マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【講演メモ】「図書館で哲学を withコロナ時代の哲学 第二回『政治的リーダーシップ、民主主義、メディア』」講師:山脇直司

神奈川県立図書館主催
ZOOM開催

1.古典的遺産――プラトンマキャベリ

a.プラトン

・優秀者支配
・「人民」のための「エリートによる」統治(政治) エリート=真実を観ることを愛する人
・本来、哲学部の中に政治学科があるべき
・エリートが政治家になるか、統治者を哲学教育する 帝王学
・洞窟の比喩 メディア=「壁面の影絵」
・国家堕落のメカニズム 民主主義=民衆のご機嫌取りになる=アマチュア政治
・→リーダーシップ不在→アノミー(魂の空洞化)→その間隙を縫って現われるのが独裁者
・独裁者=国内的矛盾を逸らすため、仮想敵国を作る
・次善の策 法治国家 哲人→政治術、正義

b.マキャベリ

・時代背景 群雄割拠 パワーポリティクス
・フォルトゥーナ=フォーチュン、運命
・ヴィルトゥ=力量、手腕
・ネチェシタ=時機 
・流れ、時機を読む
・『ディスコルシ』(『ローマ史論』、『リウィウス論』)人民論
・腐敗を防ぐために恐怖(緊張感)が必要。「他律的に公共善へと駆り立てられる」システムが必要。
・→ファシズムにも近づく→プーチン

2.ルソー、M・ヴェーバー、C・シュミットの対照

a.ルソー

・一般意志=公共意志≠全体意志
・多数決=全体意志 多数決で決めていいですか?=公共意志 市民の同意
・人口1000人が限度
・死後 フランス革命 → ロベスピエール

b.M・ヴェーバー

・ものすごいリアリスト
ローザ・ルクセンブルグが暗殺された直後『職業としての政治』
・政治=暴力=人間の人間に対する支配
・政治家の資質 情熱・責任感・判断力 距離を置くこと 一番の敵は虚栄心
結果責任 責任倫理
・思い起こすのはカーター大統領 人権外交→ホメイニの誕生 アフガンの支援→アフガン侵攻 心情倫理で動いて最悪の結果を招く
・対照的にキッシンジャーはリアリスト
ヴェーバーの官僚制論 その点をマルクスは考え損なった 共産主義ソ連)の頓挫を予言 官僚制を使うにはリーダーシップが必須

c.カール・シュミット

・『現代議会主義の精神史的状況』樋口陽一
・治者と被治者、支配者と被支配者の同一性など存在しない
・議会制民主主義の形骸化

3.リップマンVSデューイのアクチュアリティ

a.リップマン

・メディアの有意義さと危うさの両義性
・『世論』世論は危ない プラトンの洞窟の比喩を引用
ステレオタイプによって人々の意識を操作している
・『幻の公衆』 情報格差→適切な政治的判断力を持った公衆などもはや存在しない
チョムスキーの観客民主主義に通じる

b.デューイ

・『民主主義と教育』民主主義≠多数決主義 民主主義=連帯し合うライフスタイル
・『公衆とその諸問題』 主体的、対話的な深い学び 知識社会化 great society 
・その後、大恐慌→ナチズムの台頭
・『ゲッペルスとナチ宣伝戦』原節子 ベルリン五輪

c.現在

・リップマン『公共の哲学』言論の自由デマゴーグ→世論が容易に操作されてしまう危険
SNSフェイクニュース、ポスト・真実
・一方でtwitterでの連帯など 
・ジェフ・ジャービス デューイ派 『PUBLIC』 集合知

◆要約:民主主義に否定的=プラトンマキャベリヴェーバー、シュミット、リップマン 民主主義に肯定的=ルソー、デューイ。ルソーはもっと1000人規模の小さいタウンシップを想定。顔が見える範囲。デューイは教育による知識社会化。マキャベリヴェーバー、シュミットはリアリスト。
◆感想:エリート支配の場合、エリートに徳というものをどうインストールするのか。民衆のためによい政治をするエリートをどうやって作れるのか。民主主義もエリート支配も幻で、結局暴力の秩序しか存在しないようにも思える。