マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

成長至上主義はやめなくてはならない。

「世界のエネルギー消費量は近代以降、爆発的な勢いで増えていますが、こんな成長が永久に続くわけがない。歴史が進化し続けるままだといずれ人類は破滅します」
 
成長の限界は必ず来るし、本当はすでに来ているという理論もあります。現代の社会は、限界を過ぎても無理やり成長を続けようとする力と、持続可能な安定へと軟着陸しようとする力とのせめぎ合いとして理解できます」
 
「その典型例が原発の問題です。原発のような破滅的リスクを伴う技術をやめられないのは、限界に達している成長を無理やり続行しようとするからです」
 
「決して原始に帰るのではない。近代の成果を十分に踏まえた上で、高められた地平を安定して持続する『高原(プラトー)』というコンセプトです」
 
「自由と贅沢な消費とを何よりも愛した思想家バタイユは、至高の贅沢として『奇跡のように街の光景を一変させる、朝の太陽の燦然たる輝き』の体験を語っています。生きる歓びは、必ずしも大量の自然破壊も他者からの収奪も必要としない。禁欲ではなく、感受性の解放という方向です」
 
「近代社会は『未来の成長のために現在の生を手段化し、犠牲にする』という生き方を人々に強いてきました。成長至上主義から脱して初めて、人は『現在』という時間がいかに充実し、輝きに満ちているかを実感できるのではないか。」
 
「今、私たちは、人間の生きる世界が地球という有限な空間と時間に限られているという真実に、再び直面しています。この現実を直視し、人間の歴史の第二の曲がり角をのりきるため、生きる価値観と社会のシステムを確立するという仕事は、700年とは言いませんが、100年ぐらいはかかると思います。けれどもそれは、新しい高原の見晴らしを切り開くという、わくわくする宿題であると思います」

(インタビュー)歴史の巨大な曲がり角 社会学者・見田宗介さん:朝日新聞デジタル