マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【映画メモ】大島渚監督『東京战争戦後秘話』『新宿泥棒日記』、実相寺昭雄監督『宵闇せまれば』

没後10年 映画監督 大島渚@国立映画アーカイブ

1.『東京战争戦後秘話』(1970 ATG)

・都立竹早高校の映研「グループ・ポジポジ」原將人
・東京战争=1969年4・28沖縄デーにおける東京闘争 明治公園 全学連集会
・シネマハウス大塚 後藤和夫
・風景映画
・8ミリ フィルムの手作業での編集作業
・ラストの逆さまの高速道路の映像
・学生の議論、映像の力

2.『新宿泥棒日記』(1969 創造社)

横尾忠則 横山リエ
・新宿紀伊國屋書店 田辺茂一
唐十郎 花園神社紅テント「状況劇場
高橋鐵 性科学者
ジャン・ジュネ泥棒日記

3.『宵闇せまれば』(1969 プロダクション断層)

ナチスユダヤ強制収容所 ガス室 ヤスパース「限界状況」
・ジュンのマッチ、原爆で突然に亡くなった人々

感想

・『東京战争戦後秘話』不思議な感じで面白かった。
1969年の感じが少し掴めてよかった。
主人公は学生運動をやりながら、その行き詰まりも同時に感じている。
政治的な映像ではなくて、日常のありふれた風景のフィルムを撮る。
イデオロギー疲れのようなものを感じる。
風景論とは、風景の中にある歴史を映して、民俗学考現学のような方法でこの世界を解読しようという試みのように感じた。どちらかというと歴史を大切にする保守の技法。
商店街の風景や、街に佇むポストの映像に、「革命は本当に必要なのか」と問いかけられる。
若者たちの青春の風景が切り取られている。
フィルムを手作業で編集するシーンが良かった。
最後の高速道路(?)を逆さまに撮影したシーンが良かった。
・『新宿泥棒日記
当時の新宿のカオスな感じ。
紀伊國屋書店が輝いている。お客さんも多い。
横尾忠則が当時どういう存在だったのかいまいちよくわからない。
筋がないので、映画としてはいまいちつまらない。
・『宵闇せまれば』
めちゃくちゃな映画。ワンアイデアの、世にも奇妙な物語みたいな感じか。
なにも生きる目的を見いだせない若者4人が、ヤスパースの「限界状況」をインスタントに体験してみる。
マサアキは生きる目的なんて何もない、何もないから目の前の勝負に勝つんだ。誰よりも絶望してるからこそ、何にでも耐えられるんだみたいなことを言う。
マサアキが勝つが、ジュンがマッチを手にして逆襲する。ヤナとサミーはやれよと言う。
生きる意味をシンプルな寓話で問うた面白い作品。
大澤真幸見田宗介)の区分だと、このときはまだ「理想の時代」のはずだが、その末期なので、大きな理想も描けなくなっている。
生きる意味を見いだせない、ニヒリスティックなポストモダンの時代に入ろうとしていて、
観客に生きる意味、目的を問いかける。
役者の顔面のアップが続くのが特徴的。
今回この3作を見たが、理想の時代から虚構の時代へ入ろうとする時代の袋小路感覚を共通して感じた。