マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【読書メモ】栗原康『アナキスト本をよむ』(新評論 2020年)

目次

はじめに

・2003-2020
アナキズム=なにものにも支配されないこと=同時に支配しないこと
・これが正しいとおもっている自分の皮を脱ぎ捨てて、未知の自分になっていく、名状しがたいなにかになっていく。なんどでもなんどでも正しい自分を破壊して、ゼロになって生きなおす。これが自分だという自分は自分ではない。大杉栄はこれを「自我の棄脱」とよんでいる。

アナーキズム研究の新展開(田中ひかる『ドイツ・アナーキズムの成立』)

・19世紀後半、アナーキストの世界的なネットワーク
・ヨハン・モスト『フライハイト』紙

あらゆる債務を帳消しに!(ミレー+トゥーサン『世界の貧困をなくすための50の質問』)

・「途上国債務」 IMF世界銀行の債務国支配
・2005年グレンイーグルスG8サミット 途上国債務5兆円帳消し→実は罠→代わりにHIPCイニシアティブに強制参加させる
・1996年リヨンサミット HIPC(重債務貧困国)イニシアティブ ≒ SAPs(構造調整政策)
・SAPsは先進国のグローバル企業のための政策であり、そのために「途上国債務」が狡猾に利用されてきた。
・1980-90年代にかけて、SAPsを導入した国々では、貧困が増大し、格差が劇的に拡大した。SAPsの要求する「公的支出の削減」は、学校や医療を有料化し、貧しい人びとに打撃をあたえた。推奨される「輸出志向型経済」は、途上国の自給体制を崩壊させ、小農民の生活を破壊した。「市場開放」の推進は、途上国の中小企業を直撃し、多くの失業を生みだした。反面、先進国のグローバル企業は、何の規制もなく安い農産物を途上国に輸出できるようになり、また、労働法制や公害規制、税金すら気にせずに、安い労働力を確保できるようになった。
IMFに直接管理されていなくても、先進国ではすでにSAPsの政策が内面化されている。国の借金と財政危機への不安を煽り、民営化、増税、公的サービスカット。

怨念の労働(笙野頼子『金毘羅』他)

・「働きマン」「ハケンの品格
笙野頼子 ネオリベラリズム批判
・近代的自我=合理性=数学的な思考 ↔ 仏教的自我
・笙野によれば、このような自我は国家目線、経営者目線で作られたうすっぺらの自我でしかない。官僚や経営者は国の徴税を成立させ、企業の生産性をあげるために、「国民」「従業員」を数値としてあつかうことを必要とした。
・人間は根本的に数値化できない(アイドルトレカ)。
・文学のネオリベ
・「明治政府が抑圧したくて必死で隠していた仏教的自我、カウンター的自己、これを暴き発見することこそ近代に対する、国家に対する反逆である」
・金毘羅=民衆の怨念に仏教の仮面を被せる
・自分の土地に対する怨念
・工業的価値「便利さ/スピード/代替可能性」 ↔ 農業的価値「食の豊かさ/自然との共生/ゆっくりとした時間」
・SEの労働環境の過酷さ
・「仕事」の再考。楽しい仕事。

古くて新しいゼネストという希望(遠野はるひ・金子文夫『トヨタ・イン・フィリピン』)

・第二組合による組合潰し

グリーンキャピタリズム批判にむけて(高祖岩三郎『新しいアナキズムの系譜学』)

・コモン=「共通なるもの」「共同財」
・ポストフォーディズム(情報社会)知識、情報、感情、コミュニケーション=本来は私的所有の論理になじまない
・アフィニティ(近親性)・グループ
・こんにちの階級闘争はコモンをめぐる闘争
「地球」=コモンの究極的な様態
・エコブームの欺瞞
・「地球」を国家と資本のくびきから解き放つこと。

二〇一一年三月、地震津波がおきて、原発が爆発した。

原発という遊び(ジョン・ホロウェイ『革命 資本主義に亀裂をいれる』)

・ホロウェイによれば、資本主義を失効させる力は、わたしたちのありふれた行為のなかにはらまれている。友人と遊びたい、デートがしたい、酒を飲みたい、タバコが吸いたい。こうした日常些細な遊びを実践することが反資本主義の原動力である。
・今の遊びはすべて金を使うことになっている。金がないなりにも本来は遊べる。
・遊びとは、特定の友人とともに、とりかえのきかない享楽をはぐくみ、それを表現すること。
なにが楽しいのか、その価値を決められるのは自分たちだけ
・資本主義はこうした流れをせきとめて、わたしたちを商品世界のなかに囲いこんできた。いまや遊びとは、個人が自動車を購入し、お金のかかるレジャーに出かけることである。
・物は人間が遊ぶための道具にすぎず、主人はあくまで人間である。
真に遊び、真に楽しむこと

子ども社会主義(『大杉栄自伝』)

・いつだって子どもであること
・誰の目も気にすることなく自由に遊ぶこと
・名古屋の陸軍幼年学校
・子どもたちが大人の世界に別れをつげる

腹切り念仏論(伊達正保『現在につづく昭和40年代激動文化』)

河内音頭 盆踊り

やりたいことしかもうやらない(鶴見済『脱資本主義宣言』)

・ビールが好き
・アルミ缶=精製の過程で大量の電気をつかう
・経済成長に結局何の目的があるか? 価値のない仕事が多すぎる。

あらゆる窃盗は革命的である(アラン・セルジャン『アナーキストの大泥棒』)

ヴィクトル・ユーゴー 社会問題
・アルセーヌ・ルパンのモデル ルパン=義賊、アナキスト
・社会がわたしに、労働と物乞いと盗みの3通りの生存方法しか認めなかった
・ひとは誰でも、生の饗宴に参加する権利がある

みさかいなく跳ねてやる(聖戒編『一遍聖絵』)

・失恋もやむなし

やさしくしてください(羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』)

・結婚 家族制度

生きることゴキブリの如し(平井玄『グニャリ東京』)

革命的赤ちゃん主義(ニーチェツァラトゥストラはこう言った』)

汚物上等、くそでもくらえ(足立正生『断食芸人』)

カフカの短編小説
・金のために働いている=やりたくないことをやっている。

われわれは圧倒的にまちがえる(マウリツィオ・ラッツァラート『記号と機械』)

・機械状隷属と社会的服従
・人間を機械のようにしてしまう都市のアーキテクチャー 例えば駅のエスカレーター
フーコーの言うパレーシアが大事 素朴に本心を言うこと

貧乏人は日本をほろぼす(ブレイディみかこ『THIS IS JAPAN』)

・国家が徴税のため、わたしたちを数字とみなしている

マヌケは暗闇である(松本哉『世界マヌケ反乱の手引書』)

仕事は仕事、いつでもやめろ(小川さやか『「その日暮らし」の人類学』)

タンザニア その日暮らし

たいへん、わるのり、騒乱だ(不可視委員会『われわれの友へ』他)

・白石嘉治『不純なる教養』
・森元斎『具体性の哲学──ホワイトヘッドの知恵・生命・社会への思考』
・友達が大事

芸術家は常軌を逸している(砂古口早苗『起て、飢えたる者よ』)

佐々木孝丸
・政治より上位にある文化芸術、笑い

二〇一七年、元祖アナキスト一遍上人の伝記をかいた。

国土じゃねえよ、浄土だよ(自著『死してなお踊れ』)

・2002年 六本木ヴェルファーレ 古坂大魔王 ノーボトム サンバじゃねえよ、ネブタだよ

【特別収録:安藤礼二氏との対談】いくぜ極楽、なんどでも――日本のアナキズムの原点・一遍

・一遍 阿弥陀仏 「すべては関係性にすぎない」「わたし」もないし「あなた」もない
・空=Xなにもない「ゼロ」/○そこからあらゆるものが生まれてくる生成の「ゼロ」
阿弥陀=アミターユス=無限=バタイユの連続性の思想に近い
・大正時代 仏教社会主義 内山愚童、高木顕明 → 死刑、無期懲役→それ以降、仏教界が自主規制
・戦前 法華経 終末論 血盟団、2.26など
・すべてを捨てて「遊行」
道後温泉
・哲学や文学、芸術の意義=言葉や考え方が変わらないと現実も変わらないから

倫理じゃねえよ、不倫だよ(原口剛『叫びの都市』)

・ドヤでは寝ることしかできないから、みんな外にくりだして飲む、食う、はなす。居酒屋で、路上で、公園で。ドヤは個室で、街はわが家だ。
・いまじゃ非正規雇用がふつうになっていて、社会の総寄せ場化がすすんだといわれているが、状況はむかしよりもっとわるくなっている。日雇いにしても、バイトにしても、寄せ場の青空市場すら必要ない。携帯にネット。ひとが朝から晩まで、仕事のためにたえずオンライン状態にさらされているのだ。泊まる場所にしたって、ネットカフェの個室である。となり同士ではなすこともできやしない。路上や公園、居酒屋で気炎をあげ、うわさがうわさをよんでいくということがありえないのだ。権力の目にみえないところで、不穏なことがおこらない。この数十年間、国家はそんなインフラ整備をすすめてきた。狡猾だ。
★人がもっとつるむ、遊ぶ街。

人民の犯罪を煽動せよ(ピョートル・アルシノフ『アマフ運動史 1918-1921』)

・金持ちの財産をうばうということは、奴隷を解放するのとおなじことだ。

精神のあき地をとりもどせ(森まゆみ『暗い時代の人々』)

・精神の空き地 昔は街に空き地がたくさんあった。

あなたの人生、パンクさせます(ブレイディみかこ『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』)

・もっと恋愛に積極的に、気安くやったらいい

ハラハラしようぜ(松下竜一『狼煙を見よ』)

東アジア反日武装戦線

仏は無職だ、このやろう(丹野未雪『あたらしい無職』他)

オラ、投石がしてえ(長嶋有『もう生まれたくない』)

クレヨンしんちゃんの作者の死

セミ一匹、うたえばババア(藤城かおる『唖蝉坊伝』)

添田唖蝉坊

ろくなもんじゃねえ!(植木等『夢を食いつづけた男』)

・植木徹之助 仏教社会主義者
親鸞 悪人正機 酒女博打

あらゆるセックスはぜったいにただしい(本田由紀伊藤公雄編著『国家がなぜ家族に干渉するのか』)

・親子断絶防止法 橋本崇戴元棋士

天皇制に鼻血ブー(『磔刑の彼方へ 小田原紀雄社会活動全記録』)

・賛美歌 みんなで合唱すること 

【特別収録:守中高明氏との対談】他力の思想を生きる――無償の救いをブン投げよう

・砂川闘争『流血の記録 砂川』
・知は決して上昇過程で終わるものではなく、下降のプロセスを経て初めて現実化される
・「南無阿弥陀仏」南無=ナマステ=お辞儀=帰依します →連続性(無限)の中に入っていきます(戻っていきます)
・相互扶助=基盤的コミュニズム
坂口恭平 素敵な勘違い 世界一のお節介
・交換の回路を破壊する 交換の回路=DAIGO、ひろゆき慶應SFC系、newspicks系
・往生は死後の話ではない。現実の経験。「継続的な時間性を内破する」「潜在的なもの」 往生=浄土を現勢化し、それと出会うこと=奇跡
法蔵菩薩 未来完了形 一切衆生が救われたら俺も仏になる → 阿弥陀仏
・死後の世界をことさらいうこと=仏教のキリスト教
・お寺がお金を稼ぐこと
・牧人=司祭型権力 権力は自分自身の内面にある アルチュセール ISAs
ハイデガー 「ゲシュテル」=「総駆り立て体制」
・現在の象徴天皇制は、日本の敗戦時に合衆国が占領統治を容易にするためのみに政策判断で温存させた装置です。合衆国の傀儡として利用することだけを目的として温存した装置なのですが、この視点がまったく抜け落ちています。
・その振る舞い(天皇皇后の沖縄慰霊の旅)と現政権による辺野古の米軍新基地建設が完全な共犯関係にあるということが、いまのリベラル知識人には見えていません。

いい感じ!(高見順『いやな感じ』)

・2011年5月のいわき。
・中途半端なニヒルを棄てる。ベタに怒る、ベタに喜ぶ、ベタに驚く。
・ニヒルをこじらす→ニック・ランド→資本主義が神に見える
高見順=アナルコ・ニヒリズム 「どうせ死ぬ」「無敵の人」
・自分で自分をぶっこわせ。

神話じゃねえよ、民話だよ(井波律子訳『水滸伝』)

・「陛下」=王座からみおろして階段の下にいる者たちという意味。へりくだった言葉。
歴史修正主義の最大のものが天皇制ではないか?
・「義をおもんじ、財をかろんじろ」。これはイコールのこと。ケチは駄目。これが好漢。
フォークロアは自由。誰のものでもない。

奴隷のあばれ方(マルクス・シドニウス・ファルクス『奴隷のしつけ方』)

・「奴隷どうし話をさせるな」「拷問は適度に」「家族を人質にとれ」
・奴隷=主人に絶対服従を強いられ、社会的に死んでいる状態。
イソップ物語 イソップは奴隷

二〇二〇年春、コロナで支配がつよまった。

万国の子どもたちよ、駄々をこねろ(江口幹『渇きのままに』)

神は死んだ(瀬戸内寂聴『遠い声 菅野須賀子』)

・恋と革命は同義だ 恋は人間を爆弾にする

くそったれの人生、スパークジョイ!(ブレイディみかこ『ワイルドサイドをほっつき歩け』)

・こんまり ときめき SPARK JOY

アナルコ・ニヒリズム宣言!(マニュエル・ヤン『黙字エチュード』他)

・さいたま 与野本町 4時間長渕剛 「富士の国」「Captain of the ship」
・コロナ カタストロフによる支配 恐怖による支配
・フリーの語源はフレンド
・オンラインはやばい 友達と遠ざけられる
・グスタフ・ランダウアー『懐疑と神秘思想』
・理由なんてない 人は中動態状態でおのずとだいじなことをやってしまう

怨、怨、怨、されど怨(森元斎『国道3号線』)

アボリショニズム奴隷制度即時廃止論

暴動はケアだよ、Be Water!(藤野裕子『民衆暴力』)

・民衆の暴動=男らしさと義侠心
・杖をついたおばあちゃんが倒れたとき、自然と身体が動いてしまう
・グレーバー人間関係の土台の3つの原理「コミュニズム」「交換」「ヒエラルキー

燃やし燃やされ、焼き焼かれ(中里介山大菩薩峠』)

大菩薩峠のどうかしてるあらすじ
バフチン ポリフォニー(多声的)
・物語を破壊するための物語

キツネがくる(デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ』)

・グレーバー ベニスに死す 鳥のくちばしのマスク
日本学生支援機構からついに赤紙 635万円 裁判に移行
・無意味であり、かつ自分でもいらないと思っている仕事のこと。グレーバーはそんな仕事をすることほど、人間としてつらいことはないといっている。
・もはや労働の中身に価値はない。あるのは懲罰プレイただそれだけ。苦しみの対価にカネをもらう。

物語に鉄砲をぶっぱなせ(早助よう子『恋する少年十字軍』)

米騒動 当時米=カネ
10/2読了
 
◆感想:阿弥陀=無限という話と、大菩薩峠のあらすじが面白かった。
気になる本が多かったため、これ読めば一挙に概要を知れてお得なんじゃないかと思ったが、
書評を読んでも、全て中途半端に知るだけで、そんなよこしまな考えは駄目だった。
 
自分が好きな人は反天皇制の人が多いのだが、そこは自分は意見が違う。
この対談のなかでは、アメリカが日本支配に有利と判断したために天皇制を残したと言っていてそれはその通りだと思うが、
徳川幕府だって同じように温存した天皇制に最後はやられた。
天皇制は権威と権力の分離の知恵で、欧州で言えばバチカンローマ教皇庁のようなものだと思う。
天皇制は日本では権力交代の装置なのだと思う。いわゆる「玉をとる」。
明治以降、権威と権力が重なってしまって、戦前、戦中に悲惨な事態を招いたことは、
何度でも問題にするべきだし、天皇家も繰り返し謝罪し反省し続ける必要がある。
それでも自分は機能としての天皇家があった方がいいんじゃないかと考える。
その理由は、天皇制を廃止したとしても別に良くなるとは思わないから。アメリカや中国やソ連をみてもそれぞれに問題はあるし、
天皇家を廃止してもそれに変わる権力者が登場して、同じく問題になると考えるから。
 
以上のように自分は天皇制容認派だが、だからといって反天皇制の議論はあって然るべき。
戦前にように天皇制が絶対になってしまうことが一番危ない。だから議論は絶対にあるべきだと思う。
自分は資本主義廃止が一番目指すところだと思っているので、どうもわからない。
天皇制廃止論の人が一番何に怒っているのか知りたい。