マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【読書メモ】2021年に読んで面白かった本ランキング

あんまり冊数読んでないのにランキングも何もないのだが、振り返りとして。
目次

 

1位 佐々木実『竹中平蔵 市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』 (講談社文庫 2020年)

単行本は2013年刊行。引き込まれながら読んだ。竹中平蔵の生い立ちから現在までを丹念に取材した超労作。
竹中の経歴を通じて、この時期の日本政治が見えてくる。
ジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれた時代から、冷戦終結バブル崩壊→一気に新自由主義になっていく流れ。
冷戦が終結し、アメリカにとって日本はもう保護する対象ではなくなった。
子豚がまるまる太って、いよいよおいしくいただこう、という収穫の対象になる。
そのときに野心的な銀行員で(経済学者)である竹中が都合よく利用された。
「第二の占領政策」とも呼ばれる「日米構造協議」→「年次改革要望書」が大きい。
 
いま振り返ればノーパンしゃぶしゃぶで有名な大蔵省接待汚職事件はアメリカがはめたものだと思う。
あれによって日本の強さを支えた大蔵省と日銀が解体され(財金分離が大きい)、その後に竹中が出てきた。
 
中田安彦『ジャパン・ハンドラーズ―日本を操るアメリカの政治家・官僚・知識人たち』(2005)を読んでいたので、この本の理解がとてもスムースになった。
簡単に言えば、竹中はジャパン・ハンドラーズ達のための日本側コーディネーターとして重宝された。竹中も自らの野心のためその立場を利用した。
国内では、東京財団を足がかりに政界に食い込んだ。小渕→森→小泉。小泉を囲い込む勉強会。
経済戦略会議→IT戦略会議→経済財政諮問会議
 
郵政民営化ウォール街へ国富を差し出したもの。
ヘンリー・ポールソンやロバート・ゼーリックとの会合。
「結局、金融行政の最高責任者だった竹中が果たした役割は、ウォール街の雄であるゴールドマン・サックスを日本に呼び込むことだったのである。」
「5年半におよぶ小泉長期政権の歩みは、異常ともいえる「超低金利」時代と軌を一にしていた。日銀による大量のマネー供給が「構造改革」の通奏低音なのである。」→「円キャリートレード
2003年 35兆円規模のアメリカ国債購入
失われた30年
 
吉田太郎一、長富祐一郎との出会いが大きい アメリカに引き込んだのはケント・カルダー
彼の心の奥底は見えない。彼の原動力は単に「強欲」なのか、なにかのトラウマなのか、お調子者がおだてられて動いているだけなのか。
なにはともあれ、彼が中心でやってきて、日本がまったく経済成長していないのだから、もう結果は出ているのだから、もうさすがに退場させるしかない。
竹中平蔵のことだけでなく、この時期の日本政治を知る上で必読の書だと思った。

2位 白井聡『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社 2020年)

白井聡さんの文章はとてもわかりやすい。うまくたとえ話や身近な例を上げてくれるので理解しやすい。
この本では本源的蓄積のことがよくわかった。

3位 福井健策『改訂版 著作権とは何か 文化と創造のゆくえ』(集英社新書 2020年)

面白かったというよりためになった。著作権の基本がよくわかった。この本を読んだり調べたことがきっかけで、パブリック・ドメインクリエイティブ・コモンズのことを知れてよかった。

4位 橋本健二『新・日本の階級社会』(講談社現代新書 2018年)

日本が新しい階級社会になっていることがよくわかった。具体的に言うと、いままでの労働者階級が正規労働者と非正規労働者アンダークラス)に分かれた。アンダークラスは低所得はもちろん、友人や恋人など、ソーシャル・キャピタルが非常に乏しく孤立し鬱屈している。
1999年の経済戦略会議(当然竹中平蔵も委員)答申「日本経済再生への戦略」。「日本の経済成長を妨げているのは「過度に平等・公平を重んじ」「頑張っても、頑張らなくても、結果はそれほど変わらない」日本社会のあり方である。だから日本は、「行き過ぎた平等社会」と決別し、「個々人の自己責任と自助努力」をベースとした「健全で創造的な競争社会」を構築しなければならない」。この辺が時代の分かれ目。
どうやって格差を縮小していく政治勢力を結集できるか。

5位 竹田青嗣プラトン入門』(ちくま学芸文庫 2015年)

放送大学の提出レポートを出すために読み、この本自体はそれほど面白いというわけではなかったのだが、1箇所、ものすごく腑に落ちた素晴らしい文章がありランキングに選んだ。それはこちら(第3章イデア 1.絶対イデア主義について――『パイドン』)に長く抜き書きしてある。
【読書メモ】竹田青嗣『プラトン入門』(2015 ちくま学芸文庫) - マラカスがもし喋ったら
この文章は本当に感動して、プラトン哲学の動機もわかったし、『ゴルギアス』のカリクレスの異議も至極真っ当なものだと理解した。自分はプラトン側に振れていて、カリクレス側を必要以上に嫌悪する傾向がある。この性分はおそらく変わらないが、そのことを自覚だけはしておこうと思った。

その他

その他面白かったのは、鎌田慧ルポルタージュ 幸せの報酬』の笹川良一の話。笹川は東京財団を通じて竹中平蔵とも関係がある。競艇という公営ギャンブルの莫大な売上が、一ファミリー企業に流れ込んでいる現状は異常。