目次
大澤真幸 不可能なことだけが危機をこえる 連帯・人新世・倫理・神的暴力
・全体最適と部分最適。国民国家の利益を追求していくと、人類的にはマイナスになる。
・国民国家を単位とした自然状態(ホッブズ)e.x.核開発
・民主主義→不足感→全体主義
・緊急権 憲法制定権力
・IT技術を用いた監視 自由と安全安心 自由を犠牲にしてでも監視社会を選ぼうとする
・監視社会を市民がモニタリングする仕組み
・宇宙船地球号→クルーズ船地球号
・太陽コロナ 大きさ約100ナノメートル(1万分の1ミリ)
・人類史の三大感染症 天然痘、ペスト、スペイン風邪
・牛 ラテン語で vacca 牛痘ウイルス=ワクチニアウイルス
・「コロンブス交換」ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』
・ペスト 3回特に過酷
・天然痘 ピット砦の戦い 毛布とハンカチ 細菌戦
・ペスト モンゴル軍 カッファの戦い 投石機でペスト遺体を放り込む
・ペストの潜伏期間 ベネチア入港する船に40日間待機させる 40=quarantine=「検閲」を意味する英語
・南極 「しらせ風邪」
・1666 ニュートン ペスト疎開で田舎の実家待機 光学 微積分 万有引力の発見
・最初の抗生物質 ペニシリン
・「病院熱」ライプニッツ「死の温床」=「三密」だから=軍隊も一緒
・国民国家は富国強兵を目指し国民を総動員するため、産業面では工場での大量生産、軍事面では徴兵制、教育面では「学校」というシステムをつくった。
・スペイン風邪=インフルエンザ アメリカ軍キャンプで発症→WW1フランス戦線へ
・5億人に感染1700万人以上死亡 日本でも39万人死亡 戦死者より多くの死者をだした
・このインフルエンザの感染爆発は、士気の低下を恐れた参戦国では報道されなかった。ただ。非参戦のスペインでは自由に報道できた上、当時のスペイン王がインフルエンザに罹ったことも報道されたので、インフルエンザと言えばスペインと印象づけられ、「スペイン風邪」という呼び名が定着した。定着したと言えば、このウイルスは季節性インフルエンザの病原体として人間界に定着している。
・ナシーム・タレブ『反脆弱性』「ブラック・スワン問題」=将来は予測できない
・学校と言えば、工場での大量生産と並んで国民国家システムの象徴である。
・中国ネット四天王BATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)
・米国 GAFAM
・Facebook 仮想通貨「リブラ」
★グルーバル化とは極論すれば、企業による超国家の創出である。
・ジャック・アタリ『21世紀の歴史』いままで”公的”と思っていたことが、民間企業との契約になる。ゴミ収集もいちいち業者と契約しなければならない。
・市場原理が個人の生き方にまで介入してくるようなる。しかも、グローバルな民間企業が世界中で介入しはじめる。これをアタリは「監視」と呼んでいる。
・<超監視体制>と<自己監視体制>
・ユヴァル・ノア・ハラリ「要塞のネットワーク」
宮沢孝幸 新型コロナウイルスは社会構造の進化をもたらすのか
・結核 明治まで日本の国民病 毎年100万人あたり200人の死者
・ウイルスは全て悪さを働くものではない
・ウイルスの毒性が強すぎれば、宿主が死ぬので定着はしない
・SAAS-Cov-2はSAAS-Cov-1よりも弱毒ではあるが、ウイルスの生存戦略においては、SAAS-Cov-1よりも上手であった。
・哺乳類の進化 内在的レトロウイルス
・ダダ WW1の膨大な死者に対して 近代を一度破壊する →シュルレアリズム →アブストラクト(抽象)アート
・外宇宙の探求→内宇宙の探求
・他方、ペストが多くの犠牲者を出して、それが「神の罰にしては酷すぎる。悪魔の仕業としか思えない。しかも神はなんの救いもしない」ということで神への疑いにつながり、自我の芽生えを誘発し、既得権を持つ僧侶と特権階級の没落、自分の肉体に対する信奉をもたらしてルネッサンスとなり、近代の扉を開いたという先例もあります。何が功を奏するかはまったくの未知です。
・パンデミックののち、全体主義に向かうか、ルネッサンスに向かうか。
與那覇潤 歴史が切れた後に 感染爆発するニヒリズム
・意識高い系ミレニアル世代 エビデンス主義→ポスト・トゥルース→ファクトチェック
・そのファクトをどう読み解くか、そうした事実の切りとり方の妥当性を吟味する姿勢こそを知性と呼ばなくてはいけないのに、数字を出して「相手を論破する」快感に酔うだけのエビデンス論客はそれを怠ってきた。
・百田尚樹さんの本で昭和史を語れる気になっている「ライトなネトウヨ」→亜インテリ1.0 意識高い系で、情報感度は高いが、それを運用する知性と教養を持っていない→亜インテリ2.0
・AI論壇のお粗末さ。コロナの今こそ必要なのに何も役にたたない。
・ブラジル ボルソナロ大統領「ブラジルは止まらない」
・ボルソナロは主人の命令を代弁しているだけなのだ。その主人とは、もちろん<資本>である。ボルソナロの猥雑と残酷、そして人間の生命への無関心は、そのまま、資本の猥雑、資本の残酷、資本の生命への無関心である。<資本>とは、つねに、「わたしを止めるな」と命じるものなのだ。
・宿主に寄生しながらみずからを延命させるという点で、<資本>はウイルスと似ているが、しかし根本的には性質を異にしている。
・逆説的にも、カール・ポランニーが「社会による反動」と呼んだ、この<資本>に対する外的な要素の「抵抗」こそが、むしろ資本主義を延命させてきたのであって、<資本>それ自体には生命存続の本能はない。<資本>は、その運動のなかで、みずからの宿主を全滅させることもいとわないであろう(そして、それに付随するみずからの死滅もいとわないであろう)。
・2008年にすべての矛盾をさらけだし、イデオロギー的正当性もなにもかも全て失った、「ニュー(ゾンビ)・ネオリベラリズム」。警察や軍隊、あるいは借金を負わせて脅すといった古典的な方法でもってみずからのルールを押し付ける。
・アマゾンの大規模火災
小川さやか 資本主義経済のなかに迂回路をひらく タンザニアの人々の危機への対処から
・北部ムワンザ2005年コレラ 「ママ・シティリエ」「ママ・リシェ」路上惣菜売り
・誰かに提供した「貸し」をすぐに返してもらわず、自身が必要になった時に取り立てにいく。「いざというときの保険」。
・生存本能と結局は衣食住エネルギー
・ジョナサン・パリー&モーリス・ブロック『貨幣と交換のモラリティ』(2005)。金銭の取引には個人の欲求を満たすための短期サイクルと社会秩序や道徳を再生産するための長期サイクルがあり、人々は両者のあいだで貨幣をコンバートすることで貨幣のもつ危険な力を飼いならす。
・トンチン(=頼母子講)。個人が獲得した金銭を一時的に集団のものとすることで、個人が「利己的」に稼いだ金銭を「共有化された金銭」へとコンバートさせ、それによって金銭獲得行為(個人の利益追求)を正当化する行為。
・「リープフロッグ(蛙跳び)型発展」。携帯、電子通貨、ギグ・エコノミーも。
・迂回路を網の目のように構築する。
木澤佐登志 統治・功利・AI アフターコロナにおけるポストヒューマニティ
・ユク・ホイ「宇宙技芸」=ポスト近代の技術思想
・近代とはテクネーのグローバルな支配が完成した時代。
・「航行・軍事技術は、ヨーロッパ勢力による世界の植民地化を可能としたのだが、これは、私たちがこんにち呼ぶところのグローバル化をもたらした」
・中華未来主義=「大聖堂(カテドラル)」(=リベラルな価値観)に邪魔されずにテクノロジーを導入できた。
・中国における技術的加速やビッグデータによるデジタル・レーニン主義的統治
・ニック・ランドらトランス・ヒューマニスト ヒトのホモ・デウスへのアップデートの試み 啓蒙の弁証法の最終局面
★例外状態の恒常化。セキュリティと管理支配(コントロール)のより大規模な再編成が行われつつある。
・スマートフォンの支配(位置情報、検索内容)
・バイオメトリック・モニタリング(血圧、心拍数、脳波)は、ケンブリッジ・アナリティカのデータハッキング戦術を、石器時代の何かのように見せるであろう。
・人の脳を監視、支配する。
・中国の大手IT企業は膨大な個人データを保有しているが、その背後には利便性や安価なサービスの提供と引き換えに、進んで個人データを差し出すユーザーの姿がある。企業にデータを差し出すことがユーザーにとってのメリットになる。
・アリババグループが展開する信用スコアの芝麻信用 データを提供すれば融資や分割払いの限度額が上がる
・2000万台の監視カメラ
★法学者の大屋雄裕が述べるように、19世紀以来の啓蒙主義的なリベラリズムが前提としていた自由と幸福の親和的な関係が失効し、それに代わって個人の自律性を剥奪することによって社会統制を実現しようとする21世紀的な「アーキテクチャの権力」が今や全面化しつつあるのだ。すなわち、「自由か、さもなくば幸福か?」というわけである。
・統治功利主義=統治者が効用計算をして制度を設計し、被治者はただ社会の規則(コード)に従っておけばよい
・厚生=快楽や欲求充足 といった情報のビッグデータを集める
・こうしたAI的統治が目指すのはほぼ全面化したパターナリズムである。
・パターナリズムとは「ある個人自身のため、すなわち、その個人の福利のために本人の意志を無視して介入を行うこと」 e.x.シートベルトを締めないとエンジンがかからない車のアーキテクチャ
★功利主義のもとでは、厚生以外の内在的道徳的価値は一切認められない。よって、19世紀的リベラリズムが前提としていた「個人」に内在する自由や自律性といった諸価値も、それが厚生を増進するかという手段的価値の問題に切り下げられる。すなわち、「個人」の自由や自律性が厚生を損なうとされる局面においては、当然前者よりも後者の方が優先されるのである。
・ベンジャミン・リベットの脳波の実験。意識より先に体が動く。無意識が意識を決める。
・キャス・サンスティーン「リバタリアン・パターナリズム」=選択アーキテクチャが構成する「デフォルト・ルール」。既に実現しつつある、youtubeやnetflixのおすすめ。→負の側面、視野を狭める。意外な出会いがない。デフォルトに基づく受動的選択は、主体から能動性を奪う。人を既知に取り囲まれた「共鳴室(エコーチェンバー)」に閉じ込める。
・神経科学社会デイヴィッド・イーグルマンの仮説「意識とは自動化された複数のサブルーチン・システムを制御し取りまとめる役割を担う、いわば企業におけるCEOのような存在。」
・つまり意識(意志)は、何か想定外、新しいことが起こったときに判断する、決断をくだす役割。
・世界と意識との間に摩擦や緊張がなくなれば、意識は消失する他ない。統治功利主義を採用した社会においては、人間の意識は斬新的に消滅していくだろう。
・オーウェルの『1984』というより、ハクスリー『すばらしい新世界』や伊藤計劃『ハーモニー』の世界。
・サイエンス・フィクション、あるいは思弁的(スペキュレイティブ)・フィクションは、未来を予言し現実に影響を与えるだけではなく、それ自体が現実に参加することで現実を作り出す。
・SFは見せかけの「自然律」が、なんら必然性のない恣意的なものでしかないことを喝破する。戻るべき「日常」など存在しない。私たちは「未来」を創造していかなくてはならない。
樋口恭介 Enduring Life(inn the time of Corona)
・蝙蝠
・「文明」
・人間が地球を滅ぼすウイルス
・メアリー・シェリー『最後のひとり』
・「分子生物学者の福岡伸一によれば、あらゆる系は 「互いに逆向きの過程が同じ速度で進行することによ り、系全体としては時間変化せず平衡に達している」のであり、「動的平衡」の状態にある。すべて生きる者は、部分と全体の機械論的な運動の中にあるのではなく、部分と全体を分かつことのできない、一つの大いなる流れの中にある」
・大量に出現する新興感染症の諸々は、人間中心主義的に設計された文明の発達により、自然の動的平衡が崩れていることの現れであるとも言える。
・森林の50%が消失 湿地がアスファルトに
・わたしたちは自らを資本にし、自らを情報にし、この文明を駆動し続け、その先でふたたび未知のウイルスと出会い、そのたび自らをウイルスのように変質させながら、生き延びるために生き延び続けるだろう。
・ドアノブやエレベーターのボタンにつばを吐く、コロナ拡散テロ
・「#Boogaloo2020」銃規制反対 陰謀論 フェイクニュース ポスト・トゥルース
・データの海に溶け込み人間が消える
綿野恵太 「ウンコ味のカレーか、カレー味のウンコか?」という究極の選択には「カレー味のカレー」を求めるべきである。
・「ファクトフルネス」の薄っぺらさ。
・パンデミックにおいて「他者の自己決定への恐怖・不安」がパニックを引き起こす。そして、不安と恐怖にかられた人々は「強大で絶対的な存在たる国家」=「リヴァイアサン」にみずから従属し、他者の行動を強制しようとする。
・みずからの「自由」と引き換えに「安全」を求めて監視・管理社会化を進めるのと同じ構図である。他者への「自由」に不安を抱きながらも、私たち自身がその運営を担い、「異質な他者」と共存を模索する「自由」な社会か、もしくは、国家権力やアーキテクチャによって「異質な他者」を排除することで、「安全」を保障してもらう代わりに従属するだけの「幸福」な社会か、という選択である。(大屋雄裕『自由か、さもなくば幸福か』筑摩書房)
・コロナ=他者への恐怖=分断を加速
・政府は2019年台風19号のときと同じく「消極的な無責任」
・災害に便乗して新自由主義化を進める「災害資本主義」
工藤丈輝 流感・舞踏
・ロックダウン=観念のみが肥大化する
・演劇=空気を共有すること
小泉義之 自然状態の純粋暴力における法と正義
・アガンベンの躓き
・生存という「共通善」を最終目的とする→「福祉」「保健」「衛生」「軍事」
・法と最高目的である共通善の関係 非常事態には共通善が優先されて、法が破られる
・小泉からすると、アガンベンは卑屈に映る
江川隆男 自由意志なき〈自由への道〉 行動変容から欲望変質へ
石川義正 「人間に固有の原理としての愚劣」
・「ビュリダンの驢馬」
・「イサクの燔祭」
・ある行動は、「善い」と言われたり、「悪い」と言わ れたりする。つまり行動の領域には、道徳が導入される。かつて中世の農村共同体は集団精神を体現し、共同で行われる農作業――成員たちの暮らしにかかわる食料生産――に背反する個々人の勝手な行動を、共同体の掟によって規制した。近代において、こうした「精神」の操縦を担おうと欲している主要なアクターは、「国家」の統治者たち、「資本」の流れの制御者たち、「国民」たちである。場合に よってこの精神は、国家精神、国民精神、資本主義の精神ともなりうる。これらが結合するとき、人命が大事だと言われつつ、何より守るべきは人命ではなく、資本とその増殖のための環境であり、それに付随する国家とその構造の維持のための環境であり、そのための人命である(一定数の人口が統計的に維持されなければならない)。だが、この巨大な構造をある角度から眺めると、この構造こそが、 個々人の「暮らし(生)」を保証しているものであるかのように見えるにちがいない。つまり既存の経済の維持が、そこに参加する者たちにかかわる運命共同体を守ることであるかのような外観をまとうのである。この角度、この外観は反革命性である。国家はその維持のために、アポロンというより、リヴァイアサンの影を呼び寄せることもあるだろう。その右手には剣(暴力)が、左手には資本(信仰)が握られている。
・「中心」が守られ、「周辺」は切り捨てられる。
・ブローデル『物質文明・経済・資本主義』
・パレスチナ ガザ 世界一大きな監獄 軍事的な住民監視
・テレワーク 居室を職場化(フーコーにならうなら職場=監獄化) 資本主義のひとつの達成
・企業は、「私的」な環境のインフラにタダ乗りするのであり、私的空間と想定されていた「家」や「部屋」は、その内部に到るまで資本に実質的に包摂されることになる。
・個々人の全生活は、たえず監視され、適格に資本主義経済に組み込まれているかどうかチェックされ、組み込み漏れのある場合は、個人の行動に対して指導が行く
・不安・非安全の利用
・一体性を讃美し、違反者には社会的懲罰をくわえる。憲法秩序が停止され、警察および軍隊が動員される。緊急事態の名のもとに、行政が立法を担い、三権分立を侵す専制的な傾向が強まる。良心の疚しさに訴えかけつつ、国家が組織的暴力部隊を街に展開し、メディアがそれを拡散し、道徳的包囲網を広げつつ強化していく。感染症は、戦争と並んで、規律を強化する最短回路のひとつである。
・言説のコントロール。譬喩 換喩 差別。
・マクロンの戦争演説。「総動員体制」。ジレ・ジョーヌ潰し。
・ブレッソン『抵抗 死刑囚の手記より』(1956 フランス映画)冷静に観察せよ
白石嘉治×栗原康 カタストロフを思考せよ
・大杉「生の拡充」死んでもやる
・台湾や韓国はテクノロジーを駆使してたえずオンライン状態。韓国では感染者が出たら日本の地震警報みたいにスマホがビービー鳴って、どこで感染者が出たのか、個人情報が開示され、誰と交流して、どこを歩いたのかがネット上で公開される。
・平時の不法行為が非常事態の名のもとに正当化される。9.11後の対テロ戦争と同じです。人権など知ったことか、いまは有事である、安全のためには迅速さがだいじ。
・『幸福な監視国家中国』
・徳島県美浜町 井若和久「事前復興」文明の根本的なデザイン
・ナウシカは文明そのものを焼き尽くし、その外側を思考しはじめる。燃やせ、燃やせ、燃やせ。
・モリス『ユートピアだより』、トリュフォー『華氏451』フィクションの想像力
・徴候の知性 直感
3/8読了
◆要約:ウイルスの歴史的、科学的解説と統治功利主義、監視社会の話。アガンベンはコロナによるショック・ドクトリンや一層の監視社会化を批判したが、コロナの健康被害を甘く見すぎていると逆にリベラル系学者から批判された。
◆感想:読んでみたい人が多くてお得だと思ったので読んでみた。木澤佐登志氏の統治功利主義の話が一番面白かった。「自由か、さもなくば幸福か?」。アーキテクチャの権力、システムの支配が深刻化していくなかで、どうやって人間性が反撃できるのか。「再魔術化」のキーワードとともに気になる。