マラカスがもし喋ったら

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【授業メモ】KUNILABO春期特別講座 白井聡先生『近代資本主義システムの動揺、その焦点——国家と貨幣』第4回

近況

・急激な円安の進行 アメリカの利上げ=アメリカの出口戦略 インフレを抑制するため
金利が上がる→国債などを買わなくてよくなる→国債の価値が下がる
・日銀のバランスシート 資産/負債 国債/日銀券
国債の価値が下がってしまう→日銀が破綻する だから、金利を上げることが出来ない→円がどんどん下がる
・いよいよ矛盾が爆発する気配が見えてきた。
スタグフレーションまっしぐら

前回の振り返り

・法の支配=権力が脱人格化されている
・近代国家の形成=王殺し 革命か敗戦
・公民国家(民主国家)の方が戦争が強かった われわれの国のために戦っている 士気が高い
ヘーゲル『法の哲学』1.家族 2.市民社会 3.国家
・【公】と【私】が常にせめぎ合う
・日銀が破綻するとどうなるのか?破綻することはありえるのか?

中央銀行の歴史

・最初の中央銀行イングランド銀行の場合
1694年 イングランド銀行設立(株式会社):対仏戦争の戦費を国王に融資
1844年 ピール銀行条令により発券の独占権を獲得
1946年 国有化
中央銀行の前史、ジョン・ローの「システム」
1716年 仏・王立銀行を設立、総裁就任、兌換券を発行、後に不換紙幣を発行
ミシシッピ会社を設立、フランス王の国債を買い入れ、財務総監に就任、王室の債務を解消、ミシシッピ・バブルの発生
1720年 ミシシッピ会社の株が暴落、兌換請求殺到、崩壊・失脚

なぜ、イングランド銀行は成功したのか?

・フェリックス・マーティン:マネーの大和解、国王は通貨発行権と管理権を放棄し(ブルジョア階級に譲り渡し)、引き換えに融資を得る
・この好循環がいかにして成立したのか?=イングランド銀行はあくまでも健全経営を目指した。金準備をしっかり用意して行動した。それが結果的に物価や景気を安定させる効果を作り上げた。

なぜ、ジョン・ローの「システム」は破綻したのか?

・『ジョン・ローの虚像と実像』ジョン・ローの再評価
・近代的貨幣理論の先駆者:<貨幣需要>概念の確立 インフレ分析
・ローの初期の貨幣理論:不動産銀行による土地貨幣の発券(貴金属よりも土地!)
・貴金属→株券や債権を含む広い概念としての貨幣を前提にした
・商品貨幣と信用貨幣どちらも合体させた。
・ローのシステムに対する旧勢力(大貴族、徴税請負人)の反撃、王家が紙幣を発行することへの嫌悪感→敗北

英・仏の中央銀行成立史にみる差異/今日への示唆

・英:王とブルジョア階級の経済権力の分かち合い→成功
【公】の成立→ブルジョワジーの利害に【公】的利害の衣をまとわせることの始まり?
・仏:産業ブルジョワジーの未成熟、旧体制支配層の勢力の大きさ→失敗
王家・封建勢力ともに権力を【私】物化→財政改革(【公】の導入)→失敗(【私】的利害の勝利)
・今日への示唆
中央銀行という制度を成り立たしめたのは19世紀初頭に始まった経済成長である。前提が、成長から停滞に代わったとき、金融政策を誰も信じなくなり、通貨発行の独占も崩れるだろう。(岩村充『中央銀行が終わる日』)
中央銀行の【公】的性格に対する幻想消滅、さらには国家の【公】的性格の幻想は?
・日銀によるETF購入=まさに私物化
 
◆要約:イングランド銀行とジョン・ローの「システム」の比較。結局王家とブルジョア階級の談合の産物が中央銀行?結局【公】概念というのは、偉大な嘘というか、その建前があった方が国が発展し結局【私】が潤うからであり、いざ国が下り坂になったときは、力こそ正義で、沈む船の財産持ち逃げ争いになり、国民など見殺しにされる?
◆感想:なかなか難しい。結局は中央銀行の独立性なども経済成長期の方便であり、いざというときはパワーゲームで私物化されるものなのだと思った。倒産間近の会社にヤクザが乗り込んできて、空手形を乱発したり、財産を仲間に不当に安く売り飛ばしたりして、会社をめちゃくちゃにしてから倒産させるというしのぎがあるようだけど、今の日本の現状はこれかなと思っている。