マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【読書メモ】スラヴォイ・ジジェク著、中山徹訳『真昼の盗人のように――ポストヒューマニティ時代の権力』(青土社 2019年)

【目次】

序論――はじめにわるいニュース、次によいニュース……とはいえ、後者は前者よりわるいかもしれないが

アラン・バディウ『真実の生 La vraie vie』(2016)「ソクラテス以来、哲学の機能は若者を背徳者にすること、若者を支配的なイデオロギー的-政治的秩序から離反させること、過激な懐疑の種をまいて若者が自律的に考えられるようにすることである」
・若者は普通、教育を受けることによって支配的な社会秩序に組み込まれる。支配的イデオロギーの再生産において若者の教育が重要な役割を果たすのは、そのためである。
・そして、このように若者を煽ることは、悪――既成の生活様式を壊乱するという意味での悪――の別名ではないか。
・若者を煽る哲学者プラトンデカルトスピノザヘーゲルニーチェと逆に「正常化」の哲学者アリストテレストマス・アクィナス、カント
遺伝子工学を巡るハーバーマススローターダイクの論争
・「国家哲学」=一方で科学的研究と技術的進歩を推進しつつ他方でその社会的-象徴的衝撃を封じ込める哲学、つまり、その衝撃が既存の神学的-倫理的情勢にとって脅威にならないようにする哲学。
ハイデガー 思考は、自由に「みずからに逆らって」思考する力をその核に秘めているかぎりにおいて、慣習的な思考からみて「悪」として現れざるをえない
・ここで決定的に重要なのは、このあいまいさに固執すること、そして、いうまでもなく、正常化と自由の深淵という二極のあいだに「妥協点」をもうけて手軽な解決策を見いだすという誘惑に逆らうことである
・しかしここでドゥルーズ的な問題 脱コード化
・われわれの生きる時代は、アイデンティティの基盤となりうる伝統が存在しない、快楽主義的な再生産を超えた生き方を可能にするような有意義な世界の枠組みが存在しない異常な時代
・今日のニヒリズム――永遠の不安をともなったシニカルな日和見主義の支配――は古い足かせからの解放として正当化されている
・<新世界無秩序>、世界なき文明の影響は、若者に典型的に現われている。若者は、完全に燃えつきるという激しさ(性的快楽、ドラッグ、飲酒、はては暴力)と、成功するための努力(既存の資本主義的秩序の内部で勉強し、出世し、金を稼ぐ…)とのあいだで揺れ動いているからだ。かくして、永遠の侵犯行為が規範となる。
オルタナティブとして現われる宗教原理主義というさらにひどい狂気
・現在のイデオロギー的苦境を表すたとえ マケドニア スコピエのホテルの灰皿 禁止と許可が同時に受け入れられている  
パラダイス文書 超富裕層は慣習法に縛られない特殊区域に住んでいる
・「主の日は盗人が夜くるように来る」(「テサロニケ人への第一の手紙」)
・上海コミューン 1967年1月の嵐 コミュニズムの中にあっても再度本物を目指し
・革命前夜のレーニントロツキーの会話「革命が成功したら、われわれはどうなるのだろうか?」
・現実の貧者や被搾取民となんのかかわりもない、抽象概念にしがみついた、日和見主義としてのコミュニズム
ヘーゲルにとって「理念」とは、たんなる<当為(するべき、あるべき)>としての概念ではなく、みずからを現実化する力をもった概念でもある。したがって、コミュニズムという理念のアクチュアリティをめぐる問題は、目下の現実のなかにその理念へと向かう傾向を見出すことの問題である。そうでなければ、この理念に時間をかけてつきあう価値はない。

第一章 情勢

グローバル資本主義のさかさまな世界

・日常生活の革命 東理沙「人間一人ひとりが国」 ライフスタイルが革命
ベネズエラ ウゴ・チャベス
・このうえなく野蛮な資本主義のなかにあってさえ、誰が国家装置を管理するかが重要
★古典的マルクス主義新自由主義イデオロギーは、両者とも、国家を資本の再生産という要求に従う二次的なメカニズムに還元する傾向にある。これによって両者は、経済的プロセスにおける国家装置の積極的な役割を過小評価する。今日われわれは資本主義を、国家を操る<わるい大きなオオカミ>として物神化するべきではない。国家装置は経済的プロセスの中核において活動しており、資本の再生産に関する法的およびそのほかの(教育的、エコロジー的)条件をたんに保証するだけでなく、それ以上のことをしている。国家は、実に様々な形態をとりながら、経済的な行為主体(エージェント)そのものとして活動する(国家は破綻寸前の銀行を救済し、選ばれた産業を支援し、防衛装置やそのほかの軍事設備を発注する)。たとえば、今日の合衆国では、生産の約50%に国家が介在しているのだ(100年前は5-10%)。
・日銀が日本のETFを買って企業を支配すること。
・難民を下級労働者階級として使うことの不当さ
・難民と残った人 難民はむしろ活動的、向上心がある層
パレートの法則 80% 80%は潜在的に失業者
ネグリ ヴェネツィアーメストレの郊外の織物工場の労働者を指差し「みたまえ!彼らは自分がすでに死んでいることを知らないのだ!」
・知的労働に対して支配権をにぎる「ポストモダン」資本主義の力学によって無残にも時代遅れとなった社会主義のあやまり
・ソムルグスキーのオペラ『ボリス・ゴドゥノフ』ラスト・シーン グロテスクな革命
・「ブルジョア(リベラル)民主主義」と「プロレタリアート独裁」との差異
・リベラルな要求は、自動的に既存のシステムの枠内に閉じ込められる。それは真正の解放を目標としていない。利益はたんに追求されるべきではない。利益は、利益には還元できない理念を取り込めるように再規定されねばならない。
ポーランドの右翼ポピュリスト与党「PiS(法と正義)」≒フランス マリーヌ・ル・ペン
・緊縮/反緊縮

仮想資本主義と、自然の終わり

・ヴォルフガング・シュトレークは、次のように正確な言葉でマルクス主義を説明している。資本主義の「最終的危機」に関するマルクス主義の認識は、正しかった。われわれは今日、明らかにその危機のなかに入り込んでいる。だが、この危機はまさに最終的である。それは衰退と
崩壊の長期的プロセスであり、そこには安易なヘーゲル止揚の展望などない。つまり、そこには、この衰退をポジティブなものに転換し、それを高次の社会編成のための手段に変える動因など存在しないのである、と。
★搾取の増大は必ずしもプロレタリアートの戦闘的精神を高めるとは限らない。とくに闘争の敗北後には、失業の増大をともなう景気後退において、搾取の増大は大衆の急進化を生み出さず、反対に、さらなる士気喪失と分解とをもたらすのである。(トロツキーコミンテルンの誤謬の『第三期』」)
★金融化(価値生産に寄生する金融取引による利潤)がまじで悪
★借金の大部分は金融資本およびその利潤を得るために使われている。
レベッカ・カーソン M-M'(G-G')
擬制資本が人間の未来を支配する 例えば教育ローン
・われわれの社会では、自由選択が至高の価値に祭り上げられているので、社会的な管理や支配が主体の自由を侵害するものとして現われることは、もはやありえない。だから、社会的な管理や支配は、自分を自由な存在として実感する個人の経験として現れる必要があるのだ。不自由が自由に偽装されて現われる例は、たくさんある。→例えば「フリーター」。
・みなが「自己企業家」
アイン・ランド『肩をすくめるアトラス』に出てくる有名な「貨幣への讃歌」「貨幣はあらゆる善の根源である」ネオリベリバタリアニズムの象徴、ウォール街 ゴードン・ゲッコーの演説 
・(従来の労働による価値増殖の体制が崩れるにつれ)貨幣は支配の直接的手段として機能しはじめる。貨幣は政治権力の手段として、つまりこの権力を行使しその臣民を管理する方法として用いられる。→ベーシック・インカム
ルカーチ「物象化」「ルカーチの主要な関心は物象化にある。すなわち、歴史の資本主義段階において、もろもろの社会的存在が「物象」へと変えられ、意味の世界が空洞化されることである。あらゆるものは物象化されて〈商品〉となり、その結果、人間が生産した世界が、人間に敵対的で疎遠なものとなる。このことをヘーゲルは「疎外」と呼んでいたが、マルクスは「商品フェティシズム[物神崇拝]」と分析した」
・いまの社会のルカーチの物象化のさらに次のステージに進んでいる。つまり「物」にすらならない。直接的な経験の売買、直接的な支配。
電子マネーの偽札、偽電子マネー
・このとき、われわれの物質的な社会的現実が資本の投機的な運動によって支配されるだけでなく、この現実自体が次第に「幽霊化」される
・ハリケーン・アーマ 劉慈欣「三体」。気象異常の惑星でサバイバルする仮想現実ゲーム
ウィリアム・ジェイムズ 地震「それは純粋な喜びと歓待の気持ちであった」

ハツカネズミと人間、あるいは、ポストヒューマン資本主義に向かって

・『ブラック・ミラー』シーズン3 第一話「ランク社会」
・評価スコア=システムへの忠誠度、隷従度
・「2016年9月、中国政府は「社会的約束を破った」者(たとえば、債務不履行の者やオンラインで政府に対して不満を述べた者)に与える罰を箇条書きにして示した。スコアの低い者は次のような措置を受ける。官公庁の職には就けない。社会的セキュリティや福祉を享受できない。中国の税関を通るとき、一般の人よりも厳重にボディチェックを受ける。食品部門や薬品部門の上役にはなれない。夜行列車で寝台を得られない。五つ星のホテルやレストランに入ることはできず、旅行代理店でも門前払いされる。子供は学費の高い私立学校に入れない。」
・中国だけではない。既に実現されている。
イーロン・マスク ニューラリンク 脳へのチップ移植
ジュリアン・アサンジによるgoogle告発
・ロンドンのエクアドル大使館に監禁状態 ガーディアン紙による人格攻撃
ケンブリッジ・アナリティカ 選挙コンサルティング会社 グーグルやフェイスブックと国家公安機関とのずぶずぶの関係
・ディープ・ステイト「深層国家」
・人間の脳の遠隔操作 脳のハッキング
・ロボットを製造するコストと人間の脳にチップを埋め込むコストとの比較
・2002年にはネズミの実験ですでに成功
ギリシア首相 アレクシス・ツィプラス 反緊縮→緊縮
生のデジタル化
・『ブレードランナー2049』あらすじ
スターリン イリヤ・イヴァノフ「人間サル」
ナチス 人体実験 薬 旧日本軍 731部隊 米軍も強化パイロット
・『白いゾンビ』(1932)ハイチの砂糖工場 「そこでは」
・そこではゾンビたちが労働者として働いている。ルゴシがすぐに説明しているように、このゾンビたちは労働時間について文句をいわず、労働組合も要求せず、ストライキもしない。ただひたすら働き続けるのである。
レプリカント=理想的な奴隷労働者
マルクス・エンゲルスコミュニスト宣言』における家父長制(家族制)擁護→家族制すら壊すのが資本制
・デジタルは「ブラック・コーヒー」と「ミルクなしコーヒー」の差異を認識できるか?つまり、フロイト的無意識を認識できるか?無いものを想像できるのか?

第二章 権力の気まぐれ

海図なき海のナビゲーター、レーニン

レーニン『国家と革命』(1917)十月革命を理論的に準備 労働者の国家というビジョン
・「この国家では、すべての料理人は国家統治の方法について学ばねばならない。あらゆるひと――高級行政官も例外ではない――の給与は労働者のそれと同じである。すべての行政官はそれぞれの地元の選挙民によって直接選ばれ、選挙民は行政官をいつでもリコールする権利をもつ。常備軍は存在しない」
コミュニズムにおいては、人間的生活のこの不変の規範的基盤が、ゆがめられることなく最終的に支配する。つまり、「資本主義型の奴隷制や、資本主義型搾取の測り知れない恐怖、残虐さ、不条理、醜聞から解放された」コミュニズム社会において、はじめて人々は「社会生活の基本ルールを遵守することに次第に慣れていく。人々は暴力や強制に縛られなくても、服従を強いられなくても、また国家と呼ばれる強制のための特殊装置に縛られなくても、このルールを遵守することに慣れていく」
・「社会生活のルールに違反する行き過ぎについて言うと、われわれの知るところ、その根本的な社会的原因は、人民に対する搾取である」
・革命の規範的土台となるのは不変の「人間本性」として機能するある種の普遍的ルール
・デジタルは<欲望>するか?
・<平等>とは普遍的な理念か?
レーニンは理念と現実で揺れ動いている。
・ジャン=クロード・ミルネール(言語学者)の出発点は、正確さ(事実としての真実、事実に関する正しさ)と真理(われわれが積極的にかかわる大義)とのあいだの根源的なずれ(ギャップ)である。
・この[神=大<他者>を通じた]真理と正確さとの短絡は、スターリンの基本的な原則ではなかったか。この原則においては、真理は正確さを無視できるだけではない。真理は正確さを恣意的につくり変えてよいのである。
・ロシア語の特異性 普通の意味の単語とより倫理的意味の込められた単語の2種類ある。 e.x.真理、自由
・普通の知識人/インテリゲンチャ=社会改良という特殊な使命を課され、それに従事する知識人
・ロシアにおいては、こうしたずれ(ギャップ)が明確に意識されている
サン=ジュスト「革命家はおのれの勇敢さだけを頼りにする最初の航海者に似ている」
レーニン、「解放区」――グローバル資本主義システムの外部にある解放勢力によって管理されたスペース――を開くことに対する彼の(よい意味での)脅迫観念。
レーニン=いかに権力を掌握するかという点においてプラグマティストであり、権力を使って何をするかという点においてユートピア的理想主義者であった
・ミハイル・スースロフ レーニン語録のキャビネット
・これがソヴィエト・レーニン主義の真実であった。レーニンは究極の参照項として機能した。つまり、彼の引用によってあらゆる政治的、経済的、文化的政策が正当化されたのである。だが、そのやり方は徹底してプラグマティックで恣意的であった――まさにカトリック教会が聖書を参照するときと同じように、である(またわれわれは、レーニン自身がどの程度マルクスのテクストを同じように用いたかについても考慮すべきである)。
スターリン主義=「現実」を固定して、<現実界>を無視する。<現実界>の介入を阻止する。

選挙、大衆の圧力、惰性

・ヤニス・ヴァルファキス『その部屋の大人たち』ギリシャ反緊縮政党シリザと選挙の関係
・選挙反対論①支配階級によって支配されたメディアは有権者の大部分を操っているため、有権者はみずからの利益・関心にもとづく合理的判断ができなくなる。②選挙は4年に1度行われる儀式であり、その主たる機能は次の選挙までの長い期間、有権者を受動的にすることである。
十月革命スローガン「土地と平和」
・革命のタイミングと「憤怒資本」
・大衆の圧力を緩和する方法が、(ほどよく)自由な選挙。
・フランス語 虚辞のne 無意識の不安
・クロード・ルフォール「民主主義の発明」 「人民」そのものは存在しない。
・「人民」という民主主義的な概念はカント的な意味で否定的な概念であり、その機能はただ、ある限界を明示することにある。つまりこの概念は、なんであれ限定された主体が完全な主権をもって統治するのを禁ずるのである(「人民」が存在する唯一の時間帯は、民主主義的な選挙のときである)。
ブルジョアジー独裁とプロレタリアート独裁との差異
柄谷行人 くじ引き制

おもしろい時代の退屈な世界にようこそ!

ヒラリー、マクロン立憲民主党=左翼の排除
・ル・ペンとマクロンの悪循環
スーザン・サランドン 「ミートゥー」の過激さは偽物であり、ポーズにすぎない
カトリックの「道徳」政治を支える隠された裏面=トランプやカチンスキの下品さがうける。
・TINA(there is no alternative)=サッチャーのあだ名
・サンダースに対するクリントン陣営のバッシング
・とにかく富裕層や権力者に法を遵守させること
・ヤニス・ヴァルファキス「グローバルなミノタウロス」=ウォール街
グローバル資本主義=新たな寡頭制
・ABC『ロザンヌ』ロザンヌ・バー バレリー・ジャレット大統領上級顧問に対する人種差別的なツイート
・実質的にいって、1940年代に生まれたアメリカ人は、なべて親よりも多くの金を稼いだ。今日では、子供の稼ぎは親の稼ぎの半分以下である。ブレグジットとトランプをもたらした、斜陽重工業地帯の反乱は、朽ちはてる工場、死にかかっている街、半世紀におよぶ空約束を反映している。取り残されたひとたちは、心底怒っている。トランプは彼らにとって〔ひとを愚弄するときに立てる〕中指なのだ。トランプが沿岸地域のエリートを憤慨させればさせるほど、彼の支持者は、エリートがいらだつのをみて、ますますほくそ笑む。こうしてついに世間は、取り残されたひとたちに気づくようになる。
・ティム・ラヘイ(福音派ベストセラー作家)『ヨーロッパの陰謀』
・フランス カレーの難民キャンプ
レーニンの革新 国家そのものの粉砕 常備軍、警察、官僚のいないコミューンを実際に実現
レーニン1917「四月テーゼ」 ポルダーノフ「狂人の精神錯乱」妻ナデジダ・クルプスカヤ「まるで気が狂った」
レーニンが成功を収めたのは、彼の主張が党のノーメンクラトゥーラ〔幹部〕を迂回して、革命のマイクロポリティクスと呼んでみたいものと共鳴したからであった。革命のマイクロポリティクスとは要するに、草の根の民主主義が、すなわちロシアの大都市周辺で突如現れ、「正当な」政府の権威を無視しながら自分で事を運ぶ地方委員会が、驚異的、爆発的にひろがったことである。これはこれまで語られなかった十月革命の物語であり、理想に燃えた冷酷な革命家からなる小グループがクーデターを成し遂げた……という神話の裏面である。
・↔トロツキー「ブランキ主義者」
・クルツィオ・マラパルテ『クーデターの技術』政府機関の技術部門を抑える。(鉄道、発電所、電話・電信事業所、港、ガス製造工場、水道本管など)
・われわれの生命が、ポストヒューマン的権力の時代と名づけうる新時代において漸進的にデジタル化される
・現在ではウェブ。グーグル、NSA。 デジタル網を「乗っ取る」こと。

第三章 アイデンティティから普遍性へ

アガサの知ったこと

アガサ・クリスティ18冊目の本『フランクフルトへの乗客』(1970)
・1970年の混沌とした世界において、安定した社会――いっとき犯罪によって混乱をきたすものの探偵によって秩序を回復する、法と秩序にもとづく社会――を前提とする探偵小説を書くのはもはや不可能である、という思い。
・基本的な社会認識の枠組みが崩壊したという感覚。
・60年代の学生運動もナチの陰謀だと解釈するほど。

ハンティントン病と闘う方法

・手や足が勝手に動いてしまう
ノルウェー移民排斥主義者 アンネシュ・ブレイヴィク 大量殺人
・基本は自治 カタルーニャスコットランド → 日本も
・イエメン ゲータ シリア 難民
EUの崩壊はアメリカとロシアを利するだけ

不変なる階級闘争永劫回帰

奴隷制
バージニア州リッチモンド 南軍 ロバート・E・リーの彫像
ジョン・ブラウン 奴隷解放主義者
・アラモ砦 1999ランス・ホール監督『ワン・マンズ・ヒーロー』 メキシコ軍とテキサス独立派の戦争
トマス・ジェファーソン第3代アメリカ大統領 トマス・ペイン『コモン・センス』
・2017年シャーロッツヴィル暴動事件
・ジャミール・カダー ウォルター・ベン・マイケルズ
アイデンティティ・ポリティクス ポリコレ 文化の私有化 → 彼らは解放闘争を実践しているが、そのやり方はその闘争の重要な特徴を無視し無効化している
ラテンアメリカ系労働者と白人中流階級の若いビキニ女性のエピソード
・下層階級からの”口説き”はハラスメント
・常にエリート層のほくそ笑い
・シンプルな階級闘争をわかりにくくする(隠す)ためにアイデンティティ・ポリティクスが利用された
・再分配の政治学承認政治学にとって代わられた。
オルト・ライト=白人のアイデンティティ・ポリティクス
・『ヨーロッパ―最後の戦い』(2017)ネオナチの視点でみる欧州史
ハンガリー オルバーン・ヴィクトル ハンガリー民族主義 反移民のキリスト教
・オランダ 右派ポピュリズム ピム・フォルタイン ゲイ 暗殺される
アイデンティティ意識が強すぎることが問題なのではない、適切なアイデンティティを欠いていることが問題
原理主義者は本当の意味で原理主義者だろうか?なにか恐れている、不安に駆られている。嫉妬、妬み、ルサンチマン
・普遍性という暴力。正解は一つだけなのか?
★「生活様式」=現実界>の核=享楽
・「生活様式」とは、最終的に、ひとつの共同体がみずからの享楽を編成するさいの方法なのである。だから「文化的統合(インテグレーション)」に反対する。
チベットの過酷な封建社会。普遍性と「基本的人権」の関係。
・デジタル・テクノロジー地球村(グローバル・ヴィレッジ)」=文化的コロニアリズムを強化する GAFA
・ローカル性をもっと強く発揮できるか?

第四章 エルンスト・ルビッチ、セックス、間接性

間接性からラタタタタへ

・ルビッチ『生きるべきか死ぬべきか』(1942年) ナチ占領下のポーランド あくまで喜劇として
・恐怖が一線を越えているとき、それを悲劇として描くことは逆に冒涜になりうる
ラカン用語 サントーム(症状)=享楽の極小の結び目
・ヒステリー者と倒錯者の違い
・『カサブランカ』3秒半の管制塔のシーン
・『ザ・サウンド・オブ・ミュージック』(1965)「あらゆる山に登れ」
・ヘイズ・コード=ハリウッド映画の自主規制 『陽気な中尉さん』

契約セックスに抗して

・契約セックス=同意書に署名
・女性の性の開放は、たんに(男の性的欲望の対象として)「対象化」されることから禁欲的に身を引き離すことではなく、好きなときに身を差し出したり身を引いたりして積極的に自己対象化とたわむれる権利のことである。
・me tooとパラダイス文書の扱いの差 U2ボノ、シャキーラ、英国王室、鳥山明鳩山由紀夫
ブレヒト「銀行をつくることにくらべれば、銀行強盗なんてかわいいものだ」 巨悪は見逃され、小悪は叩かれる 悪質さの度合いの違いが無視されている
・性愛はポリコレの枠にはめられる程、単純ではない。→規則化できない
ラカン「女は(支配し操作できる)主人を欲している」
アレクサンダー・ペイン『ダウンサイジング』(2017) ファックする fuck/ファックし合う make fuck

シニシズム、ユーモア、政治参加

ハインリヒ・ハイネ「われわれは何よりも『自由・平等・そしてカニのスープ』を大事にしなければならない」
・抽象的な観念ばかりを追ってはいけない
・『ニノチカ』(1939)ソビエト連邦を風刺 快楽の追求がイデオロギーに勝利する
・『善良な兵士シュヴェイク』(1923)
・礼儀と法の違い 大陸法civilローと英米法コモンロー 
・常識、コモン 笑い 涙 感情 ユーモア 温かさこそが政治の肝

ラ・ラ・ランド』と『ブラックパンサー』にみるレーニン的な身振り

愛は目的ではない 思いがけず受け取る恩寵 副産物
・革命の大義と愛
・ミアは自らの<大義>に関して「レーニン的な」選択をしている
レーニン的な誠実さ 使命
・『ブラックパンサー』『失楽園』『ダークナイトライジング』キルモンガー、サタン 

結論――われわれはいつまでグローバルに行動し、ローカルに考えられるのか

ロマン主義的イロニー/ユーモア
・アレンカ・ジュパンチッチ「トランプの当選から明らかなように、極貧層は最富裕層のために戦う。左翼はその極貧層を叱り侮辱する以外に、ほとんどなにもしない」
・左翼はそれ以上に悪いことをしている。左翼は貧困層を見下すようにして、その混乱と盲目を「理解する」のだ、と。この左翼リベラル派の傲慢さがなによりもはっきり現れるのは、新しいジャンルである、政治的コメントとコメディを合わせたトーク・ショー(ジョン・スチュアート、ジョン・オリヴァー)においてである。この種の番組の売りは、リベラルなエリート知識人の純然たる傲慢さであるといってもよい。
・モンゴルの戦士とロシアの農夫婦の睾丸のジョーク
・この悲しいジョークは反体制派の苦境を語っている。彼らは、党のノーメンクラトゥーラ〔幹部、特権階級〕に手痛い打撃を与えていると思っているが、実際は、人民をレイプし続けるノーメンクラトゥーラの睾丸を少しだけ汚しているにすぎないのである。これと同じことは、トランプをからかっているジョン・スチュアートとその仲間たちにもいえるのではないか。
・フェルディナント・フォン・シーラッハの芝居『テロ』(2015 ベルリン)終演後、客は有罪か無罪かのボタンを押さなくてはならない
スーザン・サランドンオバマ、ヒラリー批判
・1948年 アンドレイ・ジダーノフ心電図事件 ソフィア・カルパイ
・2017年10月トランプ オピオイド緊急事態宣言
・「宗教は、抑圧された生きものの嘆息であり、非情な世界の心情であるとともに、精神を失った状態の精神である。それは民衆の阿片である。民衆の幻想的な幸福である宗教を揚棄することは、民衆の現実的な幸福を要求することである。民衆が自分の状態についてもつ幻想を棄てるよう要求することは、それらの幻想を必要とするような状態を棄てるよう要求することである。したがって、宗教への批判は、宗教を後光とするこの涙の谷〔現世〕への批判の萌しをはらんでいる。」(カール・マルクスユダヤ人問題によせて ヘーゲル法哲学批判序説』)
・現在の民衆の阿片=「民衆(ポピュリズム)」と「阿片」
・カナダ人のゲイのヴィーガン クリストファー・ワイリー → ケンブリッジ・アナリティカのデータコンサルタント
・英国のEU離脱→トランプの選挙運動 スティーブ・バノンとともに
facebookの青い背景に赤いnotice、twitterのベルマークに青いnoticeが脳を刺激しドーパミンを出す。→SNSが麻薬に 『スマホ脳』
・薬物の2つの使用法(過剰な興奮とうつ状態とに対抗する)とわれわれの私的生活および公的生活との関係
フランコ・ベラルディの韓国レポート「空虚な文化空間のなかにあって、韓国人の経験は極端な個人主義の特徴を帯びている。そして同時に、それは集団的精神の究極のケーブル通信化へと向かっている。この孤独なモナドたちは、手にもった小さなスクリーンから流れてくる映画、ツイート、ゲームとたえず敏感に交流しながら、都市空間のなかを歩いている。彼らは完璧に孤立しており、データが流れ込んでくる滑らかなインターフェイスに完璧につなぎとめられている[…]。韓国の自殺率は世界一高い。韓国では、40才以下のひとの死因でいちばん多いのは自殺である。興味深いことに、韓国の自殺者数は過去10年で2倍に増えた[…]。2つの世代のあいだで、生活状態は、歳入、栄養状態、自由、外国旅行の機会の視点からみて確実に向上している。だが、この改善の代償は、日常生活の砂漠化、生活リズムの極端な加速化、人生の極端な個人化、際限のない競争を意味する不安定な就業であった[…]。仕事のリズムの激化、風景の砂漠化、感情生活の仮想化は、ひとつにまとまって、意識的に拒むことも抵抗することもむずかしい、一定のレベルの孤独と絶望を生み出している。」
・われわれの住まう社会空間は、ますます世界を欠いたものとして経験されていると、バディウは指摘している。
ナチスさえまだ一つの世界像を示していた。世界があった。
★資本主義の大きな危険のひとつは、おそらく、ここに位置づけられるべきであろう。資本主義は、グローバルなものであるとはいえ、厳密な意味で世界を欠いたイデオロギー態であり、多くの人々から、意味のある認識の枠組みを奪っている。であるなら、これこそは、数百万の人々が現代の阿片に逃げ込む理由である。つまり、その理由はたんに新たな貧困や将来の不透明性にあるのではなく、堪えがたい超自我的な圧力にあるのだ。この圧力は2つの側面をもっている。職業的に成功せよという圧力と、人生をめいっぱい楽しめという圧力である。
プラトンの洞窟の比喩 われわれはどうやって洞窟の外に出るか
・「わたしをわたし自身に連れもどす」主人
★このことは、プラトンの想起(アナムネーシス)の理論(いわば、知らなかったことを思い出すこと)につなげられる。
★したがって、われわれはここで、メビウスの帯の2つのヴァージョンを手にする。資本主義的自由を最後まで追っていくと、それは結局隷従の形態そのものに反転する。そして、われわれがもし資本主義的な自発的隷従からの離脱を望むのであれば、われわれの自由の主張は、自由とは反対の形態、<大義>への自発的献身という形態をとる必要がある。
ブルジョア的な人権「自由、平等、友愛、およびベンサムプロレタリアート、左翼バージョン「解放、平等、自由、およびテロ」普遍的解放に高潔に関与せよという圧力としてのテロ ベンサムかテロか
・近代=集団的な自己欺瞞 ドクサ(臆見)の支配
・白人の人種主義イデオロギーが行為遂行的な効力を発揮する
キリスト教が素晴らしい宗教ならば、なぜキリスト教は本当に長い期間奴隷制を容認してきたのか?
・神はアダムとイブに、知恵の木の実を食べてはならぬと警告する。では、なぜ神はそもそもこの木を楽園に置き、なおかつ、それに注意を向けさせたのか。神は、人間の倫理が<堕落>のあとではじめて発生しうることを知っていたのではないか。
・『アンティゴネ』法律を破って、地下に幽閉 惻隠の情、素直な感情を優先
・今日の支配的イデオロギーは、なんらかのユートピア的な未来をめぐる積極的なヴィジョンではなく、シニカルなあきらめ、「現実どおりの世界」を受け入れることであり、それは次のような警告をともなっている。世界をあまりにも大きく変えようと欲すれば、全体主義の恐怖を生むだけである、と。
・今日におけるイデオロギー的検閲の主な機能は、実際の抵抗をつぶすことではなく――これは抑圧的な国家装置の仕事である――希望をつぶすことである。つまり、あらゆる批判的プロジェクトは最終的に強制収容所的なものへと向かう道を開くのだと、有無をいわせず非難することである、と。
・ラディカルな変革という希望を、ベタに、強く、みれるのか。

原注

訳者あとがき

イデオロギー=洗脳。現代の洗脳を見抜くこと。
フロイト精神分析治療の意図は、自我を強め、自我を超自我(ルール、規則、社会の空気)からさらに独立させ、自我の認識領域を拡大し、自我の組織を完成し、その結果自我がエス(無意識)の新しい諸部分を獲得できるようにするということにあるのです。かつてエスだったものを自我にしなければならないのです。それはたとえばオランダのゾイデル海干拓のような文化事業なのです」=「知らなかったことを思い出す」想起説
・「洞窟」からの退出=現在のポストモダン的な超自我からの独立 & 「普遍性の獲得」普遍性=マルコム・XのX、エス(無意識)
ポストモダンな現状にあって、人類にとっての「ゾイデル海」を干拓すること  

主要人名索引

9/11読了
 
◆要約:デジタル化やバイオテクノロジーの発達が進むポストヒューマン資本主義の時代、人間はさらに生気をなくし、生は幽霊のように希薄化する。その時代にわれわれはどう抗う可能性があるか。レーニンを改めてリスペクトすること。
◆感想:ジジェクの本を初めて読んで、だいたい雰囲気がわかってよかった。時代の支配的イデオロギーから精神分析の手法を使って自由になっていく。映画を解説しながら社会を読み解いていくのが特徴的。話題が散らかり広がり過ぎていてだいぶ読みづらかった。
ジジェクからするとアイデンティティ・ポリティクスやポリティカル・コレクトネスもいまのポストモダン社会でわれわれを縛っているイデオロギーの一つとネガティブに捉えている。その点でリベラル陣営から批判されている。PCの行き過ぎは良くないところもあるが、社会の進歩である部分もあるので、難しい問題だ。
レーニンのことを全然知らなかったので、少し知れてよかった。