マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【読書メモ】ロバート・キヨサキ『改訂版 金持ち父さん貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』(筑摩書房 2013年)

初版は1997年。
 
目次

はじめに

・頭の中の考えがその人の人生を作る
・お金についての教育
・ロバート・フロストの詩 分かれ道 人があまり通っていない道を選ぶ

教えの書―金持ち父さんの六つの教え

第一の教え「金持ちはお金のためには働かない お金を働かせる」

・1960年代ハワイの話
・人生につつきまわされて、そこから学んでいく。
・だが、実際きみがやったことといえば、人生につつきまわされ、されるがままになっていただけだ。心の奥底で、きみは危険を冒すことを恐れていた。本当は勝ちたかったのに、負けるのが怖くて勝利の感激を味わおうとしなかった。そして、自分がそうしなかったことをきみは知っている。きみだけが、心の奥底でそのことを知っている。きみは安全なこと以外はしない道を選んだんだ。
・学校はお金のために働く方法を学ぶところ
・なぜ安定を求めるか→恐怖に支配されているから
・被雇用者か/経営者かという問題
・金持ちになっても問題は解決しない
・金持ちでも恐怖に怯えている人はたくさんいる
・恐怖と欲望をコントロールすること
・マンガ図書館 自分で働かず事業をつくること

第二の教え「お金の流れの読み方を学ぶ」

・資産と負債の違い
・資産は私のポケットにお金を入れてくれる 負債は私のポケットからお金をとっていく
・知らなくてはいけないことは本当にこれだけなのだ。金持ちになりたいなら、ただ「資産を買うこと」に生涯を捧げればいい。中流以下にとどまっていたい人は負債を買えばいい。
・ファイナンシャル(金銭の)・リテラシー
・資産から収入を得る
・学校の教育システムが創造性の芽を摘み取っている
・持ち家は資産ではなく負債
・お金を生み出す投資をする

第三の教え「自分のビジネスを持つ」

・職業とビジネスの大きな違い
・自分のビジネスは「収入」ではなく、「資産」を中心に展開する。
・本当の資産とはなにか?1.自分がその場にいなくても収入を生み出すビジネス 2.株 3.債権 4.収入を生む不動産 5.6.音楽、書籍などの著作権特許権

第四の教え「会社を作って節税する」

・会社は金持ちを守るためのもの
・会社を利用する方法が歓迎されたのは、会社の所得税率が個人の所得税率より低いから。さらに、会社の場合、支出の一部は経費として、税を払う前の収入から差し引くことができる。
・ファイナンシャルIQ
1.会計力 財務諸表を理解する力
2.投資力
3.市場の理解力
4.法律力
・個人で会社を持つためのノウハウ本

第五の教え「金持ちはお金を作り出す」

・人は誰しも十分大きな可能性をもっているが、自信のなさが最大の障壁となる
・「ガッツ」「ずぶとさ」「やる気」「大胆さ」「はったり」「ずるがしこさ」「世渡りの技術」「ねばり強さ」「頭の切れ」
・現実にはほとんどの場合、頭がいい人よりも「度胸のある」人の方が成功への道を先へ進んでいく。
・リスクを負うこと、大胆になること、恐怖を力と知恵とに変えること を訓練する。
・激動の時代は逆にチャンス
・現実の世界は冷徹なフィードバックシステム
・少額の投資からスタートし、大きいものに売りかえていく。
・ゲームとして楽しむ 勝つこともあれば負けることもある
・人間は失敗して学ぶ。傷ついて強くなる。
・出来合いの投資をするか、投資を自分で作り上げるか。

第六の教え「お金のためでなく学ぶために働く」

・広く浅く学ぶ
・中国とコネを作る
・セールスの経験
・ベルクロを使ったナイロン製の財布 アジアで生産。船でNYへ。
トム・クルーズザ・エージェント』 

実践の書

まず五つの障害を乗り越えよう

・5つの障害
1.恐怖心 2.臆病風 3.怠け心 4.悪い習慣 5.傲慢さ

第一の障害 お金を失うことに対する恐怖心

・「人は損をするのが怖くて、そのために損をする」
・『アラモ砦を忘れるな!』
・失敗しても、それが自分をより強く、より賢くしてくれることを知っていた。
・「テキサス人は失敗を葬り去ったりしない。失敗によって意気を奮い立たせる。失敗を受け入れ、それを元気の源に変えるんだ。テキサス人は失敗からエネルギーをもらって勝利者になる。」
・失敗をこやしにしてやる気を起こす者が勝者となり、失敗によって打ち負かされた者が敗者となる。勝利の最大の鍵はここにある。負けてばかりいる人はこのことを知らない。これこそが、勝者だけが知る勝利の秘訣と言ってよいだろう。

第二の障害 悪いほうにばかり考えて臆病になる

・「チキン・リトル」「空が落ちてくる」「もし○○したら…」「もし○○したら…」
・頼みもしないのにこちらの欠点や弱点を指摘してくる友達や家族
・年利16%
・「根拠のない疑いや恐怖が臆病な人間を作る。臆病な人間は批判をし、勝利を収める人間は分析をする」
カーネル・サンダース 生活保護 フライドチキンの作り方のセールス、1009回断られる。

第三の障害 忙しいことを理由に怠ける

・忙しい人が一番の怠け者
・こういうのが最もよく見かけられる「怠慢」の形だ。つまり、忙しい状態を続けることで怠け続けるという形だ。
・怠け心につける薬は欲張り心 
・魂を活性化させる 
・「どうやったらそれを買えるようになるかな?」と質問してきた。「それ」の中には大学進学も入っていた。私たちは二人とも自分で稼いだお金で大学を卒業した。
・エレノア・ルーズベルト「自分の心に聞いて『正しい』と思うことをやることだ。なぜなら、いずれにせよ非難を受けることになるのだから。たとえ何をしようと、また何もしなくても、文句を言われる」

第四の障害 自分への支払を後回しにする悪い習慣

・自分にまず支払い、払わなきゃいけないあとの分は自分にプレッシャーをかけて稼ぐ

第五の障害 無知を隠すために傲慢になる

スタートを切るための十のステップ 実践その二

・強い目的意識があるか?
・ビジネス書、セミナー
反知性主義 学歴はあるかもしれないが、お金はない
・26歳のとき「抵当流れの不動産を買う方法」という講座を受けたことが転機。
・ジョージ・クレイソン『バビロンで一番の金持ち』「まず自分に支払え」

具体的な行動を始めるためのヒント 実践その三

・いまやっているうまくいってないことをやめる
・アイデアを紙に書き出す
・講座、セミナーに参加する
・オファー(買付申込)をたくさんする
・ジョギング、ウォーキング、ドライブをする
・大暴落=バーゲン
・じっとしていないで行動する

おわりに 経済的自由を手に入れるには

・内国税法第1031条 不動産を売却してもすぐに次の不動産を買えば、税金は相殺される
・とにかく「お金を働かせる」こと。
・裕福になるための鍵は、勤労所得をできるだけ早く不労所得ポートフォリオ所得に変える能力
・勤労所得に対する税金は高く、一番税金が低いのは不労所得
・ビジネス世界の住人のクワドラント(四分円) E(従業員)、S(自営業者)、B(ビジネス・オーナー)、I(投資家)
・あなたの運命を決定するのはあなた以外のだれでもない。
・いますぐ行動しよう!
11/9読了
 
◆要約:とにかく、資産を少しづつでも増やして、資産から収入を得ること。職業ではなく自分のビジネスを持つこと。自分に自信を持つこと。失敗を恐れず、失敗は自分を強くすると思うこと。「チキン・リトル」の忠告に耳を貸さないこと。忙しいはやらないための言い訳。
◆感想:最近自己啓発系の悪というものを考えている。その一環で代表的なこの本を読んでみた。
自分の好きな麻雀プロがこの本を愛読しているというので気になっていた。
 
メッセージは単純。とにかく、(収益を生む)資産を増やしていくことを心がけ、勤労所得ではなく、資産からの収益を増やすことを心がけましょうと。
そしてそれは主に不動産収入だとのこと。そして後半は精神論、心構え、ポジティブシンキングについて。
もろにゲーリー・ベッカー以来の自己責任論に沿って書かれた本。
 
最近自己啓発系の悪というものを考えている。
お金持ちになりたい人が、例えばこの本を読んで、不動産リテラシーを身に着けて、割安物件をみつけて取得して、まあまあいい家賃で貸して、家賃収入を得ながら、だんだんお金持ちになったとする。
良かったね(白い目で見ながら)以上の感想はないだろ。
その物件に住む店子は「家賃高いなあ」と思いながら、貯金も出来ず、パスタを食べながらyoutubeをみている。
不動産投資で金持ちになりましたという人がいて、すごいねと乾いた声でいうだけで、全く尊敬できないだろ。人のためになってないんだし。
この手の「成功」や「幸せ」って、誰かの不幸せの上に成り立っているものじゃん。
全員が不動産の大家になることは出来ない。借家人がいないと成り立たない。
大家の幸せは借家人の不幸。
全員が成功、全員が勝ち組になることは出来ない。必ず敗者を必要とする。
そもそも資本主義って誰かから搾取して剰余価値を得ないと成り立たないものだし。
 
事業に投資したとする。その事業が高い利益を出したら、株主の幸せ。
従業員を正社員からほとんど非正規社員にしたら、人件費大幅カットで役員報酬と株主の配当が増える。
人員削減して、その分ブラック労働でサービス残業させれば、利益が増えて役員報酬と株主の配当が増える。
 
椅子取りゲームで、椅子に座れたら幸せ。座れなかった人は。
自己啓発は自分を啓発して能力を伸ばして成功すること勝ち組になることを目指す。
そのとき、誰かが不幸になっても、それは気にしない。
自己啓発の悪って、この他人の痛みに対する、鈍感さ、無関心さの悪だと思った。
一つ一つは小さな悪でも、その集積がはっきり言って、かなり世界を蝕んでいる。
 
自分が不動産投資で成功する、金持ちになる。その裏で誰かが痛みを感じようが、気にしない。
自分の成功にばかり意識が高く、人の痛み、社会の劣化に対して異様に意識が低い、「意識高い系(自己啓発系)」。
搾取して100億円儲けて、1億円社会活動に還元するけちけちホワイトウォッシュ。
 
この本では、先回りして、お金儲けを批判する人に対して、負け犬の遠吠えは無視しろ、あいつらは臆病者なんだ、みてみろあの安物の服を的な批判が用意してある。
もうこうなると対話不可能。
 
やっぱり一番必要なのは、資産所得に対する税率の方が、勤労所得に対する税率より大幅に低いという税制を変えること。
 
自己啓発系は多分にニーチェの影響を受けている。
いいだろう。じゃあこっちもニーチェ的に自己啓発系と闘うしかない。
 
フェアに本を評論しておくと、不動産投資や株で運用しろという主張は上記の理由で全く響かなかった。
自分のビジネスを持てというのは自分も賛成。
後半の自分に自信を持て、失敗から強くなれ、ポジティブシンキングの部分は、左翼も馬鹿には出来ない大事な要素だと思った。
 
名前から推測すると、おそらく彼は日系人ではないか。
何世かしらないが、おじいちゃん、ひいじいちゃんの時代はサトウキビ畑で奴隷労働のように働かされて、本当にきつかったと思う。
その苦しい中で自分を生み育てた、実の父を、ただお金儲けがうまくなかったというだけで、「貧乏父さん」と蔑む、この根性は最悪だと思った。
世の中金がすべてになりすぎじゃないの?道徳はどこにいったの?人情はどうなったの?
街が異様にジェントリファイされていることはどう思うの?格差問題は考えているの?
そこを一切切り捨てて、自分だけ金持ちになろうというのが自己啓発系。
目を見ないで、よかったですね、という以外にない。