1.キリスト教の前史としてユダヤ教を見ること
・キリスト教の信仰の本質。「イエスはキリスト(メシア救世主)である。」
・旧約聖書という呼称自体がキリスト教側からの見方。ユダヤ教徒にとってはこれが唯一の聖書。
2.ユダヤ教とは何か
・「啓示宗教」。啓示=歴史の中への神の介入。
2.1.ユダヤ民族略史
・紀元前2千年紀初頭 遊牧民の一族長アブラハムがカナン(パレスチナ及び南シリア)の地へ移住。神からカナンの地を与えるという約束を受ける(「アブラハム契約」)。
・孫ヤコブ(別名イスラエル)飢饉からのがれるためエジプトへ移住。
・エジプトで圧迫され奴隷的苦役 神に選ばれた指導者モーセが率いて エジプト脱出
・シナイ山において神から十戒(律法)を受け、民がこれを遵守する限り、神は民を保護するという契約。=「シナイ契約」
・紀元前13世紀末イスラエル人は「約束の地」カナンに侵入し定着。
・民が王政を望んだため、紀元前10世紀頃にベンヤミン族のサウル、次いでユダ族のダビデが王になり、シリア・パレスチナ全域にまたがる王国を建設。エルサレムを首都に定める。
・ダビデの子ソロモン エルサレムのシオンの丘に神殿を建立。以後、ダビデ家がイスラエルの支配者として選ばれ、シオンの神殿が唯一の礼拝の場であるとする理解が成立。=「ダビデ契約」
・この契約により、王国が滅亡した後にあってもダビデ家の子孫から「メシア」が出現することに対する待望が生じることになる。
・紀元前586年、新バビロニアによってユダ王国が滅ぼされ、エルサレムの神殿は破壊される。
・主だったユダヤ人はバビロニアに捕虜として連行され、その後約半世紀にわたっていわゆる「バビロン捕囚」の苦難を経験する。
・アケメネス朝ペルシアのキュロス2世、新バビロニアを倒す。ユダヤ人に対して好意的。紀元前538年、捕囚民の解放令。一部のユダヤ人は故国に帰還して、エルサレム神殿を再建。→「第2神殿」
・ただし政治的独立は獲得できず、アケメネス朝→マケドニア→セレウコス朝シリア→ローマ帝国領ユダヤ属州
・エルサレムの第2神殿はローマ帝国に対する独立戦争の挫折により紀元後70年に破壊されるまでの間、ユダヤ人たちにとって民族的・宗教的共同体の中心となった。
2.2.律法の宗教
・神殿宗教の伝統とは別に、律法を核とする宗教形態
・エズラ 「モーセの律法」 「律法学者」の草分け 活動の場は「会堂」(シナゴーグ)
・成分律法とは別に「口伝律法」。その研究者「ラビ」
・第2神殿が失われた後は、ユダヤ教はもっぱら律法を支えとする宗教になる
2.3.預言者
・「啓示」としてのユダヤ民族史において、イスラエルの歴史的危機の時代に登場し、神から直接聞いた言葉を人々に伝え広めるとされる「預言者」と呼ばれる存在が重要。
・アブラハム、モーセを含めることもあるが、王国時代のサムエルを最初の預言者とするのが一般的。
・アモスを皮切りに「記述預言者」。
2.4.捕囚期の意義
・捕囚の試練によってユダヤ人の宗教意識が内面化