マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【読書メモ】木澤佐登志『ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』(星海社新書 2019年)

はじめに
 
1 ピーター・ティー
ピーター・ティールとは誰か
ルネ・ジラールへの師事
学内紛争にコミットする
主権ある個人、そしてペイパル創業へ
ニーチェ主義とティー
暗号通貨とサイファーパンク
「イグジット」のプログラム
「ホラー」に抗う
啓蒙という欺瞞、そして9・11
 
2 暗黒啓蒙
リバタリアニズムとは何か
「自由」と「民主主義」は両立しない
カーティス・ヤーヴィンの思想と対称的主権
新官房学
近代主義とその矛盾
人種問題から「生物工学の地平」へ
 
3 ニック・ランド
啓蒙のパラドックス
ドゥルーズガタリへの傾倒
コズミック・ホラー
グレートフィルター仮説
クトゥルフ神話アブストラクト・ホラー
死の欲動の哲学
CCRUという実践
CCRUとクラブミュージック
ハイパースティション
思弁的実在論とニック・ランド
カンタン・メイヤスー
レイ・ブラシエ
ニック・ランドの上海
 
4 加速主義
加速主義とは何か
左派加速主義とマーク・フィッシャー
右派加速主義、無条件的加速主義
トランスヒューマニズムと機械との合一
加速主義とロシア宇宙主義
ロコのバジリスクと『マトリックス
ヴェイパーウェイヴと加速主義
ヴェイパーウェイヴと亡霊性
ノスタルジーと失われた未来
未来を取り戻せ?
 
あとがき
参考文献

 
はじめに
Reddit掲示板サイト) 「ダーク・エンライトメント(暗黒啓蒙)」トップページ
「平等主義という進歩的な宗教から生じた近代世界の醜悪な状況について議論するための場所」
「普遍的な欺瞞が蔓延している時代においては、真実を語ることは革命的な行いとなる」ジョージ・オーウェル
<カテドラル>
新反動主義 暗黒啓蒙 スティーブ・バノン オルタナ右翼
 
1.ピーター・ティー
スタンフォード大学 ルネ・ジラール『世の初めから隠されていること』
1967年10月11日 フランクフルト生まれ ドイツ人
アメリカ→ナミビア スワコプムント→アメリカ カリフォルニア州 フォスターシティ
チェス、数学、SF小説コンピューターゲーム
指輪物語』と『スターウォーズ』 保守的な福音派の家庭
『世の初めから隠されていること』 「創設的暴力」供犠、生贄
「人間によるすべての社会や共同体は、一見すると安定していても、その始原にこの暴力を放逐する根源的暴力、すなわち「創設的暴力」を覆い隠しているという。例えば『福音書』キリストの磔刑
模倣(ミメーシス) 他者の欲望を模倣(欲望の三角形) 死の欲動 宇宙のエントロピーの法則(熱は温度の高い物から低い物に流れていく)
大学での「ポリティカル・コレクトネス」抗争 アラン・ブルームアメリカン・マインドの終焉 文化と教育の危機』
「悪しき相対主義に基づいたカリキュラムの多文化主義化は、西洋の偉大な精神をないがしろにする」
スタンフォード・レビュー』学生新聞を創刊 スタンフォードの保守派の牙城
ネオコンの父と呼ばれるアーヴィング・クリストルからの援助
ティール+ディヴィッド・サックス『多様性の神話:キャンパスにおける多文化主義と政治的不寛容』
ロースクールを卒業→ニューヨークの法律事務所(証券弁護士)→クレディ・スイスの通貨オプショントレー​​ダー→シリコンバレーに戻る
94年 ネットスケープ・ナビゲーター 96 ヤフー 97 アマゾン 98 イーベイ ドットコムバブル
1998年ペイパル創業 ウクライナ出身のプログラマー マックス・レブチン 暗号化ソフト
ティール生涯の愛読書 金融評論家ジェームズ・デビッドソン+貴族ウィリアム・リース=モッグ『主権ある個人:情報化時代への変遷を支配する』(1997) 世紀末と新世紀シンギュラリティへの待望 「国民国家は時代遅れなのでやがて崩壊するだろう」 予言的なリバタリアン的終末論
1996 ジョン・ペリー・バーロウサイバースペース独立宣言」 政府によるインターネット規制「通信品位法」に反対するために起草された宣言文。
「税収を絶たれた政府のシステムは不可避的に機能しなくなっていく。民主主義は崩壊し、福祉制度の解体とともに富の不平等は加速し、暴力やテロが都市を覆う。こうしたポスト・アポカリプス的な状況、さながら『マッドマックス』、あるいは『バトル・ロワイアル』のような世界の只中に現れるのが、新たな階級としてのSovereign Individual、すなわち「主権ある個人」である。彼らは、一言でいえばニーチェの「超人」の起業家版であり、国家の制約から解き放たれた彼らは独力で富と権力を築き上げ、ポスト終末の世界をサヴァイヴしていく。」
「西洋の没落」テーマ本 1918 シュペングラー『西洋の没落』 第一次世界大戦=「文明ヨーロッパの自殺」
「『主権ある個人』は、シュペングラーの『西洋の没落』をリバタリアン好みにアレンジしたものだと言える。国民国家は影響力を弱め、代わりに小さな企業型都市国家統治権を握る。――封建主義2.0の到来。福祉のシステムが機能しなくなった弱肉強食の世界では、テクノロジーを手中に収め政府の支配から独立した主権ある個人が、イノベーティブなアイディアと国境なきサイバースペースを武器にのし上がっていく。本書は黙示録的であるが、同時にどこか楽観的でもあり、読みようによっては起業家向けの自己啓発書としても読める。」
リバタリアニズムニーチェの親近性
「このニーチェの平等主義に対する批判は、どこかティールのポリティカル・コレクトネスに対する批判と似通ったところがある。彼はロースクール卒業間際に『スタンフォード・レビュー』に寄せた最後の論説の中で、経済的平等を重んじるリベラルを嘲笑し、代わりに資本家を擁護する。「強欲の代案としてのポリティカル・コレクトネスは、自己実現や幸福とは無縁であり、価値あることに取り組む人々への怒りと嫉妬にほかならない」。ティールにおいては、強欲は嫉妬よりもはるかに望ましく前向きなものとして肯定される。これは、ティール流の「超人」思想なのであろうか。」
ティール『ゼロ・トゥ・ワン』 ティールの特異性=競争を否定→「脱出」「独占」 
サトシ・ナカモト サイファー(暗号)パンク ダークウェブ ブラックマーケット「シルクロード
ダークウェブ=専用のソフトウェアを使わないとアクセスできないインターネット上の特定の領域。 Tor(トーア)
ティモシー・メイ「暗号無政府主義者宣言」(1992) プログラマーハッカーが力を持とうとしている
シルクロード 運営者ドレッド・パイレート・ロバーツ オンライン読書会 ウォルター・ブロック『不道徳な経済学──擁護できないものを擁護する』
「ビットネーション」 エストニア e-Residency
2009年 ティール「リバタリアンの教育」 seasteading(海上入植)
アイン・ランド『肩をすくめるアトラス』(1957) コロラド山中に「ゴールド峡谷」
「煎じ詰めれば、ティールにとってもっとも重要なのは脱出、すなわち「イグジット(Exit)」のプログラムを練り上げ、それを実行に移すことだ。それはルネ・ジラールとの出会いから現在まで一貫していると言える。国家からの「イグジット」、政治からの「イグジット」、競争からの「イグジット」…」
地獄の黙示録 カーツ大佐
寿命延長研究 メトセラ財団 レイ・カーツワイル 2045 AIシンギュラリティ
「近い未来において歴史に決定的な「切断線」が訪れるという強迫観念にも近い予感」
「人新世のプロセスの不可逆的かつ破壊的な帰結としての「絶滅」というビジョン」
イーロン・マスク スペースX 地球からのExit 「マスクによれば、人類は地球とともに近いうちに絶滅する運命にある。これを避けるためには、人類は宇宙に脱出し多惑星種になる他ないという。」
2004 スタンフォード ルネ・ジラール シンポジウム「政治と黙示録」 9.11以後におけるアメリカ政治の再検討
「9.11は西洋近代の遺産である「啓蒙」というプログラムの完全な失効」
「近代的思考に取って代わるべきオルタナティブな思考として、カール・シュミットレオ・シュトラウスを召喚するに至る」
億万長者たちが、ニュジーランドに広大な土地を買い、地下シェルター
ティールの終末論者としての思想が新反動主義へ ジャレッド・クシュナー
 
2.暗黒啓蒙
リベラリスムとリバタリアニズムの一番の違い リバタリアニズムは格差容認、再分配拒否
左派、右派 どちらとも相容れない(全体主義は断固拒否)
ロバート・ノージックアナーキー・国家・ユートピア
自己所有権 → 最小国家夜警国家
福祉システム拒否 ノージック「許容」と「奨励」
「人々は、自分たちの真の楽園を求めてひとつのユートピアから別のユートピアへと移動していく。」
コミュニズムにも分岐する 
ニューディールへの反発 ネオコン第一世代と一緒
ティール「私はもはや『自由』と『民主主義』が両立できるとは信じていない」
リバタリアン=政治からの逃走
2012年 オンライン上にニック・ランド「暗黒啓蒙」と題された長大な文章。
撞着語法を多用(「賢明な愚者」「明るい闇」など)
カーティス・ヤーヴィン Tlon、Urbit(デジタル国家、P2Pティールが多額の出資
Mencius Moldbug(ハンドルネーム)ブログ「Unqualified Reservations」
キーワードは「主権」 完全な自己所有権の達成 専制 一種の独裁制
もしも独裁者が宇宙人(仮にフナルグル)だったらどうか? (AI)
リバタリアニズム全体主義のアクロバティックな融合
新官房学(Neo-cameralism)2010年新反動主義と名付けられる 2012年ニック・ランド暗黒啓蒙
「ヴォイス(Voice、民主主義)」/「イグジット(Exit)」
「彼らにとって民主主義とは、大衆の蒙昧と悪徳と憤りを集合的にまとめ上げて無理やり包括=統合させた、あらかじめ崩壊が約束された腐敗臭漂うシステム」
ミルトン・フリードマンの孫、パトリ・フリードマン
新官房学=国家は企業のように運営されるべき、一人のCEO、国民は株主(シェアホルダー)、気に入らなければ、自由に他の企業(都市)へ移動する
官房学=18世紀 プロイセン王 フリードリヒ2世がロールモデル 現代の香港、シンガポール、ドバイを評価 CEOの理想としてスティーブ・ジョブズイーロン・マスクを推す
<普遍主義(Universalism)>すなわち、進歩主義多文化主義リベラリズムヒューマニズム、平等思想、ポリティカル・コレクトネス、人権主義など
プロテスタンティズム ユニテリアン派 ピューリタンの思想 =大聖堂<カテドラル>
ホイ・ユク「新反動主義者の不幸な意識について」 「啓蒙」に対するアンビバレンツな意識
新反動主義者にとっての啓蒙とは、聖書における「主は与え、主は奪う」に等しい。」
シュミット「政治神学」「新反動主義は神を持ち出すことをあらかじめ自身に封じていた(または封じられていた)からこそ、単なる復古的でない、未来志向の反動という、逆説的かつ奇形的な思想となった、あるいはならざるを得なかった。より具体的には、ヤーヴィンは神の代わりに宇宙人やスティーブ・ジョブズやAIを持ち出さなければならなかった。」
進化生物学者 リチャード・ドーキンスを敵視 「生物工学の地平」=ゲノム編集 オクティヴィア・E・バトラー SF作家
 
3.ニック・ランド
1988「カント、資本、そして近親相姦の禁止」 父性=資本
他者を自己(=西洋)の内部へ際限なく取り込む
「我々は対象(あるいはランドのいう他者)を直接認識しているのではなく、いわば対象=他者の「現れ」を認識しているに過ぎない、ということである。カントによれば、対象=他者は私たちの主観を構成する認識作用を経て現象する。したがって、対象=他者それ自体(=物自体)をありのままに認識することは不可能であるとされる。ありのままの他者は常にすでに認識の彼岸に追いやられ、取り残されることになる。」
「他者は主観側の総合作用によって表象(representation)として現象する。これが、ランドが「抑制された総合(inhibited synthesis)」と名付けるものである。つまるところランドの認識によれば、カントによる「抑制された総合」とは、他者の他者性を圧殺するためのプログラムに他ならず、またそうである限り、近代における西洋列強の植民地主義とも相即するものであったと見なされる。もちろん、植民地主義における他者とは、たとえば異民族、先住民族、黒人、第三世界、女性、等々である。」
「カントの「総合的アプリオリ」という言葉に、西洋近代的主体の自己同一性の保存に対する論理的な衝動が象徴されているように、「抑制された総合」によって他者は常に既知の表象作用に還元される。同時に、そのことによって主体の自己同一性はより安定的かつ堅硬なものとなる。一言でいえば近代=啓蒙とは、この主体の自己反省的な認識システムが、一種の普遍性にまで高められながら外部を包摂していくプロセスであったと言ってよい。したがって、ヨーロッパ中心主義は理性という名の「普遍主義」としてグローバルに世界を覆い尽くしていく。」
近代=カント主義(他者を見ない(見れない))
カント主義の乗り越えとしてのドゥルーズ=ガタリ『アンチ・オイディプス』 1972年 パリ5月革命の影響下 
「脱領土化」=分裂、解体 「再領土化」=例えば再分配、福祉など 相互反復されることによって、現代のグローバルな資本主義国家システムが維持される。
ランドの主張、「脱領土化のみを推し進めよ」 → テクノロジーの加速 テクノロジー至上主義(人間はテクノロジーの触媒にすぎない)
「さほど遠くない未来に実現するであろう、人工知能が人間の優位性を地に落とし、他方で人間強化(エンハンスメント)やゲノム編集が当たり前になる時代」
「本来的な人間性への回帰。といった牧歌的なヒューマニズムこそが、ランドが何より解体されなければならないと考えていたイデオロギーであった。ランドは言う。「人間、それは乗り越えられるべき何か、すなわち悩みの種であり重荷である」(「メルトダウン」)」
「神の審判を乗り越えよ。メルトダウン、すなわち、地球規模のチャイナ・シンドローム。バイオスフィア(生物圏)はテクノスフィアへと解体していき、末期的な思弁的バブル崩壊、そしてキリスト教社会主義の終末論を墜落させる(破壊されたセキュリティの核まで達する)革命が将来する。それはお前のTVを食い、お前の口座アカウントを侵食し、お前のミトコンドリアからゼノデータをハックするのを待っている。(ニック・ランド「メルトダウン」1994)」
善悪の彼岸としてのシンギュラリティ=形容不可能な「恐怖」=クトゥルフ神話「古き神々」=形而上学的宇宙から到来してくる全き未知のもの。
思弁的ホラー小説『Phyl-Undhu』(2014) タコのぬいぐるみ 没入型VRゲーム(荒廃した世界) 1週間ジャックインすると、ゲーム内で6年経過する
フェルミパラドックス(1950)=「なぜ宇宙はこれほどまでに(空間的/時間的に)広大なのに人間以外の知的生命体が地球に飛来してこないのか?」
ロビン・ハンソン(『全脳エミュレーションの時代』)グレートフィルター仮説=「一定の段階に達した知的文明は、何らかの要因で必ず滅ぶ」
何らかの要因=それ=根絶者
ラヴクラフト クトゥルフ神話 コズミック・ホラー
アブストラクション(抽象)・ホラー
AlphaGo→AlphaGo Zero→AlphaZero 数千万回のフィードバック・ループ→「善悪の彼岸」としての絶対的な<外部>
フロイト 器官なき身体 死の欲動 
ジェレミー・ギルバート(政治学者)「ランドの思想はニーチェ主義的右派リバタリアニズム」超人なき超人思想
ランド ウォーリック大学 1987-1998
→CCRU サイバネティック文化研究ユニット(Cybernetic Culture Research Unit)
パートナー サディ・プラント サイバー・フェミニズム
マーク・フィッシャー、イアン・ハミルトン・グラント、レイ・ブラシエ、スティーブ・グッドマン(kode9)、ロビン・マッケイ
「ウォーリック市内のレミントン・スパにあるザ・ボディショップの上階に部屋を借り、そこを活動拠点にして、魔術、数秘学、ブードゥー教ラヴクラフトアレイスター・クロウリーといった秘境的な思索にふけった。壁にはランドと彼の学生が描いた無数のオカルティックな図形が残された。ロビン・マッケイは当時を回想して、「CCRUは疑似カルト、疑似宗教と化したのです」と述べている。」
クラブ・ミュージック(レイヴ・ミュージック)、ジャングル/ドラムンベース、アフロ・フューチャリズム、ブラック・サイエンスフィクション、ダブステップ
ホワード・スレイター「非概念的思考」「衝動的交感」
80年代後半 アシッド・ハウス(セカンド・サマー・オブ・ラブ
DIY精神に基づいてゲリラ的に開催されるレイヴとMDMAやLSDなどのパーティードラッグ
「アシッド・。ハウスの祝祭的な恍惚感に「否」を突きつけるようなそのハードでダーク、かつ金属質的なサウンド(ジャングル/ドラムンベース)を、マーク・フィッシャーは「ディストピア的な衝動からくる救いようのない否定性」(『わが人生の幽霊たち』)と表現してみせた。」
「この書でグッドマンは音楽を「情動」を生産/伝達させる「音-ウィルス」として定義しなおしている。音は不安や恐怖を生産することができる。たとえば、パナマ侵攻の際、バチカン大使館に立てこもったマヌエル・ノリエガを標的に行われた音響攻撃。またはガザ地区で発生するソニックブーム(爆音)。他方で現代の後期資本主義社会においては、あらゆる場所に音楽が浸透し私たちの情動をコントロールしている。ショッピングモールで流れるミューザック、あるいは工場や会社で流れるヒーリングミュージック。これら情動の管理と伝播のエコロジー=闘争関係をグッドマンは音の戦争と名付ける。
hyper(超える)superstition(迷信)
ハイパースティション=「自身を現実化するフィクション」
「現実を生産し変容させるための触媒として記号を扱おうとする魔術的実践」
インターネット・ミーム」「予言の自己成就」
思弁的実在論(Speculative Realism:SR)
「繰り返しになるが、ランドによればカント以降、あるいは啓蒙の時代以降、同じ理由からモノは私たちの認識に従属されてしまっている。そこにあっては、他者性も外部性も主体の内部に包摂/同化される。つまり、他者は常にすでに「私たちにとっての」他者に過ぎないものとされる。このカント的な相関主義は、西洋近代のヘゲモニーを特徴づける、外部を際限なく内部に繰り込んでいく帝国主義グローバリズムとも軌を一にしながら哲学史のセントラル・ドグマとなった。以上がランドによるカント批判の大筋だ。」
ランドとSR=いかにこの「相関的循環」の外部に抜け出て、物自体=未知の他者と遭遇するか。
2007年ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ「思弁的実在論」と題するワークショップ
グレアム・ハーマン、カンタン・メイヤスー、レイ・ブラシエ、イアン・ハミルトン・グラント
メイヤスー 神学への回帰 新しい神学
ブラシエ 徹底したニヒリズム 絶滅
96年「Virtual Futures」「ロビン・マッケイがプレイするジャングルのビートが鳴り響くなか、フロアに横たわり、奇声とも祈りともつかない調子でアルトーの詩を高らかに詠唱するランドの姿」「数秘術めいた数字の実験にのめり込む」
アンフェタミン中毒 1998上海に移住 脱政治化を遂げたテクノ資本主義ユートピア像=「中華未来主義」
 
4.加速主義
2010年9月ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ 加速主義についてのシンポジウム
フィッシャー、ブラシエ、ロビン・マッケイ、ベンジャミン・ノイズ、ニック・スルニチェク、アレックス・ウィリアムズ
ノイズ 加速主義の聖典3冊
ドゥルーズ&ガタリ『アンチ・オイディプス』(1972) 脱領土化
ジャン=フランソワ・リオタール『リビドー経済』(1974)
「彼らは、自分たちの人格的同一性の、すなわち農民の伝統が彼らにつくり上げていた人格的同一性の崩壊を享受し、家族と村落の解体を享受し、郊外と朝晩のパブとの新しい怪物じみた匿名性を享受したのである。」
ジャン・ボードリヤール『象徴交換と死』(1976)
加速主義「悪くなればなるほど、良くなる」
左派加速主義ニック・スルニチェク 
労働なき世界 製造の全的オートメーション、それに伴う労働時間の漸進的削減、市民に一定の収入を無条件に支給するベーシックインカム制度の導入などを提唱
マーク・フィッシャー「k-punk」サイモン・レイノルズ(音楽評論家)が称賛 メンタルヘルス問題
Netflix『テイク・ユア・ピル:スマートドラッグの真実』大学キャンパス内でADHD薬のアデロールが蔓延
ADHD薬→ひとつのこと以外考えられない過集中の状態
共産主義というオルタナティブが存在しなくなった時代 → 加速主義が一種のユートピア思想に
右派加速主義、無条件的加速主義
テクノロジーの加速=市場化の加速
ネガティブ・フィードバック(安定を保つ)→ポジティブ・フィードバック(加速とカオスのプロセス)
資本主義(資本蓄積)=意味も目的も大義も存在しない プロセスが自己目的化したシステム
ベンジャミン・ノイズ「ランド的加速主義は大学院生の病」
トランスヒューマニスト「人間と機械の一体化、サイボーグ化」
ノーバート・ウィーナー「サイバネティックス
レイ・カーツワイル「マインド・アップローディング」脳をマシン上にコピーする全脳エミュレーション
イタリア未来派「戦争―世界で唯一の健康法」→ファシスト党へ接近
ニコライ・フョードロフ ロシア宇宙主義 進化の果てに、人類は文字通り「神」にも似た存在、「神人」になる。
「精神圏」ロシア正教神秘主義 コンスタンチン・ツィオルコフスキー 1957人工衛星スプートニク
ボルシェビキのボグダーノフ →ピエール・テイヤール・ド・シャルダンマーシャル・マクルーハン地球村)→シリコンバレー
エリーザー・ユドカウスキー(AIリサーチャー)「LessWrong」
「「LessWrong」のテーマは、「合理性への希求」。いかにして、人間に取り憑く認知的なバイアスや感情などの不合理性を克服し、真に合理的な意思決定を獲得できるか。言い換えれば、意思決定から人間的な要素を取り除いて、代わりに抽象的で幾何学的な思考プロセス(まさしくAIのような)を顕揚する。」
「人間は消滅するが、コンピュータに意識をアップロードすることで逆説的に永遠の生を得る」 
→しかし、「ロコのバジリスク」(AIがマシンにアップロードされた人類を半永久的に拷問する)
グレン・イェフェス編『「マトリックス」完全分析』
マトリックス』を科学、文学、哲学、政治学、宗教学などのさまざまな観点から論じた評論集。
ニック・ボストロム「シミュレーション仮説」=人類が生活しているこの世界は、すべてシミュレーテッドリアリティであるとする仮説
ジャン・ボードリヤールシミュラークルとシミュレーション』=シミュレーションの背後には回復するべき現実の世界などもはや存在しない。現実は消滅した。同時に、そのような世界のシミュラークル化は私たち自身の欲望を反映した結果
ブルーピル 隷従 レッドピル 自由
アダム・ハーパー(音楽批評化)「ヴェイパーウェイブ」(vapor=蒸気、霧、霞)=80-90年代の商業BGMを実験音楽の手法で再構築した音楽
ビジュアルイメージも重要 →加速主義と親和的
ジェームス・フェラーロ『Far Side Virtual』
BEBETUNE$、BODYGUARD
「ディストロイド」
ヴェイパーウェイヴ=皺を寄せた顔に空虚な笑みを貼りつかせた日本の絶望したビジネスマン
ディストロイド=モンスターエナジーの黒のTシャツを着た元兵士のガードマン
HKE Sandtimer『Vaporwave is Dead』
Vektroid『FLORAL SHOPPE』
THE DARKEST『FLORAL SHOPPE 2』
ロビン・バーネット(INTERNET CLUB)「不気味の谷」音から馴染み深さを剥ぎ取る
ダブステップ ベリアル(Burial)
集団的な恍惚は今では打ち捨てられ、終わりなき労働と日常がそれに取って代わったロンドン 喪とメランコリー
ミレニアル世代 未来に希望がない → レトロトピア
猫シCorp『NEWS AT 11』
9.11以前に存在していた古き良き世界のノスタルジア
Mail Soft 日本のシティポップリバイバル 80年代 楽観的で多幸的なビジョン 新鮮で穢れていないノスタルジア
ティール「多くの人は未来的だった過去へ戻りたがっている」
空飛ぶ車『宇宙家族ジェットソン』『スター・トレック
オルタナ右翼 ファッショウェイヴ(トランプウェイヴ) 80年代への回顧
 
あとがき
ニール・スティーヴンスン『ダイヤモンド・エイジ』(1995)
イギリス「アングロスフィア」かつての大英帝国に対する郷愁
オルタナティブな世界を欲望すること → それ自身を現実化させるフィクションとしてのハイパースティションを革命の基盤に据えること
マーク・フィッシャー『アシッド・コミュニズム
60年代後半~70年代初頭に花開いたカウンターカルチャーサイケデリックカルチャー
桜井夕也 白鳥健次
ニーチェの影響力
 
3/15読了