マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【読書メモ】菊地浩之『最新版 日本の15大財閥』(角川新書)

最新版 日本の15大財閥 (角川新書)

最新版 日本の15大財閥 (角川新書)

・財閥のキーワードは「家族」
第一次大戦特需→反動恐慌→昭和金融恐慌→振るいにかけられ六大銀行→六大財閥
三井財閥総帥団琢磨暗殺→批判をかわすため「財閥転向」。株式公開。
・新興コンツェルン 既存財閥を批判する軍部と同調 軍需に沿った重化学工業
・戦後GHQ財閥解体 「財閥家族」と「持株会社」の指定 市場へ放出
・1949年毛沢東共産主義政権樹立 日本は反共の防波堤として逆コース→財閥解体の緩和→サンフランシスコ和平条約→財閥の復活(企業集団に生まれ変わり)
・企業集団の指標①社長会の結成②株式持ち合い③都市銀行による系列融資④総合商社による集団内取引⑤包括的な産業体系⑥共同投資会社による新規事業進出
・財閥と企業集団の最大の違いは「株式持ち合い」に見られる株式所有構造
・1964年日本が経済協力開発機構OECD)に加盟。→「資本の自由化」→外国企業による株式売買の自由→買収の危険性→持ち合いの強化で防衛
オイルショック後に弛緩→バブル崩壊で再編統合

  1. 三菱
  2. 住友
  3. 三井
  4. 安田(芙蓉)
  5. 浅野
  6. 大倉
  7. 渋沢(一勧)
  8. 古河
  9. 薩州(川崎造船
  10. 川崎金融
  11. 山口(三和)
  12. 鴻池
  13. 野村
  14. 旧鈴木
  15. 日産コンツェルン(春光)


 

【読書メモ】鎌田慧『ルポルタージュ 幸せの報酬』すずさわ書店

ルポルタージュ 幸せの報酬

ルポルタージュ 幸せの報酬

1990年発行

笹川良一の真相

商才

・1899(明治32)年5月生まれ 大阪府箕面市小野原 造り酒屋 5人兄弟の長男
・父鶴吉 熱心な大本教信者 良一はのちに統一教会の顧問、辯天宗の信徒総代 深層心理のなかの信心深さ
・若くして大阪に身一つで飛び出す 株に手を出したり雑誌を作ったり芸能プロの社長
・藤吉男(関西浪人会 右翼)との出会い 
山岡荘八『破天荒―人間笹川良一
・1930東京駅で浜口雄幸襲撃事件 藤、笹川を担ぎ「国粋大衆党」を旗揚げ ムッソリーニにならい黒国防服
満州皇軍慰問 執政溥儀と会談
・株買い占め、乗っ取り、恐喝 飛行場を軍に献納して取り入る
・1940飛行機で渡伊 ムッソリーニと会談 山本五十六が後押し
・あえて占領軍批判 軍艦マーチで巣鴨プリズンへ 一種の売名行為 A級戦犯の「箔」が欲しかった 
・「占領軍を挑発して「A級戦犯」のライセンスを獲得したが、それでいてその実体がないのだから死刑になるおそれはなかった。東条英機広田弘毅などが絞首台にぶら下がった翌朝、岸信介児玉誉士夫などと一緒に、彼も放免された。笹川は占領軍から大物右翼のお墨付きを受けて帰還し、岸信介と獄窓での同級生となり、いよいよ戦後の高度成長へとむかうのである。」

逆転

・運輸官僚OBたちとの忘年会 話題になるのはあの頃のこと 管轄運輸省国土交通省
・福島世根と矢次一夫
大野伴睦
・ギャンブルの大義名分 戦災復興
社会党菊川孝夫「競争会設置は省令で定めるというが、一体どういう省令にするのか、不明朗である。競争会を認可する基準を明確にせよ。有志が集まって好き勝手にやろうとしているだけではないか。いったんできてしまって大きな力となってしまうと、なかなか統制がとりにくいと思う」。この法案の背後に笹川や矢次がかんでいることを、彼自身知っていたわけではなかったが、彼の批判はまさに正鵠を射ていた。こんにちの笹川船舶振興会の肥大化を予見していたのである。
・1951年6月3日参議院本会議 社会党小酒井義男一世一代の雄弁で否決
・広川弘禅に根回し
・6月5日衆議院で逆転再可決 憲法59条2項史上初の適用(否決→再可決は初)
・「歌舞伎座派対銀座派の対決」歌舞伎座派=前田郁、坪内八郎、堤徳三、福島世根、山崎猛、大野伴睦 銀座派=笹川、矢次、国策研究会系、足立正、郷古潔、中島久万吉、広川
・なまじっかな政治家や文化人の烏合の集団で、どこかやにさがった歌舞伎座派は、大衆感覚とバイタリティにあふれ、場数を踏んだ銀座派に太刀打ちできるはずもなかった。
・本来からいえば、国粋主義者たちがギャンブルに飛びつくのはおかしい。だから、当時、サービス産業に力をもっていた「第三国人に国の利益を渡さない」という大義名分がさかんに巻き散らされた。
・55年笹川が全国モーターボート競争会連合会会長に就任。

血族

群馬県桐生阿左美沼 桐生競艇
・「市には一銭も迷惑をかけない。赤字になってもカネはださせない」
・笹川ファミリーの特徴は、競艇運営の競争会は良一、了平の父の世代がにぎり、息子たちはこの公営企業にぶらさがって、すべてをしゃぶりつくすことにある。「偉大なる会長」である良一は、右手に全国モーターボート競争会連合会をにぎり、左手に日本船舶振興会で上納金を吸いあげる。そしてなおかつ、こんどは自分が会長の椅子に座っているもろもろの協会にカネを配っているのだから、千手観音も顔負けである。
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・笹川堯 ロッキー青木とアトランティック・シティでカジノを開く計画
・大阪 住之江 売上1日平均9億 入場者2万6千人
・右翼系の市長が強い土地に競艇を与える
丹田重雄 松岡賛城 吉松正勝 広島の岩田幸雄 三重の猪熊信行 
・運輸官僚→南海電鉄社長 小原英一 滝脇宏光
・南海本社内に「大阪競艇施設株式会社」→現・住之江興業
・最初は高野線狭山池→住之江 元ゴミ捨て場
バルチック艦隊の宝探し ナヒーモフ船
・零細なギャンブラーたちの、汗のしみこんだ千円札を日本船舶振興会にすいあげ、それを基に無数の組織をつくりあげた。
・山口と福岡の反乱
・連合会=選手の養成、派遣を握る
・笹川ー岸、佐藤のパイプ 佐藤は運輸畑
・競輪のボス、佐々木秀世 競輪は通産省
・「いま、競輪や競馬にはまったく例をみない、競艇に膨大なカネを握る「日本船舶振興会」が寄生しているのは、このときの笹川の逆襲が奏功したからである。笹川は競艇に関するすべてを掌握した。」
日本船舶振興会、9人の理事のうち3代にわたる船舶局長を含む4人の運輸官僚
・これまでに200人の運輸省OB
・目的(建前)①造船関係事業の振興②海難防止に関する事業の振興③海事思想の普及に関する事業の振興④観光に関する事業の振興⑤体育事業その他公益の増進を目的とする事業の振興
・「モーターボートの売り上げ高は、年間1兆5千億と日本の防衛予算に匹敵するほどのものであるが、このうち、本来ならば国家財政に組み入れられるべき515億円ものカネが毎年船舶振興会に流れてくる。」
・62年設立時財産1億3500万→80年1244億 うなぎのぼり
虎ノ門に本部ビル 三田に笹川記念会館
・笹川個人としては株と不動産運用

頂点

・「日本船舶振興会は、ごく簡単にいってしまえば、国に代行してカネを交付する団体である。これはまえにも述べたように、本来は国庫にはいるべき正確のカネであったが、ギャンブルはちかい将来廃止されるとの見通しのもとに、一度だけの臨時措置(時限立法)として暫定的におこなわれた措置だった。」
・予算のうち約半分の400億円は銀行を通した造船関係への貸付金 銀行にとって、振興会は最大の顧客
・『連合新報』朝日批判
・二号交付金運用委員 小口喜久二 加戸守行 西田泰介 持永堯民
森山欽司運輸大臣による笹川引退勧告 組織ぐるみで阻止
・航空関係4団体の名誉会長

世襲

・90年渡部昇一曽野綾子が新理事 日本科学協会、笹川平和財団の理事も兼任
・1989年度公営ギャンブルの売り上げ
中央競馬 2兆5545億
競艇 1兆9588億
競輪 1兆6852億
地方競馬 8490億
オートレース 3021億
合計 7兆3498億
・政治は堯、実業は陽平
・5大組織 
日本船舶振興会
B&G財団
日本造船振興財団
笹川平和財団
日本海事科学振興財団
・B&G財団海洋センター
・笹川『改革の時代』遠藤周作との対談 やり口が日本会議と同じ 
・B&G財団 3ヶ月の研修「育成士」軍隊式の洗脳 理事 務台光雄(読売)、石原慎太郎桜内義雄

勲章

・60年安保闘争にたいして、右翼を糾合した「全日本愛国者団体会議」顧問、世界基督教統一神霊協会文鮮明師)顧問、国際勝共連合名誉会長
・ジャーナリスト乾鉄之、ジョン・ロバーツ「米軍内の共和党派と民主党派の対立。共和党派内のタカ派、端的に言うと諜報部が、笹川や児玉誉士夫の釈放と利用を画策した」
・児玉機関の資金の行方
★獄中でのもうひとつのエピソードは、児玉誉士夫との関係である。児玉は笹川の「国粋大衆党」の東亜局長を務め、笹川の「子分」でもあった。笹川はこう書いている。「この国防社、国粋大衆党に出入りしていたのが、まだ青年だった児玉君で、演説会の会場整理やビラ貼りのような下積みの仕事を骨身惜しまずやっていたのを記憶している。その後、上海に渡って、有名な『児玉機関』をつくり、海軍や物資集めに協力するようになった。このとき貯えた財宝が、戦後、彼が政財界の黒幕として実力をふるう資金源になったという見方もあるが、私はそうは思わない」(『人類みな兄弟』)
・1949年3月28日付け『読売新聞』「謎のラジウム、辻嘉六邸で発掘 1400ミリグラム 釈放の児玉誉士夫氏米軍へ移譲」「価格は25万ドルから40万ドルに評価される」
・中国のレアアース、貴金属
・岩田幸雄 飛行機2機 島根の飛行場
・中国での戦費がアヘン(軍用語では煙膏)の密売によってつくられたことや、軍部の密命を受けた児玉機関が、軍部の秘密資金調達機関だったことは公然たる歴史の秘密。
ロッキードと笹川 若狭得治
・最終目標はノーベル平和賞

堤義明の挫折

・軽井沢ゴルフ場建設 
・リゾートブームという名の乱開発と自然破壊
堤義明 JOC会長 長野五輪 「国土計画」
南佐久郡大日向村 国策第一号の「分村満州移民」
・御歌「浅間おろし強き麓にかへりきていそしむ田人とうとくもあるか」
和田傳『大日向村』日中戦争時代の大ベストセラー 後に映画化
世界恐慌後のまゆ価の暴落
満蒙開拓団
・「長野県は世界恐慌後の繭価の暴落によって窮乏を深め、満蒙開拓青少年義勇軍もふくめて3万4000人もの開拓者を満州に送った。開拓とはいえ、それは中国人の土地と財産を収奪しての侵略にほかならず、かといって侵略に駆りたてられた農民たちのその後の不幸をみると、中国人民ばかりか、日本人をも悲惨に突き落として行き止まった歴史的暴走だった。」
吉林省舒蘭県四家房 長春(新京)からすぐ 216戸674人 半数以上の374人死亡
イルクーツクに抑留 製材工場500人の日本兵 大日向村に戻ったのは47年5月
堤康次郎 大隈重信の書生 軽井沢開発 大義名分と権力(大物の名前)とカネ 三種の神器
・87年「総合保養地域整備法(通称リゾート法)」
・ゴルフ会員権が株券に代わる投機の対象に

炭都夕張100年の夢

・1981年 北海道炭礦汽船(北炭)夕張新鉱で北炭夕張新炭鉱ガス突出事故
・三菱南大夕張炭鉱 1985年(昭和60年)5月17日に死者62人を出すガス爆発事故
・三菱系「警察型労務管理」、三井系「物欲的労務管理」、北炭系「精神的労務管理
・鹿ノ谷倶楽部(夕張鹿鳴館
・炭鉱夫たちは人間として扱われたか?尊厳。

尊王攘夷」の志士たち

青森県むつ市六ケ所村 核再処理工場 放射性廃棄物貯蔵管理センター
・1989年参院選三上隆雄(無所属) 関晴正(社会党) 農民一揆
田沢吉郎竹内黎一自民党
・農産物、コメ自由化、農政不信、お灸をすえる

あふれる紙々の公害

古紙回収 紙=木 
・主に広葉樹ではユーカリやアカシア、針葉樹ではマツ、スギ、ヒノキなどです。 紙の原料には、木材チップという、木を細かく削った木片を使用します。
・バタ屋=廃品回収業者 新聞、チラシ
・シュレッダーにかけた紙は繊維がズタズタになって再生できない。

交通安全協会の奇怪

・警察=交通支配
・秘密主義 取材に応じない
・1961道路交通法 パーキング・メーター レッカー移動 駐車違反 警察利権

驕れる大国は久しからず――アジア系留学生の日本批判

・日本政府は、一方では、入管法出入国管理・難民認定法)の罰則を強化して、外国人労働者たちをパニックにおとしいれ、その一方では「技能研修」の名目で、単純作業の労働者の受け入れ拡大を図るなど、さっぱり腰が定まっていない。
インドネシアからの留学生 日本の大学生、アイドル、クルマ、麻雀、パチンコ話題はそれだけ。「いまの学生たちが、将来、日本の政治や経済を担うとき、さすがの日本も終わりでしょう。人間を人間としてみていないのですから」
・敗戦後45年、日本は「経済大国」を自他ともに認める国となった。しかし、世界に通用する魅力的な人間をつくりだす能力のない国であるとしたら、そこに住む人間も不幸だが、それを知らずにやってくる留学生たちにとっての不幸でもあり、それは二重の不幸というしかない。

あとがき

異議を申し立てたり、批判したり、なにかにこだわりつづけたりするのが極端にいやがられるのが、この国の風土だが、その傾向はますます強まっている。あたかも、波風を立てないのが、幸福の前提条件と思いこまれているかのようである。
・日々の生活にさして影響がなければ、無関心であっても痛痒を感じない。それが経済大国のライフスタイル、というものであろうか。
・炭鉱を切り捨ててロケットを飛ばし、田んぼをつぶしてクルマを輸出する。それはけっして理念などというものではなく、そのときどきの産業界の獰猛なエネルギーに、ついに土地は大企業に買い占められて、庶民の手の届かないものになってしまった。
・それでもなお、異議を申し立てたり、権力に刃むかったりしなければ、日々の幸せはなんとか満たされる。
・在日アジア系留学生と会って共鳴したのは、彼らは「日本の落日」を時間の問題と考えていることだった。「両側を壁に囲まれた、せまい道を歩いている、そんな風にみえて仕方ありません」という台湾の青年の批判は、日本の現状を的確に衝いている。
・環境破壊、金権政治、教育荒廃、はたらき過ぎ、差別意識政治的無関心。これらが幸せの条件であるとしたなら、将来かならず決済されよう。
1990年10月
 
3/31読了
◆要約:笹川ファミリーと運輸官僚(OB含む)たちが競艇の莫大な利権を握っている。それが岸らタカ派政治家や右翼(CIAの手下)の軍資金になっている。その他、堤義明や夕張、六ケ所村など、「経済大国」となった日本の利権と暗部の話。
◆感想:竹中平蔵東京財団出身であることの関連で、笹川良一のことを調べたくて、読んでまあまあわかった。競艇日本船舶振興会の関係は大いに問題があるとわかった。公営ギャンブルの収益が一民間財団に流れる仕組みは競艇だけで、最低でも切り離しが必須、できなければ競艇自体廃止するべきだと考える。笹川良一はもちろんヤクザでアコギなのだが、監督している運輸省(現国土交通省)もグルなわけで、考えてみれば、国全体ヤクザのようなものだと気づいた。
大日向村の満蒙開拓団や夕張の話はほとんど知らなくて面白かった。堤義明は日本の80年代を象徴する人物だと思った。リゾートブームなどいまは幻のように感じる。土地バブルがあった。
六ケ所村は日本で一番悲しい土地。反対運動は国に総力を上げて潰された。
アジア系留学生の日本批判が鋭くて面白かった。日本の凋落を予言していた。
『幸せの報酬』というタイトルはだいぶひねっていて、普通に言えば、「幸せの条件」というか「無関心でいることの報酬としての幸せ」という方が本の趣旨に合っている。何も疑問を抱かず、テレビを見て笑っていれば幸せ。これはこの前読んだコロナ本の統治功利主義の話―「自由か、幸福か」という話―と一致していて驚いた。

【街歩き】国会前 赤坂見附 紀尾井町 麹町 市ヶ谷

・ドイツは脱原発を実現した
原子力は高く付く。再生可能エネルギーの方が安い
発送電分離しないと、送電を握っている権力が強すぎる
・送電国有化
・東電はすでに実質国有化されている
・この前の地震でまた、水位と気圧が下がった。→また穴が空いたということ
・ベントの配管が途中で切れていたことが10年目にして出てきた
地震計も壊れたまま半年放置していた。
大飯原発の判決 800ガルしか想定されていない 3.11は4000ガル
原発は政治問題ではなくて生活の問題だから、与野党支持者対立する必要はないはず
・子供の健康に一番反応した
・2021年1月時点で稼働は3基。全体の3%ほど。輸出計画も総崩れ。もう脱原発は確実。この運動は勝った
・この運動に本当に感謝とリスペクト
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【映画メモ】土井敏邦監督『福島は語る 完全版』(2018)

日比谷図書文化館 5時間20分
第一章 避難
片岡輝
・草野美和
・岡部理恵子
・星ひかり
・松本徳子
第二章 仮設住宅
・藤島昌治
・佐藤章一
・山田隆信
第三章 悲憤
・小林恒司
・佐久間いく子
・渡辺洋子
第四章 農業
・野口時子
中村和夫
・地脇美和
・大河原多津子
第五章 学校
・小野田陽子
・小野田敏之
第六章 原発労働者
・矢代昌弘
・池田実
第七章 汚染
・小澤洋一
・今野寿美雄
第八章 二つの原発事故
・若松丈太郎
第九章 構造と抵抗
・村田弘
・武藤類子
・佐藤和良
第十章 喪失
・杉下初男
・杉下龍子
最終章 故郷
上映後伊勢真一監督との対談
 

第一章 避難

・子供の健康最優先の行動としての自主避難
・夫婦、家族の分断 仕事をやめるわけにはいかない夫
・あなたは東京に住めてよかったわね
放射能被害をどう捉えるかによる分断、保証金に差をつけることによる分断
・被害者同士がいがみ合わされている巧妙な分断統治 
・母子避難者の貧困と鬱の問題 自死を選んだ母親
・娘のためを思って避難したのに、娘の理解が得られない 

第二章 仮設住宅

・ベッドを置けない狭さ 老人が布団を上げ下げするのは大変
仮設住宅孤独死 仮設住宅でさえ、プライベート重視な孤立を生む設計になっている
・生きがいがない 張り合いがない

第三章 悲憤

・村に戻れない 補償が十分でない
・終の棲家 友人関係が失われた
・「お前は俺達の税金から毎月10万円貰っているんだろう」本当に悔しかったがその場は収めるしかなかった

第四章 農業

・基準値以下でも少しは数値が出るのは事実。子供のことを考えると、私は安心して食べさせられない 関西から野菜を取り寄せる販売所
・農家が一番の被害者なのに、農家が責められる
・市民測定所に大豆を持ち込んだ小規模農家
・無農薬、有機栽培の畑を直撃 売上1/4
・それでも先祖代々受け継いできたこの土地を捨てられない
・少し数値はでても、トマトとか枝豆とかものすごく美味しい

第五章 学校

・大熊中学校 学校ごと会津若松市疎開
・3.11の黙祷は、東京などで忘れないためにやるもの。現地では毎日忘れられないのだから白々しすぎてできない
・地域の祭り よさこいソーラン演舞 

第六章 原発労働者

・除染作業 危険手当 1日1万円 環境省の予算 中抜きが横行
・家は屋根をキムタオルで拭くだけ 風が吹けば数値はまた上がる
・除染 草を刈って 表土を5cm削る 工期の関係で草狩りだけになることが横行 除染自体が環境破壊になっている 二重の環境破壊
・福一 まだ危険作業は毎日続いている 10年たっても収束しない 
・事故前の会社がそのまま廃炉ビジネスに移行しているだけ

第七章 汚染

放射線管理区域4万ベクレル/m2 その20倍あっても帰還地域になっている
・空間線量は下がるの当たり前だが、その分土に浸透している 地面が高くなっている
・放射性プルームが通った高汚染地域 シダ類の成長に異常が見受けられる
・現場作業員 白血病労災認定基準 年5ミリシーベルト 
・作業員の被ばく線量 年間50ミリシーベルト 5年間100ミリシーベルト → 緊急事態ということで年間250ミリシーベルト
・一般人の年間被爆上限 年間1ミリシーベルト(目標、理想の状態) → 事故後年間20ミリシーベルト 20ミリシーベルト以下なら避難解除 (復旧途上の特例)
・累積100ミリシーベルトでガン死亡のリスクが0.5%上昇

第八章 二つの原発事故

・「東北」という言葉 視座はどこにあるのか
・常に東北は中央への供給源にされてきた 食料 エネルギー 労働力 兵士 東北の戦死者が多い
原発を続けるなら、東京に作るべき

第九章 構造と抵抗

水俣病と同じ 最初は隠蔽する バレたらごまかす 責任を逃れられなくなったらできるだけ被害を矮小化する
・東北(地方)差別 産業のない所に迷惑施設を押し付ける お金を落として依存させる 
・国家の体制は全く変わらない 国家総動員体制が続いている 3.11にも、1945年8.15にも切断線は無い
・国家にとっては国家が一番大事 国民は国家にとっての資源の一つに過ぎない
IAEA国際原子力機関)国際的な原子力マフィア 福島会議  
・2012年12月15日 IAEA「福島会議」 謝罪の言葉が一つもない リスクコミュニケーション(安心プロパガンダ)の重視

第十章 喪失

飯舘村 石材加工会社 ホテル暮らしとアルコール依存

最終章 故郷

・ふるさとは記憶とともにあるので捨てることはできない

対談

・ヒューマン=カオス 混沌 一人の人間の中に単純に説明できない宇宙がある
・子供にもっと映画を見せたほうがいい 学校の授業で
 
◆概要:27人のインタビュードキュメンタリー。双葉、大熊、富岡、浪江、南相馬葛尾村飯舘村などの住民の視点。
◆感想:話している表情の映画だと感じた。絞り出される言葉。国家の構造的な宿痾。巧妙な分断統治。リスクコミュニケーションという名の情報操作。土地が汚染されるという問題。最大の公害問題。影響が晩発性なので、立証が難しい。

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【読書メモ】『思想としての〈新型コロナウイルス禍〉』(河出書房新社)

思想としての〈新型コロナウイルス禍〉

思想としての〈新型コロナウイルス禍〉

  • 発売日: 2020/05/23
  • メディア: 単行本
目次

大澤真幸 不可能なことだけが危機をこえる 連帯・人新世・倫理・神的暴力

全体最適部分最適国民国家の利益を追求していくと、人類的にはマイナスになる。
国民国家を単位とした自然状態(ホッブズ)e.x.核開発 
・民主主義→不足感→全体主義 
・緊急権 憲法制定権力
IT技術を用いた監視 自由と安全安心 自由を犠牲にしてでも監視社会を選ぼうとする
・監視社会を市民がモニタリングする仕組み

仲野徹 オオカミが来た! 正しく怖がることはできるのか

・14世紀欧州 ペスト菌黒死病) 人工1億人減
・新大陸における天然痘 インディアン 人口9割減
・種痘 幕末 佐賀藩鍋島直正(閑叟) 嫡男が摂取 お墨付きを与える
HIV 死亡3000万人
WWI期 スペイン風邪 1700万ー1億人死亡
・DNA(デオキシリボ核酸)ウイルスとRNA(リボ核酸)ウイルス 
・弱毒化、不活化したウイルス(抗原)を打ち込む
・ポリオ NHK記者上田哲
・スコット・ケリー国際宇宙ステーションに1年間

長沼毅 コロナウイルスで変わる世界

宇宙船地球号→クルーズ船地球号
・太陽コロナ 大きさ約100ナノメートル(1万分の1ミリ)
・人類史の三大感染症 天然痘、ペスト、スペイン風邪
・牛 ラテン語で vacca 牛痘ウイルス=ワクチニアウイルス
・「コロンブス交換」ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』  
・ペスト 3回特に過酷
天然痘 ピット砦の戦い 毛布とハンカチ 細菌戦
・ペスト モンゴル軍 カッファの戦い 投石機でペスト遺体を放り込む
・ペストの潜伏期間 ベネチア入港する船に40日間待機させる 40=quarantine=「検閲」を意味する英語
・南極 「しらせ風邪」
・1666 ニュートン ペスト疎開で田舎の実家待機 光学 微積分 万有引力の発見
・最初の抗生物質 ペニシリン 
・「病院熱」ライプニッツ「死の温床」=「三密」だから=軍隊も一緒
国民国家は富国強兵を目指し国民を総動員するため、産業面では工場での大量生産、軍事面では徴兵制、教育面では「学校」というシステムをつくった。
スペイン風邪=インフルエンザ アメリカ軍キャンプで発症→WW1フランス戦線へ 
・5億人に感染1700万人以上死亡 日本でも39万人死亡 戦死者より多くの死者をだした
・このインフルエンザの感染爆発は、士気の低下を恐れた参戦国では報道されなかった。ただ。非参戦のスペインでは自由に報道できた上、当時のスペイン王がインフルエンザに罹ったことも報道されたので、インフルエンザと言えばスペインと印象づけられ、「スペイン風邪」という呼び名が定着した。定着したと言えば、このウイルスは季節性インフルエンザの病原体として人間界に定着している。
・ナシーム・タレブ『反脆弱性』「ブラック・スワン問題」=将来は予測できない
・学校と言えば、工場での大量生産と並んで国民国家システムの象徴である。
・中国ネット四天王BATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)
・米国 GAFAM
Facebook 仮想通貨「リブラ」
グルーバル化とは極論すれば、企業による超国家の創出である。
ジャック・アタリ『21世紀の歴史』いままで”公的”と思っていたことが、民間企業との契約になる。ゴミ収集もいちいち業者と契約しなければならない。
・市場原理が個人の生き方にまで介入してくるようなる。しかも、グローバルな民間企業が世界中で介入しはじめる。これをアタリは「監視」と呼んでいる。
・<超監視体制>と<自己監視体制>
・ユヴァル・ノア・ハラリ「要塞のネットワーク」

宮沢孝幸 新型コロナウイルスは社会構造の進化をもたらすのか

結核 明治まで日本の国民病 毎年100万人あたり200人の死者
・ウイルスは全て悪さを働くものではない
・ウイルスの毒性が強すぎれば、宿主が死ぬので定着はしない
SAAS-Cov-2はSAAS-Cov-1よりも弱毒ではあるが、ウイルスの生存戦略においては、SAAS-Cov-1よりも上手であった。
・哺乳類の進化 内在的レトロウイルス 

椹木野衣 ポスト・パンデミックの人類史的転換

・ダダ WW1の膨大な死者に対して 近代を一度破壊する →シュルレアリズム →アブストラクト(抽象)アート
・外宇宙の探求→内宇宙の探求
・他方、ペストが多くの犠牲者を出して、それが「神の罰にしては酷すぎる。悪魔の仕業としか思えない。しかも神はなんの救いもしない」ということで神への疑いにつながり、自我の芽生えを誘発し、既得権を持つ僧侶と特権階級の没落、自分の肉体に対する信奉をもたらしてルネッサンスとなり、近代の扉を開いたという先例もあります。何が功を奏するかはまったくの未知です。
パンデミックののち、全体主義に向かうか、ルネッサンスに向かうか。

那覇潤 歴史が切れた後に 感染爆発するニヒリズム

・意識高い系ミレニアル世代 エビデンス主義→ポスト・トゥルース→ファクトチェック
・そのファクトをどう読み解くか、そうした事実の切りとり方の妥当性を吟味する姿勢こそを知性と呼ばなくてはいけないのに、数字を出して「相手を論破する」快感に酔うだけのエビデンス論客はそれを怠ってきた。
百田尚樹さんの本で昭和史を語れる気になっている「ライトなネトウヨ」→亜インテリ1.0 意識高い系で、情報感度は高いが、それを運用する知性と教養を持っていない→亜インテリ2.0
・AI論壇のお粗末さ。コロナの今こそ必要なのに何も役にたたない。

笙野頼子 台所な脳で? Died Corona No Day

中野重治
新自由主義 金儲け主義 搾取の自由 自由貿易 TPP モンサント
・人口を減らすための「千載一遇のチャンス」
・無策、無能を装った巧妙な「棄民政策

酒井隆史 パンデミック、あるいは<資本>とその宿主

・ブラジル ボルソナロ大統領「ブラジルは止まらない」
・ボルソナロは主人の命令を代弁しているだけなのだ。その主人とは、もちろん<資本>である。ボルソナロの猥雑と残酷、そして人間の生命への無関心は、そのまま、資本の猥雑、資本の残酷、資本の生命への無関心である。<資本>とは、つねに、「わたしを止めるな」と命じるものなのだ。
・宿主に寄生しながらみずからを延命させるという点で、<資本>はウイルスと似ているが、しかし根本的には性質を異にしている。
・逆説的にも、カール・ポランニーが「社会による反動」と呼んだ、この<資本>に対する外的な要素の「抵抗」こそが、むしろ資本主義を延命させてきたのであって、<資本>それ自体には生命存続の本能はない。<資本>は、その運動のなかで、みずからの宿主を全滅させることもいとわないであろう(そして、それに付随するみずからの死滅もいとわないであろう)。
・2008年にすべての矛盾をさらけだし、イデオロギー的正当性もなにもかも全て失った、「ニュー(ゾンビ)・ネオリベラリズム」。警察や軍隊、あるいは借金を負わせて脅すといった古典的な方法でもってみずからのルールを押し付ける。
・アマゾンの大規模火災

小川さやか 資本主義経済のなかに迂回路をひらく タンザニアの人々の危機への対処から

・北部ムワンザ2005年コレラ 「ママ・シティリエ」「ママ・リシェ」路上惣菜売り
・誰かに提供した「貸し」をすぐに返してもらわず、自身が必要になった時に取り立てにいく。「いざというときの保険」。
・生存本能と結局は衣食住エネルギー
・ジョナサン・パリー&モーリス・ブロック『貨幣と交換のモラリティ』(2005)。金銭の取引には個人の欲求を満たすための短期サイクルと社会秩序や道徳を再生産するための長期サイクルがあり、人々は両者のあいだで貨幣をコンバートすることで貨幣のもつ危険な力を飼いならす。
・トンチン(=頼母子講)。個人が獲得した金銭を一時的に集団のものとすることで、個人が「利己的」に稼いだ金銭を「共有化された金銭」へとコンバートさせ、それによって金銭獲得行為(個人の利益追求)を正当化する行為。
・「リープフロッグ(蛙跳び)型発展」。携帯、電子通貨、ギグ・エコノミーも。
・迂回路を網の目のように構築する。

木澤佐登志 統治・功利・AI アフターコロナにおけるポストヒューマニティ

・ユク・ホイ「宇宙技芸」=ポスト近代の技術思想
・近代とはテクネーのグローバルな支配が完成した時代。
・「航行・軍事技術は、ヨーロッパ勢力による世界の植民地化を可能としたのだが、これは、私たちがこんにち呼ぶところのグローバル化をもたらした」
・中華未来主義=「大聖堂(カテドラル)」(=リベラルな価値観)に邪魔されずにテクノロジーを導入できた。
・中国における技術的加速やビッグデータによるデジタル・レーニン主義的統治
・ニック・ランドらトランス・ヒューマニスト ヒトのホモ・デウスへのアップデートの試み 啓蒙の弁証法の最終局面
例外状態の恒常化。セキュリティと管理支配(コントロール)のより大規模な再編成が行われつつある。
スマートフォンの支配(位置情報、検索内容)
・バイオメトリック・モニタリング(血圧、心拍数、脳波)は、ケンブリッジ・アナリティカのデータハッキング戦術を、石器時代の何かのように見せるであろう。
・人の脳を監視、支配する。
・中国の大手IT企業は膨大な個人データを保有しているが、その背後には利便性や安価なサービスの提供と引き換えに、進んで個人データを差し出すユーザーの姿がある。企業にデータを差し出すことがユーザーにとってのメリットになる。
アリババグループが展開する信用スコアの芝麻信用 データを提供すれば融資や分割払いの限度額が上がる 
・2000万台の監視カメラ
★法学者の大屋雄裕が述べるように、19世紀以来の啓蒙主義的なリベラリズムが前提としていた自由と幸福の親和的な関係が失効し、それに代わって個人の自律性を剥奪することによって社会統制を実現しようとする21世紀的な「アーキテクチャの権力」が今や全面化しつつあるのだ。すなわち、「自由か、さもなくば幸福か?」というわけである。
・統治功利主義=統治者が効用計算をして制度を設計し、被治者はただ社会の規則(コード)に従っておけばよい
・厚生=快楽や欲求充足 といった情報のビッグデータを集める
・こうしたAI的統治が目指すのはほぼ全面化したパターナリズムである。
パターナリズムとは「ある個人自身のため、すなわち、その個人の福利のために本人の意志を無視して介入を行うこと」 e.x.シートベルトを締めないとエンジンがかからない車のアーキテクチャ
功利主義のもとでは、厚生以外の内在的道徳的価値は一切認められない。よって、19世紀的リベラリズムが前提としていた「個人」に内在する自由や自律性といった諸価値も、それが厚生を増進するかという手段的価値の問題に切り下げられる。すなわち、「個人」の自由や自律性が厚生を損なうとされる局面においては、当然前者よりも後者の方が優先されるのである。
ベンジャミン・リベットの脳波の実験。意識より先に体が動く。無意識が意識を決める。
・キャス・サンスティーン「リバタリアンパターナリズム」=選択アーキテクチャが構成する「デフォルト・ルール」。既に実現しつつある、youtubenetflixのおすすめ。→負の側面、視野を狭める。意外な出会いがない。デフォルトに基づく受動的選択は、主体から能動性を奪う。人を既知に取り囲まれた「共鳴室(エコーチェンバー)」に閉じ込める。
神経科学社会デイヴィッド・イーグルマンの仮説「意識とは自動化された複数のサブルーチン・システムを制御し取りまとめる役割を担う、いわば企業におけるCEOのような存在。」
・つまり意識(意志)は、何か想定外、新しいことが起こったときに判断する、決断をくだす役割。
・世界と意識との間に摩擦や緊張がなくなれば、意識は消失する他ない。統治功利主義を採用した社会においては、人間の意識は斬新的に消滅していくだろう。
オーウェルの『1984』というより、ハクスリー『すばらしい新世界』や伊藤計劃『ハーモニー』の世界。
サイエンス・フィクション、あるいは思弁的(スペキュレイティブ)・フィクションは、未来を予言し現実に影響を与えるだけではなく、それ自体が現実に参加することで現実を作り出す。
・SFは見せかけの「自然律」が、なんら必然性のない恣意的なものでしかないことを喝破する。戻るべき「日常」など存在しない。私たちは「未来」を創造していかなくてはならない。

樋口恭介 Enduring Life(inn the time of Corona)

・蝙蝠
・「文明」
・人間が地球を滅ぼすウイルス
・メアリー・シェリー『最後のひとり』
・「分子生物学者の福岡伸一によれば、あらゆる系は 「互いに逆向きの過程が同じ速度で進行することによ り、系全体としては時間変化せず平衡に達している」のであり、「動的平衡」の状態にある。すべて生きる者は、部分と全体の機械論的な運動の中にあるのではなく、部分と全体を分かつことのできない、一つの大いなる流れの中にある」
・大量に出現する新興感染症の諸々は、人間中心主義的に設計された文明の発達により、自然の動的平衡が崩れていることの現れであるとも言える。
・森林の50%が消失 湿地がアスファルト
・わたしたちは自らを資本にし、自らを情報にし、この文明を駆動し続け、その先でふたたび未知のウイルスと出会い、そのたび自らをウイルスのように変質させながら、生き延びるために生き延び続けるだろう。
・ドアノブやエレベーターのボタンにつばを吐く、コロナ拡散テロ 
・「#Boogaloo2020」銃規制反対 陰謀論 フェイクニュース ポスト・トゥルース
・データの海に溶け込み人間が消える

綿野恵太 「ウンコ味のカレーか、カレー味のウンコか?」という究極の選択には「カレー味のカレー」を求めるべきである。

・「ファクトフルネス」の薄っぺらさ。
パンデミックにおいて「他者の自己決定への恐怖・不安」がパニックを引き起こす。そして、不安と恐怖にかられた人々は「強大で絶対的な存在たる国家」=「リヴァイアサン」にみずから従属し、他者の行動を強制しようとする。
・みずからの「自由」と引き換えに「安全」を求めて監視・管理社会化を進めるのと同じ構図である。他者への「自由」に不安を抱きながらも、私たち自身がその運営を担い、「異質な他者」と共存を模索する「自由」な社会か、もしくは、国家権力やアーキテクチャによって「異質な他者」を排除することで、「安全」を保障してもらう代わりに従属するだけの「幸福」な社会か、という選択である。(大屋雄裕『自由か、さもなくば幸福か』筑摩書房
・コロナ=他者への恐怖=分断を加速
・政府は2019年台風19号のときと同じく「消極的な無責任」
・災害に便乗して新自由主義化を進める「災害資本主義」

工藤丈輝 流感・舞踏

・ロックダウン=観念のみが肥大化する
・演劇=空気を共有すること

小泉義之 自然状態の純粋暴力における法と正義

アガンベンの躓き
・生存という「共通善」を最終目的とする→「福祉」「保健」「衛生」「軍事」
・法と最高目的である共通善の関係 非常事態には共通善が優先されて、法が破られる
・小泉からすると、アガンベンは卑屈に映る 

江川隆男 自由意志なき〈自由への道〉 行動変容から欲望変質へ

石川義正 「人間に固有の原理としての愚劣」

・「ビュリダンの驢馬」
・「イサクの燔祭」

堀千晶 感染症階級意識

・ある行動は、「善い」と言われたり、「悪い」と言わ れたりする。つまり行動の領域には、道徳が導入される。かつて中世の農村共同体は集団精神を体現し、共同で行われる農作業――成員たちの暮らしにかかわる食料生産――に背反する個々人の勝手な行動を、共同体の掟によって規制した。近代において、こうした「精神」の操縦を担おうと欲している主要なアクターは、「国家」の統治者たち、「資本」の流れの制御者たち、「国民」たちである。場合に よってこの精神は、国家精神、国民精神、資本主義の精神ともなりうる。これらが結合するとき、人命が大事だと言われつつ、何より守るべきは人命ではなく、資本とその増殖のための環境であり、それに付随する国家とその構造の維持のための環境であり、そのための人命である(一定数の人口が統計的に維持されなければならない)。だが、この巨大な構造をある角度から眺めると、この構造こそが、 個々人の「暮らし(生)」を保証しているものであるかのように見えるにちがいない。つまり既存の経済の維持が、そこに参加する者たちにかかわる運命共同体を守ることであるかのような外観をまとうのである。この角度、この外観は反革命である。国家はその維持のために、アポロンというより、リヴァイアサンの影を呼び寄せることもあるだろう。その右手には剣(暴力)が、左手には資本(信仰)が握られている。
・「中心」が守られ、「周辺」は切り捨てられる。
ブローデル『物質文明・経済・資本主義』
パレスチナ ガザ 世界一大きな監獄 軍事的な住民監視
・テレワーク 居室を職場化(フーコーにならうなら職場=監獄化) 資本主義のひとつの達成
・企業は、「私的」な環境のインフラにタダ乗りするのであり、私的空間と想定されていた「家」や「部屋」は、その内部に到るまで資本に実質的に包摂されることになる。
・個々人の全生活は、たえず監視され、適格に資本主義経済に組み込まれているかどうかチェックされ、組み込み漏れのある場合は、個人の行動に対して指導が行く
・不安・非安全の利用
・一体性を讃美し、違反者には社会的懲罰をくわえる。憲法秩序が停止され、警察および軍隊が動員される。緊急事態の名のもとに、行政が立法を担い、三権分立を侵す専制的な傾向が強まる。良心の疚しさに訴えかけつつ、国家が組織的暴力部隊を街に展開し、メディアがそれを拡散し、道徳的包囲網を広げつつ強化していく。感染症は、戦争と並んで、規律を強化する最短回路のひとつである。
・言説のコントロール。譬喩 換喩 差別。
マクロンの戦争演説。「総動員体制」。ジレ・ジョーヌ潰し。
ブレッソン『抵抗 死刑囚の手記より』(1956 フランス映画)冷静に観察せよ 

白石嘉治×栗原康 カタストロフを思考せよ

・大杉「生の拡充」死んでもやる
・台湾や韓国はテクノロジーを駆使してたえずオンライン状態。韓国では感染者が出たら日本の地震警報みたいにスマホがビービー鳴って、どこで感染者が出たのか、個人情報が開示され、誰と交流して、どこを歩いたのかがネット上で公開される。
・平時の不法行為が非常事態の名のもとに正当化される。9.11後の対テロ戦争と同じです。人権など知ったことか、いまは有事である、安全のためには迅速さがだいじ。
・『幸福な監視国家中国』
徳島県美浜町 井若和久「事前復興」文明の根本的なデザイン
ナウシカは文明そのものを焼き尽くし、その外側を思考しはじめる。燃やせ、燃やせ、燃やせ。
・モリス『ユートピアだより』、トリュフォー華氏451』フィクションの想像力
・徴候の知性 直感
 
3/8読了
◆要約:ウイルスの歴史的、科学的解説と統治功利主義、監視社会の話。アガンベンはコロナによるショック・ドクトリンや一層の監視社会化を批判したが、コロナの健康被害を甘く見すぎていると逆にリベラル系学者から批判された。
◆感想:読んでみたい人が多くてお得だと思ったので読んでみた。木澤佐登志氏の統治功利主義の話が一番面白かった。「自由か、さもなくば幸福か?」。アーキテクチャの権力、システムの支配が深刻化していくなかで、どうやって人間性が反撃できるのか。「再魔術化」のキーワードとともに気になる。