はじめに
・会話が途切れたとき An angel passes 天使が通る
・ポール・アンドラ 日本文学研究者
1 ダンテ―愛の超新星
・愛という言葉 概念のインフレ 歌謡曲 漫画 アニメ ゲーム
・エグザイル 流罪 亡命
・トルバドゥール 中世のオック語抒情詩の詩人、作曲家、歌手のこと
・「愛は12世紀の発明である」
・ベアトリーチェ 生前の彼女のことをうたった詩をまとめて『新生』
・利子と煉獄
・ベケット『ジェイムズ・ジョイス』「ダンテ・・・ブルーノ・ヴィーコ・・ジョイス」
・ジョイス「絶対者の絶対的不在」終わりなき煉獄の中で「人類の悪循環」が無限に続く
★浅田『ダブルバインドを超えて』。ベイトソン流に言うと、分裂症というのは、メッセージとメタメッセージの矛盾に傷つき、そのダブル・バインドから逃れようとして発症する。
・ソルジェニーツィン『煉獄のなかで』特殊収容所の生活。
・リチャード・ミズラック『デザート・カントス』
・ダンテ→ボッカチオ『デカメロン』
・高橋悠治 現代音楽家であり文芸評論家
2 ニーチェ―超人のオペラ・ブッファ
・オペラ・ブッファ=庶民のためのオペラ
・ハイデガー『ニーチェ』/クロソウスキー『ニーチェと悪循環』
・ゴンブローヴィッチ『コスモス』
・映画『ルー・サロメ 善悪の彼岸』
・『ツァラストラ』第四部「驢馬の祭り」
★これは第四部の「驢馬の祭り」の中で隠遁者とかワーグナーを思わせる魔術師とか、そういった人たちが織りなす驢馬の祭りの中に入っていって、対話をしながら、彼らの言い分に耳を傾けながらまたそこに別な価値を見出す。そうすると、もう自分がこれまでやってきた否定という行為が今度は肯定の形になってくる。そこで自己パロディが行なわれるわけですね。今まで、そこにあった中心、例えば、ツァラトゥストラという中心が脱中心化されていく。その脱中心化=自己パロディが行なわれた後に、非常に華やいだカーニヴァル空間みたいなものが現出する。それが第4部
・一種の開き直り
・ネガティブな意味での永劫回帰=資本主義とテクノロジー クラインの壺(メビウスの帯の3次元版)
・質的な価値を剥奪されたすべての要素が壺の中に入っている それがただ終わりのない、意味のない循環をしている
・近代 価値を内面化した主体としての人間/ポストモダン 巨大な情報バンクに寄生したのっぺらぼうな人間
・ニーチェの予言したとおり、ニヒリズムはどんどん深刻の度を増していき、いよいよ資本主義とテクノロジーに支えられた「最後の人間」とともに世界制覇をするに至っている
・永劫回帰=素朴に解釈するとファシズムに悪用される危険を常に孕んでいる(ハイデガーのニーチェ読解)
・クロソウスキーの読解はもっとトラジコミック(悲劇であり喜劇でもある。 悲しくも笑いあり)な一面にも注目する
・バタイユの春の陽光のくだり
・ワーグナー『ニーベルングの指環』プロトファシズム的
3 フーコー―悦ばしき回帰
・どうしても翻訳ではダメで、ジャン・ラシーヌを引き合いに出すほどのあのバロック的文体
・フーコーの全体像 ①”知”の分析論の時期②”権力”の政治学の時期③”自己”あるいは”主体化”の倫理の時期
・「汚辱の人々の生が闇の中で一瞬閃光を放つのは、権力と接触し衝突する瞬間のみだ」
・闘うこと 戦うこと
・8年間の沈黙→生の技法 生きることのアート 生存の倫理=美学
・1周すること 力への意志 自己啓発をベタではなく受容すること 戦うということ
・力としての私が自己を規定する 主体化
・AIDS レトロウイルス RNAウイルスがDNAシークエンスを乗っ取る DNA=聖書
・コロナにかかることは悪いことか?
・ジャン・ジュネ 小説→その背後の力関係を暴いた演劇→政治活動
・この現代資本主義を立体的に楽しめるか?
・言葉というのは脳と世界にとっては媒介なのだから、媒介たる所以でもって人間を不健康にする。
4 ミシマ―模造を模造する
・高度成長、あるいは戦後民主主義に対する違和を唱えれば唱えるほど、ほとんど背中合わせの存在になる。
・三島こそは戦後的空虚の象徴そのもの
・コジェーヴ ヘーゲル研究者 歴史の終わり ”アメリカン・ウェイ・オブ・ライフ”=動物性への回帰 ただ快楽(安全安心便利快適)を追い求める 日本旅行を経て 実現されているのはアメリカではなく日本だ
・茶道から切腹に至るまで、完全に形式化された、つまり歴史的という意味で人間的な内容を完全に失った、空虚な記号的儀礼が延々と反復されている。これがコジェーヴの言うスノビズム
・あれは何の意味ももたない、純粋に見かけ上の効果を狙った、スノビズムによる自殺ではないか、という気がするんです。そういう意味では、ポストヒストリックあるいはポストモダンな自殺とも言えるでしょう。
・僕の家の隣に墓のある二条天皇 北野天満宮 ラーメン紫蔵近く
・母性と父性 父性 競争社会 お金
・戦争が終わって死なずに生き延びてしまったということが根源的な条件として在る。死という恩寵を奪われて、何の意味もなく世界の終わりの後に生き延びなければならない。この生は虚構の生であって、いわばアンドロイドみたいに空虚を生きているだけだ。ただ、その空虚な生活も繰り返しているうちにそれなりの堅固さを備えてきて、もちろんこんなに下らないものはないけれども、下らないものとわかった上でそれをいけしゃあしゃあと引き受けるということが人生なのだ、と。『鏡子の家』の鏡子の言葉を借りると”人生という邪教”ですね。自分にとって戦後に生きるということはそういう邪教を信ずることなのだ、と。
・30代になってからボディビルはやってみせるわ、ワハハハと高笑いはするわ、これ見よがしに結婚して子供を作って家を建ててみせるわ、ロマン主義を放棄し意図して俗悪きわまる人生を送ってやる。 アイロニカルなメタ物語
・ポストヒストリックな状態というか、戦後という空虚を生きることを本気で引き受けた感じはする。
・あのキッチュな家 大田区馬込 大森駅
・「ミシマ」という記号
5 ヴェンダース―廃墟の光
・『ベルリン・天使の詩』
・ベンヤミン『ベルリンの幼年時代』
・パウル・クレー『新しい天使』
・ノスタルジー 今見ている風景は記憶の断片と符号させるためにある
・『ことの次第』
・「遊歩者」
・ピーター・フォークはジャック・デリダにそっくり
・ニック・ケイヴとベルリン
・フェルナン・ブローデル『物質文明・経済・資本主義』
・市場=よそ者歓迎 よそ者が疎外されない空間
・ベンヤミン「悲劇論」アレゴリー 寓意 例えば「狡猾な狐」 狡猾という抽象的な概念を狐という動物になぞらえてあらわす
・商品というのは、一方では金銭で評価され売買される物質であると同時に、他方では情動的な価値を帯びたフェティッシュ(1 呪物 (じゅぶつ) 。物神。2 フェティシズムにおける崇拝の対象となるもの。)でもある。商品こそ結びつかない二つのものを結びつける近代のアレゴリー。→パサージュ論。
・その意味でもっともアレゴリッシュな商品というのは他ならぬ娼婦→ボードレール
・団鬼六の水商売好き
・ベンヤミンは、商品化=物象化=疎外を批判さえすれば、すべてがシンボリックに調和した美しい世界に戻れるなどとは全然考えていない。われわれは、娼婦や詩人まで含めたアレゴリーとしての商品が無秩序に散乱し永遠に回帰しているような廃墟の中に生きている。むしろ、その回帰を担いぬくことによって初めて、回帰の中で一瞬、新たなるもの、ラディカルに差異を持ったものが告知される瞬間に立ち会えるはずだということになるわけです。言いかえれば、「救いは連続的な破局のなかの小さな亀裂にかかっている」というわけですね。
・奇跡(連続性と繋がること)はいつも一瞬だけ
・救いの瞬間、永劫回帰の中で一閃する特異点
・すべてが狂ったメリーゴーラウンドのようになり走馬灯のようになって回帰し続けている商品世界
・自分の妻を生きた貨幣として訪問客に提供するいわゆる「歓待の掟」(クロソウスキー ロベルト3部作)。エスキモー式
・ドゥニ・オリエ編『聖社会学 1937-1939 パリ「社会学研究会」の行動/言語のドキュマン』
・「彼(ベンヤミン)のノスタルジーはマルクスとフーリエの和解を目指していた」
・「偉大なフーリエ主義者」としてのベンヤミン
・そのフーリエが、たとえば「アンジェリカ」(天使制)なんていうシステムを考えている。お互いには純潔な関係にある美少年と美少女のカップルが各々20人の男女と性的に結ばれることで、人々の間の情念の交換を身をもって媒介するという、まったく荒唐無稽な計画なんですが、この「天使的なカップル」がまさしく<生きた貨幣>ということになるわけでしょう。あるいは、ボードレールにとってのサバチエ夫人なんていうのも、取り巻きによって共有された神聖娼婦であり、したがって「天使」であるということになる。そういう奇妙なヴィジョンが、おそらくベンヤミンを通じてクロソウスキーの中に流れ込み、あの「歓待の掟」につながっていったんじゃないかと思う
・そこに形成されるのは、商品化=売春や複製=回帰をたんに否定するのではなく、むしろそれを突き抜けていくような奇怪な思考
・させ子 ヤリマン ヤリチン ドンファン カサノバ
・人生これ即ちフィールドワーク
・『アメリカの友人』 友人に飢えている お金では買えない
・ダンディ=弱音を吐かず耐えること
・鈍重な鬱/諦念を抱えつつ激流に飛び込むこと
・老人がいま何をしているか。社会と関わること。
・マキナニー『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』
・遊び人の目に映る都市はまさに商品の回帰の渦ですね。その中で自分まで高級な商品に仕立てようとしている。
・『惑星ソラリス』の高速道路は赤坂
・ベンヤミン『都市の肖像』