マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

橘玲『幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』


目次
Prologue あなたがいまここに存在することがひとつの奇跡
Part0 「お金持ち」と「貧乏人」の三位一体幸福論
Chapter1 幸福の3つのインフラ
幸福の3つのインフラ/「資本」と「資産」はコインの裏表/金融資本と金融資産/人的資本と社会資本
Chapter2 「最貧困」から人生を考える
リア充とプア充/デフレ化するセックス/風俗で働く高学歴女子大生/貧困への「3つの障害」
Chapter3 人生の8つのパターン
幸福の製造装置
Part1 自由のための金融資産
Chapter4 お金と幸福の関係
市場原理主義者」からの問い/誰でも億万長者になれる残酷な時代/サラリーマンが生涯に払う「税金」は1億円/お金が増えても幸福にはなれない?
Chapter5 マイナス金利の世界
市場は複雑系/資本主義ってなんだろう?/やせほそる金融資産/日本が破産したらどうする?
Part2 自己実現のための人的資本
Chapter6 人的資本は「富の源泉」
ダイエットで自己実現できる理由/経済合理的に倹約する/ノーベル賞学者の人的資本理論/20代で5500万円の人的資本/自己実現という「聖杯」/かけがえのない自分になること
Chapter7 クリエイティブクラスとマックジョブ
リベラル化する世界/トランプ現象はリベラル化への反動/知識社会に適応できなければ脱落する/クリエイティブクラスとマックジョブ/月並みの国と果ての国/ブラックスワンを夢見て/マックジョブ自己実現はあるのか
Chapter8 サラリーマンという生き方
仕事で自己実現を目指してはいけない/働くために生きているのかわからなくなってからが人生/ジョブ型とメンバーシップ型/ネットオークションが善人をつくる?/ポジティブゲームとネガティブゲーム/電気ショックを与えられたイヌ/長時間労働うつ病の原因ではない/日本では医者もサラリーマン/「身分差別社会」日本/日本人は会社が大嫌い/会社への信用も労働生産性も先進国で最低/それでも若者は「優遇」されている/日本的雇用のメリットと末路
Chapter9 オンリーワンでナンバーワンの戦略
優秀なバイオリニストは個人学習から/スペシャリストになるには/ゾウリムシに競争戦略を学ぶ/弱者の3つの戦略/会社はなぜすべてを支配しないのか?/組織の取引コストは市場より大きい/大企業からはイノベーションは生まれない/アウトソーシングされるイノベーションフリーエージェントへの道
Chapter10 超高齢社会の唯一の戦略
日本人は何歳まで生きるか?/「老後問題」とは老後が長すぎること
Part3 幸福のための社会資本
Chapter11 友だちとはなんだろう?
3つの世界/友情の核は平等体験/「市場の倫理」と「統治の倫理」/「人殺し」は政治空間でしか起こらない/愛情に包まれた億万長者は物語のなかにしかいない
Chapter12 個人と間人
日本語に混乱する日本人/「日本化」するアメリカ人/アメリカの過労死/日本的経営で変容するアメリカ企業/カルト宗教の洗脳?/搾取されるやりがい/日本の閉塞感の正体
Chapter13 うつは日本の風土病なのかうつとセロトニン/遺伝子によって未来がわかる?/うつ病になりやすいひとがもっとも楽天的?/日本人はもっと幸福になれる
Chapter14 幸福になれるフリーエージェント戦略
フットサルのルールは一人参加/高校生のセックス相関図/幸福は伝染する/煩悩から自由になった「ソロ充」/公務員とフリーエージェントフリーエージェントという戦略/「幸福な人生」の最適ポートフォリオ
Chapter15 「ほんとうの自分」はどこにいる?
Epilogue それでも幸福になるのは難しい
マイケルは幸福だったのか/幸福と逆境の不都合な関係
あとがき

Prologue あなたがいまここに存在することがひとつの奇跡

「冷静に歴史を振り返れば、「経済的成功への機会」という意味で、現在の日本が過去のどの時代よりも恵まれていることは間違いありません。」

Part0 「お金持ち」と「貧乏人」の三位一体幸福論

幸福の3つの条件
①自由 ②自己実現 ③共同体=絆
幸福の3つのインフラ
①金融資産 ②人的資本 ③社会資本
鈴木大介『最貧困女子』
"リア充"、”プア充” 「木更津キャッツアイ」イツメン(いつものメンバー)
「さっさと彼氏と共稼ぎになったほうが生活も人生も充実」するから早婚が当然で、「(この辺では)女は30代になっても賃金上がらないし、むしろ年食うほどマトモな仕事がなくなる」から、金はなくても体力がある20代で第一子を産んで、30歳になるまでに「気合で」子どもを小学校に上げる」
アジア諸国→家族 日本のマイルドヤンキー→友だち
中村淳彦『日本の風俗嬢』
3つの障害 精神障害発達障害、知的障害 現代社会最大のタブー 生活保護を頑なに拒む
プア充と最貧困女子を分かつ「社会(関係)資本(友だち、仲間)」
「人生を「金融資産」「人的資本」「社会資本」という3つの資本=資産で把握すると、幸福というとらえがたいものにある程度かたちを与え、現実的な戦略を考えることができるようになります。これが、本書の基本的なアイデアです。」

Part1 自由のための金融資産

カンボジアの観光ガイド
市場原理主義者」からの問い 食えなくても、正義を貫くことができるか?
経済的自立の意味 
ロバート・キヨサキ『金持ち父さん貧乏父さん』 
トマス・J・スタンリー&ウィリアム・D・ダンコ『となりの億万長者 ― 成功を生む7つの法則』
橘玲『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ』
=マイクロ法人 社会保険料の半分会社負担はサラリーマンの負担を軽く見せるための詐術
「限界効用の逓減」(ビールは1杯目が美味しい)
=うれしいことにも悲しいことにもいずれ慣れてしまうという、ヒトの心理にもとづく普遍的な法則
年収800万(夫婦で1500万)でほとんど限界 金融資産は1億円
単純なルールから複雑なネットワークを自己組織化していくこと=「複雑系ブノワ・マンデルブロ
私の理解では資本主義=資本市場とは「株式会社によって自己組織化した複雑系のネットワーク」
「株式会社というのは「複数の株主が有限責任で事業に投資することでリスクを分散する仕組み」で、大航海時代の商人はこれによって、嵐で商船が沈んだり、海賊に襲われて全財産を失うリスクを回避できました。」
「経済成長というのは市場取引の規模が拡大していくことですが、突き詰めて考えれば、その原動力は「もっとゆたかになりたい」「家族を幸福にしたい」というひとびと(市場プレイヤー)の欲望です。この欲望には(いまのところ)かぎりがありませんから、人口が増えたり、貧しい国のひとたちが市場に参入することで自己増殖していきます。」
マイナス金利 → 金融資産の価値が減る すなわち 人的資本、社会資本の価値が相対的に上がる
日本破綻論 → 通貨の価値は相対的なものなので、円が下がればドル(ユーロ)が上がり、ドル(ユーロ)が下がれば円が上がります。すべての通貨が一斉に下がることはないのですから、適切に資産を国際分散しておけば、円が紙くずになろうが、ドル経済が崩壊しようが、全体の資産価値は影響を受けない。

Part2 自己実現のための人的資本

「収入を増やす」ことと「支出を減らす」こと
ダイエットと片付けの自己実現
「人的資本」=ゲーリー・ベッカー
社会人になったばかりの若者の人的資本=5500万円
アブラハム・マズロー「欲求の5段階仮説」
自己実現=「かけがえのない自分になること」
自分探し=「どこかにまだ出会っていない”ほんとうのわたし”がいる」
お金はたしかに幻想ですが、それが共同幻想になるまで共有されると「現実」に変わり、私たちを魅了し、拘束するのです。
自己実現=聖杯
★いったん共同幻想になれば価値観は「現実化」する
「働くこと」に2つの目標
①人的資本からより多くの富を手に入れる
②人的資本を使って自己実現する
新しい働き方のキーワード
①知識社会化 ②グローバル化 ③リベラル化(=シリコンバレー型)
③=LGBT、国籍関係ない
米大統領選ではドナルド・トランプの人種差別的・女性差別的発言が問題とされ、それにもかかわらず多くの白人有権者がトランプに投票したことがアメリカ社会の「右傾化」を象徴しているといわれましたが、彼らは「アメリカを白人国家にしろ」とか、「奴隷制を復活させろ」と主張しているわけではありません。「反知性主義グローバリズム批判・保守化」というのは、愛煙家による「嫌煙ファシズム」批判と同じで、行きすぎた「知識社会化・グローバル化・リベラル化」に対するバックラッシュ(反動)なのです。
日本は対応出来なかった
クリエイティブクラスとマックジョブ
拡張性の有無
ニコラス・タレブ『ブラック・スワン
「月並みの国」、「果ての国」
ベルカーブ(正規分布)、ロングテール
クリエイティブクラス=果ての国
「労働」「キャリア」「天職」=バックオフィス(マックジョブ)、スペシャリスト、クリエイター
幸福研究の第一人者 ソニア・リュボミアスキー『幸せがずっと続く12の行動習慣』
「清掃の仕事」
村田沙耶香コンビニ人間』コンビニのマニュアル作業で自己実現する主人公
やりがい搾取
楠木新『人事部は見ている』『サラリーマンは、二度会社を辞める。』
「君は何か基本的なところで考え違いをしていないか?君が毎日会社で働くことができるのであれば、まず飛び抜けた個性は持ち合わせていないと思ったほうがいい。突出した個性のある人材なら入社もできないし、たとえ働き出しても長くは続かない」
「魅力ある個性や突出した能力を持つ人材は落とした」「有能だが個性的な人材は真っ先に選考から外される」
→結局うつ病になる
世界で日本にしか存在しない”ザ・サラリーマン”という「希少種」の本当の姿
2015年クリスマス 電通 高橋まつりさん SNS
「休日返上で作った資料をボロくそに言われた もう体も心もズタズタだ」「生きているために働いているのか、働くために生きているのかわからなくなってからが人生」「男性上司から女子力がないだのなんだのと言われるの、笑いを取るためのいじりだとしても我慢の限界である」「仕事も人生も、とてもつらい。今までありがとう」母にメール。
「ジョブ型」=誰でも代替可能 と 「メンバーシップ型」=会員制組織
終身雇用と年功序列で収入を安定させることは、他者の仕事との代替可能性(天職可能性)を放棄したことへの代償なのです。
サラリーマンの働き方は、スペシャリスト(専門家)に対して「ゼネラリスト」と呼ばれますが、これは「サラリーマン」と同じく和製英語で海外ではまったく通じません。
非正規社員」が日本にしかない特殊な制度で、同じ仕事をしても給与が異なるのは「身分差別」ではないかと、ILO(国際労働機関)など国際社会から疑惑を向けられている。
橘玲『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』=伽藍とバザール ネットオークションの評価
マーティン・セリグマン「学習性無力感」電気ショックの犬 =閉鎖系である伽藍空間の日本のサラリーマン
開放空間=ポジティブゲーム(できるだけ目立ち、よい評価を集める)
閉鎖空間=ネガティブゲーム(できるだけ目立たず、悪評を避ける)
プロフェッショナル=プロフェッションを持つ者
プロフェッション=神との契約によって献身を誓った職業(宗教家、医師、弁護士)
見波利幸『心が折れる職場』
(サラリーマンの)ウツの原因は実はスキル不足
「サラリーマンは”職業”ではなく、”身分”である」 ということは、非正規社員も”身分”
海外は若者の失業率が高い
「好きなことに人的資本のすべてを投入する。」
生物の「棲み分け」理論 稲垣栄洋『弱者の戦略』
①小さな土俵で勝負する ②複雑さを味方につける ③変化を好む
アダム・スミス 世の中になぜ会社があるか?→「分業した方が効率がいい」から
なぜ地球上は1社のグローバル企業=政府によって統治されないのか?
ロナルド・コース「取引コスト理論」
=組織が複雑になるほど、取引コストは幾何級数的に大きくなる
「標準化はコスト減、カスタマイズはコスト増を招く」
→大企業からはイノベーションは生まれない理由 マクドナルド徹底した標準化
ロッキード「スカンクワークス」開発チーム
管理主義と革新性はトレードオフで、その両立はきわめて困難
アウトソーシングされるイノベーション(テクノロジー、コンテンツ)
ここに活路がある
基本戦略にまとめ
①好きなことに人的資本のすべてを投入する。
②好きなことをマネタイズ(ビジネス化)できるニッチを見つける。
③官僚化した組織との取引から収益を獲得する。
ゲーム、アプリ開発

Part3 幸福のための社会資本

「幸福」は社会資本からしか生まれない
巨万の富を手にしたとしても、そのことを誰ひとり知らなければ、たんなる紙切れ(電子データ)でしかありません。人的資本は「自己実現」に必須ですが、それは会社内や社会での高い評価に依存しています。
赤ん坊が泣くことと同様に、怒りや喜びなどのあらゆる感情の基礎には、そのように振る舞うことでなんらかの利益を獲得できる「進化論的合理性」があります。
だとすれば「幸福」という感情も、同じ進化論的合理性の産物であるはずです。徹底して社会的な動物であるヒトは、家族や仲間と”強いつながり”を感じたり、共同体のなかで高い評価を得たときに幸福感を感じるような生得的プログラムを持っているのです。
人間関係 → 「愛情空間」「友情空間」「貨幣空間」
愛情空間は2人から最大でも5人くらいの小さな人間関係で、半径10メートルくらいで収まってしまいます。ところがこの小さな世界が、私たちの人生の価値の大半を占めています。
友情空間は最大でも20-30人くらいで、半径100メートルほどの人間関係です。地方の若者たちは、中学や高校の同級生でつくられたこのベタな仲間を「イツメン(いつものメンバー)」と呼んでいます。
80%、19%、1%
家族の自治 国家が介入するのはNG
困っているひとを放置して家族の幸福を優先しても、誰にも文句はいわれません。 ← >>これがおかしい!<<
友だち=たまたま学校で同じクラスになったという偶然から生まれる人間関係。それだけ。あとは会社の同期とママ友。
地球上には何十億人ものひとが生きていますが、私たちはこのきわめて限定的な条件を満たしたひととしか友だちになれません。そのうえ仮に友だちになったとしても、それを維持するのはもっと難しいのですから、「友だち」がいること自体がひとつの奇跡です。
こうして、40代を過ぎた頃から友だちは急速に減っていきます。私は「友だちが一人もいない」と悩んでいるひとを何人か知っていますが、彼らは地方から上京し、自営業で働いています。日本的な友だち関係から完全に切れたところで生活しているのですから、友だちがいないのは当たり前で、性格に問題があるとか、生き方が間違っているとか、そんなことで悩む必要はまったくありません。
友だち関係の核にあるものは何か。それをひと言でいうなら「平等体験」です。
ここで大事なのは、クラスという新しい共同体のなかで、みんなが横一列に並んでいるという主観的な経験です。これが平等体験で、お互いの関係の核にこれがあるからこそ「友情」が成立します。
「ママ友」=子どもという平等体験
「プライスレス」と「プライサブル」
ジェイン・ジェイコブズ『市場の倫理 統治の倫理』
権力ゲーム(武士道)とお金儲けゲーム(商人道)
権力ゲーム カール・シュミット「あいつは敵だ。敵を殺せ」
二つの空間が混じり合うところで、社会の根幹は腐ってしまう。
同様に、個人の人生においても金融資産(貨幣空間)と社会資本(政治空間)は原理的に両立不可能です。富(金融資産)が大きくなると、すべての人間関係に金銭が介在するようになって友情は壊れていきます。地方のマイルドヤンキーが友情を維持できるのは、全員が平等に貧しいからです。
個人と間人
リチャード・E・ニスベット『木を見る西洋人 森を見る東洋人』
西洋人 個人や倫理を重視 東洋人 集団や人間関係を重視
個人(individual man)間人(contextual man)
関係性(コンテキスト)に埋め込まれている「共同体のなかの自分」。
日本語の尊敬語と謙譲語の文化
大野正和『まなざしに管理される職場』
1979エズラ・ヴォーゲル『ジャパン アズ ナンバーワン』
チームワークとピア(仲間)プレッシャー
至上のものは仲間・同僚
日本的経営=連帯責任、パノプティコン(周囲の目)
「個サル」の話
しめった人間関係→ドライな人間関係
「弱いつながり」
アメリカの高校のセックス相関図。
A(末端)とB(リーダー)とC(トリックスター
「幸福の伝染」効果 行動科学ポール・ドーラン『幸せな選択、不幸な選択: 行動科学で最高の人生をデザインする』
「どこに引越すか?」「好きな友だちの近くに引越すべき」
荒川和久『超ソロ充社会「独身大国・日本」の衝撃』
ソロ充を本書の枠組みで説明するならば、「すべての社会資本を政治空間から貨幣空間に置き換えたひとたち」
彼女とのデートはキャバクラで代用し、セックスはデリヘルなど風俗を使い、クラブやパーティ、「個サル」…
ソロ充=人間関係の煩悩から解き放たれた悟り
「喜びを失うことで悲しまなくてもいい生き方」
ダニエル・ピンク(アル・ゴアのスピーチライター)『フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか』
デイビッド ブルックスアメリカ新上流階級 ボボズ』
橘玲推奨のポートフォリオ基本戦略
金融資産→経済的独立
人的資本→自己実現
社会資本→愛情空間(強いつながり)貨幣空間(弱いつながり)
「ほんとうの自分」とは、幼い頃に友だちグループのなかで選び取った「役割=キャラ」の別の名前。
子どもの頃の自分(キャラ)はいつまでもこころのなかに残り、「ぼく(わたし)を見つけてよ」と訴えつづけるのです。

Epilogue それでも幸福になるのは難しい

若い頃じゃなくても苦労は買ってでもしろ
あとがき
「ひとは、自分と似ているひとからの助言がもっとも役に立つ。」
4/11読了