- はじめに
- 第一章 「ぴえん系女子」の誕生
- 第二章 「トー横キッズ」の闇
- 第三章 歌舞伎町「自殺」カルチャー
- 第四章 「推し活」と「男性性」の消費
- 第五章 ホストに狂う「ぴえん」たち
- 第六章 「まなざし」と「SNS洗脳」
- 特別対談 「九条の大罪」真鍋昌平×「ぴえん系の病」佐々木チワワ 歌舞伎町の住人たちの「病み(闇)」と「承認(光)」
- おわりに
はじめに
・メンズコンカフェの推し
第一章 「ぴえん系女子」の誕生
歌舞伎町を呑み込む「ぴえん」
絵文字が後押しした「ぴえん顔」の定着
・「ぴえーーーーん」漫画の泣き声
・「PleadingFace」絵文字
JC・JK流行語大賞を獲る「ぴえん」
・2016-17「卍(まんじ)」=やばい 「エモい」
・メンヘラ系女子
量産型・地雷系ファッションとぴえん系女子
・病み系ファッション、メイク
・ぴえん系は特にジャニーズやメンズ地下アイドルなどの「推し」を見にいくときの現場ファッション
・地雷系:マイメロディやシナモンロールなどサンリオ系キャラクターのポーチ、ぬいぐるみなどを身に着ける
・ファッションブランド「夢展望」( 大阪・池田市)
・ティーン向けファッション誌『LARME』の2020年秋号の9ページにわたる「量産&地雷in新宿歌舞伎町」という特集
・「歌舞伎町のランドセル」と呼ばれるMCMリュック
・「いい子を演じる偽りの自分」と「本当の自分」
漫画の影響で「ぴえん系」が大量発生
・2019年からの連載 サイコミ『明日、私は誰かのカノジョ』の影響が大きい 「ゆあてゃ」というキャラクター
ぴえんファッションで救われる女の子たち
・地方出身 アイドル&アニメ好き
・同じような格好で安心する 浮かない
・渋谷のガングロギャルブームとの相似形
神格化される「ホスト殺人未遂事件」
・2019年5月 マンションのエントランス 血まみれ状態で煙草
・「どうしたら私以外を見なくなるのか、殺せばいいと思いました。」
・2020年 片山慎三監督『そこにいた男』クラウドファンディングで映画化
・高岡容疑者のインスタアカウントはフォロワー数がいまだ増え続け現在8万5000人を超える
第二章 「トー横キッズ」の闇
自撮り界隈の待ち合わせ場所だった、トー横
・「新宿TOHOビル」東側の路地
・2015年コマ劇場→ゴジラビル
・自撮りをSNSで発信 ハッシュタグ 自撮り界隈のオフラインでの交流待ち合わせ場所
・男性バーテンダーやスカウト
・ホストクラブに入れない未成年→キッズ 24時開店のバーが開店するまでの時間つぶし 路上飲み
ドンペンコーデが歌舞伎町でブームに
・2020年頃から組織化 #トー横界隈と繋がりたい
・大阪・難波ではトー横に対抗してグリ下(グリコの下のスペース)界隈、名古屋・栄ではドン横界隈。
・フォロワー数千人のインフルエンサーも
レイが抱えている孤独
・コンカフェで働いて、終わったらトー横 1泊6000円のホテルで生活
・位置情報共有アプリ「ゼンリー」
・土日になると中学生もたくさん来る みんな悩みを抱えていて、共感できて楽しい
・風邪薬を1-2瓶 OD パキる
・2021年9月緩かった警察が一斉摘発 10人前後が補導
トー横で日銭をかき集めるマリ
・中年男性から交通費を1000円貰う 漫画喫茶で生活
「推し」てもらうために売春を斡旋する
・援デリを組織 ネカフェの個室
トー横から移動したキッズたち
・2018「トー横」の誕生 2019「TOHOキッズ」の呼び名が定着 2020「トー横の組織化」 2021「トー横キッズの犯罪が続発」 2021夏「トー横からの移動」
・→歌舞伎町シネシティ広場 ナイトクラブ「新宿WARP」、ライブハウス「BLAZE」 ホームレス 外国人娼婦
第三章 歌舞伎町「自殺」カルチャー
・若者の自殺の増加
自殺の名所になっている雑居ビル
・ホストクラブが沢山入居するビル
屋上で「一緒に死のう」と誘われた
・お金を注ぎ込めば注ぎ込むほど、ホストに対する期待が大きくなる 諦められなくなる
歌舞伎町における価値とは
・数字で如実に評価される厳しい世界
第四章 「推し活」と「男性性」の消費
推し文化と誇示的消費
・身を犠牲にして稼いだお金を推しに使うことに意味がある 宗教のよう
・推し AKB48が起源 自分が推しにどれだけ費やしたかを競う
・オタ活→推し活
「推し」の対象は一般人にまで及ぶ
・推しの認知
・「声まね」界隈 「浪人」界隈
「推し」に自己犠牲して貢ぐほど、エモい
・ホストクラブを筆頭に、ガールズバーの逆であるボーイズバー、飲み/飲ませ放題のミックスバー、女性用風俗、レンタル彼氏、ヒモやママ活男子
・男性版コンカフェ、メンズキャバクラ
★歌舞伎町という街全体が、ホストクラブ化している
「推し活」ブームの後押しを受けるコンカフェの功罪
・男性地下アイドル
・チェキ1枚1100円で1ポイント 1500ポイントでディズニーランド(165万かかる)
・〇ポイント特典
30P 2ショット動画撮影
50P 私物サイン
100P 推しからの手紙
250P 推しからのささやかなプレゼント
500P 推しと貸し切りカラオケデート
1000P シークレット
〇チェキ&ボトル限定特典
100P 手紙
250P カフェ特性非売品
500P プリクラ同行
1000P 映画、ドライブ、ヘリコプター、リムジン、プラネタリウム
1500P ディズニーランド
2000P シークレット
・ホストクラブの入口になっている
推される側の苦悩と消耗
・中村香住「メイドカフェの『メイド』が悩む、時間外労働としての『SNS労働』」
・個人が商品として扱われやすい接客業全般で「アイドル化」と「SNS上でのアイデンティティの労働の義務化」が起きている
・近い距離感のリスク→顧客への対応やLINEのやり取りがネット上に晒されたり、ネットストーカー傾向のある厄介な客の管理まで仕事のひとつになる
・2018年 石田衣良『娼年』が松坂桃李主演で映画化→女風元年
・若いイケメンの「セラピスト」
・講習料と登録料として僅かな貯金から7万円を支払いセラピストに登録
・店は何も助けてくれない。なのに、料金の半分以上店の取り分。
・「裏引き」→客に特別感が芽生えて、わがままになる。拒否するとメンヘラになる
・ガチ恋
・ホス狂い→ママ活へ移行するケース
第五章 ホストに狂う「ぴえん」たち
建前上は「浄化」されたホストクラブ
・この令和3年、空前のブーム
・18歳未満はコンカフェへ、18歳以上がホスト
・著者も18から通う 色恋営業に魅了され 結局 病んで 泣いて
・1965年、東京駅八重洲口に日本最初のホストクラブ「ナイト東京」
・2000年代から2010年代前半にかけてホストブーム ドキュメンタリー番組『実録!ホストの花道』 ドラマ『私のホストちゃん』
・2006年『TheGreatHappinessSpace:TaleofanOsakaLoveThief』(邦題『大阪恋物語』)
・基本は19時から25時までと朝の6時から11時までの2部制
・「年確」の徹底
ホストから「男性らしさ」は減っているのか
・2009年『「男らしさ」の快楽ポピュラー文化からみたその実態』(勁草書房) 木島由晶
・酒を飲まなくても売り上げを上げる「ノンアルホスト」や「未成年ホスト」
ホストも誇示的消費を活用して稼ぐ
・2021年12月現在、ホストクラブは歌舞伎町に約260店舗、約5000人ほどのホスト
・越前リョーマ『成功したいなら誰かの「推し」になれ 自分の最高値をたたき出すナンバー1ホスト思考』(光文社 2021年)
・「アイドル営業」つまり「恋される」より「推される」
・コミュニケーションに飢えている客
新たな営業スタイル「鬼枕」
・「しかし現在では、枕はSNSで興味をもってくれた女性に対して、「俺を指名すれば絶対に枕できるよ!」といった営業を行い、最近では初回で来ただけのまだ指名すらもらっていない相手と即セックスするホストが増加。このようにたくさんの客に枕をするホストを「鬼枕」と呼ぶに至る。」
・「そんな自分の性を安売りするホストたちを古くからホストクラブに出入りする女性客は蔑むが、ぴえん系の女性客はそんな彼らを「鬼枕しか勝たん~!」と崇拝する。」
・「ホストになる前の自分だったら、絶対手を出さない女性でも今は抱くようになりました。正直、キツいときもあるけど、新人時代はとにかくがむしゃらに抱きまくる(笑)。ある見た目がキツい女の子を腹くくって抱いたときに、『今までどんなホストクラブでも相手にしてくれなかった。初めて女の子扱いされた』と泣かれたんです。結果、彼女は一時太客になりました。」
金を落とさせるためにプライドをあおる巧妙なシステム
・ホストにハマるとホストクラブを中心に世界が回る その虚構を維持するために不要な人間関係を断ち切っていく。
・自分だけは一緒にいられるような錯覚を、ホストは言葉巧みに与えてくれる。「未来の関係性」に対する期待感を金銭に換える。
・「初回料金」60分1000~3000円程度で焼酎が飲み放題。5~10分おきに在籍するキャストが入れ代わり立ち代わりにやってきて会話をする。集客目的なので、ホストクラブ側からしたら赤字覚悟のシステム。
・「初回荒らし」=「無課金ユーザー」
・2回目の来店では指名する「担当ホスト」を決めると、座るだけで最低1万円、軽く飲んだら3万円、使うお金は無限大のホストの世界
・「ラストソング」制度 対抗心を煽る
・シャンパンなどお酒代金のインフレ 最高70万→350万 20年で5倍ほど
・10万円以上のシャンパンから「シャンパンコール」 マイクパフォーマンス 「痛マイク」
・「飾りボトル」1度オーダーすれば、酒が空になっても、来店するたびに卓に並べられる = 使った金額の誇示
・映え=現実世界よりも、SNS上で「どう見えるか」
・オリシャン、ロジャー=ホストへのバック
・配信ライブでの投げアイテムのよう
ぴえん系女子を使った記録塗り替えゲーム
・売上と指名本数はホストのバックヤードに常に張り出され、ホストの競争心を煽る
・「俺はイベント月じゃなければ、一番使うお客様で200万~250万円くらい。そのほか100万以上使うお客様が4人。残りの数十万使うお客様で1000万の数字をあげているんだけど。イベントとかで500万ならまだしも、常時その金額を使い続けられる子が増えてきて怖いという感覚はある。特にぴえん系女子には無理する子が多い。1000万とか一人の子に『使うよ!』って言われたら怖いもん。断っちゃうかも」
女性もホストも陥る売り掛け地獄
・給料日後である翌月の2~5日に、使った金額を支払う
・店に直接 売り掛けを払いに行ったのにまた売り掛けをこさえて帰る
・「売り掛けがないと働けない」 「稼いで飲む」のではなく、「飲んでから稼ぐ」というスタイル
・通称「青伝」
・もしもお客が売り掛けを支払えず逃げてしまった場合、ホストが自腹で店舗に支払うことになる。→店に借金
・エゴすべてを吸い取るホストクラブという存在 楽しむ場というより「戦場」
第六章 「まなざし」と「SNS洗脳」
外見も、行動も、性格も、すべてが「資本」たりうる
・ルッキズムが巨大なマーケットに 人間の顔、身体が資本主義のターゲットにされている
日々受けるのは「記号に当てはめられたコンテンツ」
・まだ社会を知らない若年層が弾丸理論、皮下注射理論でメディア(特にネット)の影響を強く受けてしまう
男も「美しさ」を求められる時代へ
・SNSによって強化された外見至上主義
行きすぎた外見至上主義と残酷な数字による現実
・インスタ、TikTokの影響
思考停止するぴえんたち
特別対談 「九条の大罪」真鍋昌平×「ぴえん系の病」佐々木チワワ 歌舞伎町の住人たちの「病み(闇)」と「承認(光)」
・ネット配信者の影響
・病んだふりをしていると本当に病んでしまう
おわりに
・自己肯定感 こじらせ
2/15読了
◆要約:ぴえん世代=SNS世代。トー横キッズやホス狂いなど、歌舞伎町に集まる人々の解説。
◆感想:とても面白かった。知らないことばかりで勉強になる。
メンズコンカフェや女風、メンチカなど、こんなことになってるのかと驚いた。
自分はかつてガールズバーにハマってお金を溶かしていたとき、ホス狂いの掲示板やtwitterを偶然見て、それで冷静になってやめられたという経験がある。
なので、ホス狂いには恩義があるし、気持ちもよくわかるつもり。
行かない、やらないに越したことはないんだけど、一度は経験してみたい気持ちはよくわかる。
歌舞伎町はトー横界隈という言葉がキャッチーで、本書の中にも出てきた90年代の渋谷ガングロギャルブーム以来久しぶりに、場所性のある独特なストリート文化が出てきたと関心を持っていた。
たしかに病んではいるだろうが、不思議な活気がある。
それが、最近の事件の多発などで、ここも浄化されてしまうとしたら残念だ。
大森靖子や神聖かまってちゃんの影響なども気になる。
歌舞伎町が病んでいるとして、「日本に病んでいない場所なんてどこかあるんですか?」と若い子に聞かれたら、答えられない。
『九条の大罪』も読んでみたいと思った。
内容の感想とは別に、この本はポイント還元セールがあったので、初めてKindleで読んでみた。感想は、読めないことはないけど読みにくい。
紙のほうが自分にあっているとわかった。