マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【読書メモ】2017年に読んで面白かった本ランキング

2022年1月にこのエントリを書いている

1位 山本理顕『権力の空間/空間の権力 個人と国家の〈あいだ〉を設計せよ』 (講談社選書メチエ 2015年)

最高に面白かった。目から鱗の連続。
古代ギリシア、ポリスの「アンドロン」。家と道、私的空間と公共空間の「閾」。
1848年フランス二月革命に衝撃を受けた国家と資本家は、なるべく労働者、市民が団結しなくなるような都市をつくり住宅をつくるようになった。
そのような都市や住宅が実際に”物化”されて、そこで生活していることでいかに私たちが自分ではわからないうちにコントロールされているか。
「1住宅=1家族」というシステム。
世界と社会の対立。社会による世界の侵食。
「社会(society)」とはもともと「ある特別な目的を持つ人々」による私的集団。「ある特別な目的」=金銭。
日本の団地。住民が交流しない設計。
官僚支配が既に全体主義(支配)。
空間的統治。
ヒルベルザイマーの都市。
世界を共有しているという感覚(コモンセンス)が奪われていく。
住宅を変えること、都市計画を変えること、空間を変えること、が社会を変える唯一の方法だと思った。

2位 篠原雅武『空間のために 遍在化するスラム的世界のなかで』(以文社 2011年)

土地制度について。地方の衰退。商売したい若者はたくさんいるのに、賃料が払えないので空き地、空き家になっている土地。
藤田省三「安楽への欲求」「荒地」J・G・バラード「コカイン・ナイト」フレドリック・ジェイムソン 「未来の都市」
中平卓馬「街路」「消費空間の成立は、街路が秘めていた、何が起こるかわからないという潜在力を馴致し封じ込めた」
寺山修司「あらゆる日常的な場所を劇場に変えてくこと」

3位 笠井潔押井守『創造元年1968』(作品社 2016年)

1968年の雰囲気が二人の対話でよくわかる。祝祭感。痛みすらも。
まだ戦争と地続きだった。
そしてこの運動は挫折したが、問題意識を持ち帰った各人がその後のテレビや文学や雑誌の中で、その後の文化を作っていった。
この二人が好例。

4位 三浦展『新東京風景論 箱化する都市、衰退する街』(NHKブックス 2014年)

とても面白かった。
「つまりわれわれは、いわば、快適でお洒落な都市の箱の中で、殺されない代わりに歩きながら金を払うブロイラーとして生かされている。」
品川駅東口再開発。
「まるで工場のベルトコンベアで物が運ばれるように、人が運ばれる(しかし自分の足で歩く)空間なのである」
「現代人は、自分たちが鉄の檻に入れられているとは思わない。その檻が快適で柔らかくて檻に感じられないからである。」
「また、近代の箱の空間には、エロスがない。そこは金を稼ぎ、金を消費するためだけの合目的的な空間に過ぎず、効率や計算が成立しにくい人間的感情は息苦しさを感じるしかない。」
「箱ばかりが増えて、街が衰退しているのだ。われわれが街に魅力を感じ、そこをぶらぶら歩いてみたいと思うのは、街にエロスを感じたいからである。」
コルビュジエ ヴォアザン計画 丹下健三
都心へのベッドタウンでしかないニュータウン

5位 宮沢章夫NHK ニッポン戦後サブカルチャー史』(NHK出版 2014年)

こういう文化を通して時代を分析する、カルチュラル・スタディーズのような本とても好き。宇野常寛の『ゼロ年代の想像力』とか。