学、農学、通商学、造兵学、機械学
 論理学・・・弁証学、文法学

論理学 すべての学問の「道具」としての予備学
機械学 身体的存在としての人間の必要性に奉仕する
実践学 人間の自由意志を善へと導くことが目的
理論学 人間知性の完成 最高段階の学問
・サン=ヴィクトルのリカルドゥス『三位一体論』『大ベニヤミン』『小ベニヤミン』 
 
◆要約:中世、最初は農業社会。修道院。→ 都市化、貨幣経済化。都市型学校。スコラ学。経済学など実学のようなものが発達。フーゴーの整理は重要。理系と文系。ベクトルの大きさと方向の関係。

【授業メモ】「西洋哲学の起源 第11回 教父の世界」

放送大学 桑原直己先生

1.ギリシア哲学とキリスト教との出会い

・教父 古代哲学とキリスト教との間の緊張関係の中で両者の統合を試みる
・超越的な形而上学の次元の中に神を位置づける
・ニカイア公会議(325年)/カルケドン公会議(451年)
ギリシア語 東方ギリシア教父/ラテン語 西方ラテン教父

2.ヘレニズム的教養(自由学芸)とキリスト教

・ヘレニズム的教養=「自由学芸artes liberales」自由人にふさわしい教養 
・「文法学」「修辞学(弁論術)」「弁証論」(三学)と「算術」「幾何」「音楽」「天文学」(四科)の「自由七科」
・初期ラテン教父は異教的教養である自由学芸に対して反発していた。しかしアウグスティヌスキリスト教と自由学芸を統合し、後者を前者のために用いるという態度をとった。
・彼の『キリスト教の教え』は最重要な古典

3.教義の確立

3.1.キリスト論における2つのパラダイム

・教父の大きな功績はキリスト教の教義の確定。教義=「ドグマ」
・「上からのパラダイム」アレクサンドレイア学派 キリストの神性/「下からのパラダイム」アンティオケイア学派 イエス人間性、歴史性

3.2.公会議

・ニカエア公会議(325年)キリストについて父なる神と「同一実体=同一本質」とし、キリストの神性を確認する。
・カルケドン公会議(451年)キリストのペルソナにおいて神性と人間性とが混合せずに合一しているといういわゆる両性論が教義として確立
・上下両極端の主張が排斥される

4.修道制の成立

・修道制=出家 「清貧」(私有財産の放棄)、「貞潔」(独身生活)、「従順」(上長への服従)。修道者たちは、これらの放棄を通して物欲、情欲、名誉欲・権力欲から離脱し、自らを神へと明け渡すことを目指した。
・迫害がやみキリスト教が公認されてゆく時代にあって、安逸の中でキリスト教が世俗化してゆくことに危険を感じ、自ら荒野での禁欲的生活の中で真に「キリストに従う」ことを求めた素朴なキリスト者たち
・monk(ひとり住む者)隠修士 東方修道制
・他方で共住修道制 神への愛と隣人愛のための訓練と実践の場

5.フィロンと初期教父

5.1.アレクサンドレイアのフィロン

・聖書に記された神による世界創造論に対する合理的説明。神は一方では「ロゴス」を範型として世界を創造するが、他方「ロゴス」は世界に内在し世界を摂理によって導く神の力でもある。ロゴス=言葉。意味。論理。万物の流転のあいだに存する、調和・統一ある理性法則。

5.2.ユスティノス

キリスト教が「真の哲学」。いままでのヘレニズム哲学は「種子的ロゴス」であり、キリストこそが普遍的・神的ロゴスである。

5.3.グノーシス主義との対峙

グノーシス主義 光明の国/暗黒の国という二元論的体系 暗黒の物質的世界の創造者としての神を崇める旧約聖書を非難

6.アレクサンドレイア学派

・東方ギリシア教父

6.1.クレメンス

・人間の知性は神的ロゴスに従っ形作られたものであるがゆえに神的ロゴスを分有する。人間の知性(ギリシア哲学)に信頼を置く。

6.2.オリゲネス

・2000を超える聖書注釈。キリスト教の教えの学問的体系化に多大な貢献。肉体的次元→心的次元→霊的次元。魂とロゴスとの神秘的な婚姻において完成する。

7.カッパドキア教父

・人間が神化への道を歩むための具体的な生活の場としての修道生活。

7.1.パシレイオス

・修道規則を決める

7.2.ナジアンゾスのグレゴリオ

・「写像」という思考法。可視的世界は精神的世界の写像。キリストは神の写像

7.3.ニュッサのグレゴリオ

・神化に向かう修行の過程、段階を定める。

8.西方ラテン世界

8.1.アウグスティヌス

・豊富なギリシア哲学の知識。ミラノで「回心」。あらゆる真理の認識は神によって直接に「照らされる」ことによって成立する、とする「照明説」。
・修道的生活を送っていたが、だんだんと取り立てられて、ヒッポ司教に。異端や異教との論争。
・大著『神の国』。ローマの元老院などを説得するという執筆動機。人類の歴史を神への愛によって結びついた「神の国」と、自己愛によって結びついた「地の国」という2種類の共同体による相克のドラマつとして描く。

8.2.ボエティウス

西ローマ帝国滅亡。中世へと移行しつつあった時代に、プラトンアリストテレスの著作をひたすら翻訳、注釈。「4科」の教科書を著す。

8.3.擬ディオニュシオス・アレオパギテース

・新プラトン主義との融合。
 
◆要約:教父哲学とは、古代哲学とキリスト教との間の緊張関係の中で両者の統合を試みる哲学。基本キリスト教を上に置いて、ギリシア哲学を下に置く。「ロゴス」の思想。