マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【講演メモ】第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」実践編―― 松本哉とアーティスティック・ディレクターが語る「日々を生きるためのアクション」!

@旧第一銀行横浜支店会場 1階
登壇者:松本哉(リサイクルショップ「素人の乱5号店」店長)
リウ・ディン[劉鼎](第8回横浜トリエンナーレアーティスティック・ディレクター)
キャロル・インホワ・ルー[盧迎華](同上)
聞き手: 蔵屋美香横浜トリエンナーレ組織委員会総合ディレクター/横浜美術館館長)
通訳:池田リリィ茜藍

魯迅『野草』 五・四運動(1915年の日本による対華21カ条要求の内容不満により1919年に発生した抗日、反帝国主義を掲げる学生運動、大衆運動)へのバックラッシュ(反動、揺り戻し)に絶望した魯迅が自らを徹底的に内省した作品。
・「絶望は虚妄だ、希望がそうであるように」
・「魯迅の想像の中では、野草は過去の生と死と衰退の産物です。その生は死を基盤としていますが、同時に常に死の脅威に直面することが伴っています。それゆえ、野草は短くも、粘り強い生命力の象徴なのです。いつも根絶やしにされ、死に至る運命の象徴であると同時に、死という運命に対する、ある種の絶え間ない闘争と勝利の象徴でもあります。野草は自然そのものの力であり、自然と生命による自己主張であり、自己肯定です。それは、確立された境界線、意味、秩序、構造、計画を無視します。秩序だった生活の規則を、不意に、唐突に遮ります。野草は無秩序に見えることで、不確定性のエネルギー、スピード、リズムを示します。その意味で、野草は私たちの自画像であり、自身の期待に応えることであり、人生哲学でもあるのです。」
・「グローバルな新自由主義経済を背景に、1990年代以降、アート産業という概念と実践は、ますます前面に押し出されてきました。批判的思考は資本と国家権力によって弱体化され続ける一方で、アートの商業的および政治的な意図を手段化することがますます進んでいきました。このような状況の中で、ビエンナーレや美術館などのアートのインフラは、都市開発や都市マーケティングを促進する文化産業の一環として急速に発展しました。」アートの非政治化。
厨川白村 『象牙の塔を出でて』『苦悶の象徴』。朝日新聞に連載した『近代の恋愛観』は、いわゆる恋愛至上主義を鼓吹し、ベストセラーとなって、当時の知識層の青年に大きな影響を与えた。のち中国語訳され、第一次大戦後の中国青年にも大きな影響を与えている。魯迅が『苦悶の象徴』を翻訳。関東大震災時、鎌倉の別荘で被災し津波に呑み込まれ死亡。
・「日々を生きるための手引集」10冊。柄谷行人、汪暉、デヴィッド・グレーバー、ジュディス・バトラー、ティモシー・モートン松本哉、マッケンジー・ウォーク、斎藤幸平など
・シチュアシオニスム 状況主義
松本哉『世界マヌケ反乱の手引書〜ふざけた場所の作り方』(筑摩書房、2016年)
・文化の闘争、秩序の闘争、思想の闘争
・個人の実践は国境を超えられる
・普通の人と普通の人の友情
・普通の人が行動、態度を変えることが世界を変える。ヒーロー、ヒロインじゃない。
・小さなお店をやること
・海外で飲み歩いているだけ
・お金もないのに交流する方法 めちゃくちゃ安いゲストハウス
・お金だけじゃない世界、お金がなくても繋がる世界
・寝そべり族 2021年インターネット掲示板百度貼吧」の書き込み ディオゲネス 
・一年に1~2か月働き、貯金から月60米ドルを下ろして生活している 食事は1日2食のみ 哲学書を読んで過ごし、いくつかの雑用をこなし、毎日のように家の内や外で横たわり、怠惰な猫や犬のようになっている
・寝そべり主義者宣言 共産党宣言毛沢東語録への当てこすり 建国の理想と現実のギャップ 現実の中国も超格差社会
・同時期にアメリカ合衆国(および西欧世界)で始まった「大辞職(FIRE ムーブメント)」と比較されている
・革命後の世界のイメージを今やってしまう
・「単に主張を叫ぶだけのデモよりも自分たちがやりたいことを実際にやって見せる行為のほうが「デモンストレーション」の語義に適っているとしており、その具体例が路上ライブや鍋集会である。松本は、規制や抑圧が少なく街頭で自由に騒いだり酒を飲んだりできるような世の中を理想としており、路上ライブなどは革命後の世界を実際に作って見せる行為だという。」
・相手を敵認定しない。自分を大した事ないと思えば、相手も同じ。
・例えばバーのお客さん。中間の人を追い出していたらよくない。
・利口=効率、合理性。資本主義に必ず繋がってしまう。間抜け=非合理、逆に損、おっちょこちょい。「でもやるんだよ」の精神。
・規範、秩序=完璧なものはない。いつの時代も不完全さを含んでいる。その余白、弾力性、リダンダンシー
・中国の地下出版事情。
参考
www.art-it.asia

◆要約:デモ=デモンストレーション。革命後のイメージを実際にやってみせる行為。それが松本さんにとっては路上で鍋をすること。
大文字の革命ではなくて、個人の生活を変えること。
間抜け=合理性の呪縛から抜け出すこと。
◆感想:面白かった。
厨川白村という人に興味を持った。読んでみたい。
松本さんの佇まいがとても良い。超飄々としていて穏やか。
寝そべり族の思想が面白い。共感するが、月1万円では日本では暮らせそうにないのでどうするか。
政治闘争というより、文化秩序、思想、規範の闘争をすること。
松本哉さんや栗原康さんらの思想に触れると、固く内面化されている規範が少し緩む感じがして心地が良い。