マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

作品#05「コスモス 社会学用語図鑑トレカ」62枚(3) #21-#30

リンク

目次

#21 Erich Seligmann Fromm エーリヒ・フロム

権威主義的パーソナリティー

近代(資本主義社会)になり、人は伝統的な枠組みから解放され、自由を手にしました。けれどもその結果、様々な絆から切り離され、自分の生き方を自分1人で決めなくてはならなくなりました。こうした不安や孤独に耐え切れなくなると、人は自分を縛る権威を進んで受け入れてしまいます。フロムはこれを権威主義的パーソナリティと呼びました。
フロムは、ナチズム期のドイツにこの権威主義的パーソナリティという社会的性格を見いだしました。ドイツ国民のナチズムへの傾倒は、人々が自由であったからこそ生まれた現象だと彼は考えたのです。
 

近代から現代へ

#22 Alfred Schütz アルフレッド・シュッツ

現象学的社会学

目の前にリンゴがあれば、「リンゴがある」と私たちは考えます。けれども、「リンゴがある」ことを事実として確信できる根拠は、自分の意識の中に「リ ンゴがある」から以外にはありません。自分の意識の外の、客観的な世界に本当に「リンゴがある」のかどうかはわからないのです。
つまり世界は、意識の中だけに存在しているといえます。このような視点から、現実の世界がどのように出来上がっていくのかを考えるのが現象学です。
社会は、私たちの意識と無関係に客観的に存在しているのではないとシュッツは言います。そうではなく、私たちの意識が共有する認識が「現実」を作っていくから、社会が存在すると捉えます。こうした考えを現象学的社会学と呼びます。
シュッツの理論は、ガーフィンケルなどのエスノメソドロジーに受継がれ、日常生活の相互行為、とりわけ会話を分析する独特な方法が生み出されました。

#23 Herbert George Blumer ハーバート・ジョージ・ブルーマー

ミクロ社会学

社会全体の構造を客観的に捉える社会システム論は、確かに科学的です。けれども、その社会を構成している個人の主観を無視することはできないと考えるのが意味学派です。私たち人間は動物とは違い、様々な対象に意味づけをし(対象を解釈し)、その意味に基づいた相互行為をします。意味学派は、そうした相互行為の意味を理解することで、社会を捉えようとします。こうした社会学はミクロ社会学とも呼ばれます。

シンボリック相互作用論

私たちは、様々な物事に意味づけをしながら行動しています。物事の意味はあらかじめ固定的に決まっているわけではなく、他者との相互行為の中で導き出されます。そしてその意味は絶えず解釈し直され、修正されます。
ブルーマーのシンボリック相互作用論は、社会を確固たる特定の価値によって成立しているものとしては捉えません。人間の主体的な解釈によって物事の意味がそのつど修正されていくダイナミックな過程として社会をイメージします。
パーソンズの構造機能主義は、社会は変化しない特定の構造(AGIL図式)を持ち、それを維持するために、人々の行動があるとしました。これに対してシンボリック相互作用論は、人々が様々な対象に意味づけをし、その意味に基づいた行動をすることで社会が成り立つと考えます。社会が人間の行動を規定するのではなく、人間が主体的に社会を成立、そして変化させているというわけです。

#24 Paul Felix Lazarsfeld ポール・ラザースフェルド

オピニオン・リーダー
コミュニケーションの二段階の流れモデル

メディアからの情報はオピニオン・リーダーが噛み砕いてみんなに伝える

#25 Talcott Parsons タルコット・パーソンズ

AGIL図式

国家のような大きな社会から家族のような小さな社会まで、どんな社会でも持続していくためには、必ず、A=適応(Adaptation)、G=目標達成(Goal Attainment)、I=統合(Integration)、L=潜在性(Latency)の4つの条件が機能していなくてはならないとパーソンズは考えました。これをAGIL図式といいます。
Adaptation(適応)=内部の集団を生存させるために外部の世界から資源を調達し、外部の世界に適応させていく機能。つまり経済にあたる。
Goal Attainment(目標達成)=集団の目標達成のために人や富を動かす機能。 つまり政治にあたる。
Integration(統合)=人々を統合して勝手な行動を食い止める機能。つまり法や規範にあたる。
Latency(潜在性)=A・G・Iを可能にさせる潜在的な動機づけとなる機能。また、社会の緊張を和らげる機能。つまり教育と文化にあたる。
この考えによれば、人々は無意識のうちにA、G、I、Lの4機能のうちのいずれかとなって社会を支えています。持続可能な社会にはAGIL図式という確固たる構造が存在し、人間は皆、その構造を維持する機能として貢献しているというわけです。
持続可能な社会には、AGIL図式という構造が存在すると考えることで、パーソンズは、社会全体を説明できる一般理論を構築しようとしました(構造-機能主義)。その後、彼の理論(社会システム論)は、マートンルーマンらへと引き継がれていきます。

構造-機能主義

パーソンズは、社会現象のすべてをつらぬく一般理論(グランドセオリー)を構築しようとしました。そして考え出された図式がAGIL図式です。あらゆる社会現象や人間同士の相互行為は、この図式を維持するために存在しているというわけです。
このように、社会には確固たる(変化しない)構造(パーソンズの場合はAGIL図式)が存在し、すべての社会現象や相互行為は、この構造を維持するために機能していると考えることを機能主義といいます。そして特にパーソ ンズの機能主義を強調する場合は構造-機能主義といいます。

マクロ社会学

社会を生命のような構造をしたシステム(ひとまとまり)と捉えることを社会システム論といいます。そして胃が消化という機能によって生命システムを存続させているように、あらゆる人間同士の相互行為が機能して、社会システムを存続させていると考えることを機能主義といいます。機能主義のように、社会全体をシステムとして捉え、その構造が人間の行為にどのような影響を及ぼしているかを調べる社会学はマクロ社会学とも呼ばれます。

#26 David Riesman デイヴィッド・リースマン

他人指向型

リースマンは社会を構成する人々の性格を3つの類型に分けました。共同体の伝統に従う①伝統指向型、共同体から離れて自分自身の良心に従って行動する②内部指向型、そして、他者からどう思われているのかに敏感で、他者の好みや期待に同調しようとする③他人指向型です。
①伝統指向型→人口が一定水準以下だった伝統的な共同体社会(中世以前)において、人々は家族や血族などの価値観を行動指針にしていた
②内部指向型→人口上昇が過渡的で人々の移動が激しい初期資本主義社会(資本主義初期~19世紀)において、人々の行動指針は伝統ではなく、自身の内面のものさしに頼っていた
③他人指向型→近代的な大都市のように資本主義が成熟した社会において、人々は同時代の人々のまなざしや評価を行動指針にする
現代人は、様々なしがらみから解放されたと同時に、孤独感を強めています。そうした孤独感を和らげるため、人々は他者に同調したり、マスメディアに方向性を求める他人指向型になっていきます。現代は、他人指向型の人間が、経済、政治、文化に大きな影響力を持つ大衆社会だといえます。



#27 Robert King Merton ロバート・キング・マートン

順機能/逆機能

社会の中のいろいろな現象や人々の行動は、社会というシステムを存続させる機能(働き)であるとパーソンズは考えました。これを機能主義といいます。 同じ機能主義の立場に立つマートンは、機能には社会にとって役に立つ順機能と、社会に対して負の効果を生んでしまう逆機能があることを指摘しました。

顕在的機能/潜在的機能

人が何か行為をするとき、本人の想定通りの結果があらわれた場合、その作用のことを顕在的機能といいます。逆に想定していなかった結果があらわれた場合、これを潜在的機能といいます。マートンは逆機能とともに潜在的機能という視点を用いて、社会事象の背後に潜むものを考察しようとしました。

準拠集団/所属集団

社会学で最も重要な概念の1つが準拠集団です。準拠集団とは自分が何かを決めるとき、自分に強い影響を与える人々のことをいいます。準拠集団は、具体的な集団とは限らず、ある階層全般などの場合もあり、また自分が直接所属していない集団ということもあります。たとえば、友人集団、尊敬する有名人、ただ単に「富裕層」などがそれにあたります。
自分が所属する準拠集団の価値観によって自分の価値観が左右される。ただし現代人は複数の準拠集団に属しているので、ある選択についてどの集団を準拠集団とするのかは、時と場合によって異なる。
たとえば、自分の頭の中にある準拠集団が自分よりすぐれている場合は、劣等感が生まれたり、彼らに追いつくための向上心が芽生えるかもしれません。反対に、準拠集団が自分より劣っている場合は、優越感が生まれたり、向上心が停滞することもあり得ます。
準拠集団に対し、実際に所属している集団を所属集団という。

予言の自己成就

人々が予言に影響されて行動するから。

中範囲の理論

一般理論(グランドセオリー)ではなく、かといって個々の現象でもなく、その中間の理論を考えましょうという考え。それが役に立つ。

#28 Herbert Marshall McLuhan マーシャル・マクルーハン

メディアはメッセージ

内容だけではなくメディアそのものがメッセージ性をもっている。たとえばテレビ→インターネットで人々の生活は変わった。
マクルーハンは、新しいメディアは、人々の思考や行動を根本的に変えると考えました。ということは、新しいメディアの登場が新しい社会を誕生させるということになります。

人間の拡張

たとえば、望遠鏡・顕微鏡などのメディアは目の拡張、車輪ならば足の拡張というように、人間が作り出したテクノロジー全般をメディアと捉え、生身の身体を拡張させるものとマクルーハンは考えました。メディアを身体と捉えると、新たに生み出されるテクノロジーが、人間の身体感覚に変化をもたらすことがわかります。
一人ひとりの身体感覚が変化すれば、自動的に社会全体も変化することになります。マクルーハンにとって人類の歴史とは、メディアの進化によって人間の身体が拡張し、感覚が変化していく過程にほかなりません。

グローバル・ヴィレッジ

マクルーハンによれば、電子的なマスメディア(ラジオ、テレビ等にはじまる)によって、それまで人々がコミュニケーションをおこなう障壁になっていた時間と空間の限界が取り払われ、地球規模で対話し、生活できるようになった。この意味で、電子的マスメディアによって地球全土がひとつの村に変貌した。
今日ではグローバル・ヴィレッジ(地球村)といえば主に、インターネットとWorld Wide Webを指す隠喩である。インターネットによって世界中の利用者が相互に連絡を取り合うことが可能になり、コミュニケーションがグローバル化した。同様に、ウェブを介して接続されたコンピュータは、人々のウェブサイトを相互に結びつける。これによって文化の面でも、社会学的な意味で新しい構造が形成されることになる。

#29 Philippe Ariès フィリップ・アリエス

〈子供〉の誕生

「子ども」は、いつの時代にも存在していたわけではありません。<子供>という概念は17世紀頃に生まれたとアリエスは言います。近代的な学校制度の整備を転機に「ある程度の年齢までは保護し育てるもの」という発想が生まれ、「大人」とは異なる存在として<子供>が登場したというのです。それまでは、「小さな大人」しか存在しませんでした。
その後、<子供>と親を中心とした単位で考える近代的な家族観が生まれます。<子供>は大人よりも、安全や教育、愛情などが保証されやすくなりましたが、一方で<子供>や母親の広い社交関係は薄れました。
私たちが当り前だと考えている大人/子どもという区別に基づいた家族観は、ごく近代の産物です。遺伝子操作、人工授精、代理出産などが可能となった今、家族観はこの先どう変化していくのか知る由もありません。

#30 Daniel Joseph Boorstin ダニエル・J・ブーアスティン

疑似イベント

マスメディアが事実に似せて製造する出来事や、事実の一部をあえて大々的に切り取ってみせる視点のことをブーアスティンは疑似イベントと呼びました。マスメディアが映すものは往々にして「事実」ではありません。
ブーアスティンは、疑似イベントの仕掛け人が、一方的にこうした視点(感動物語など)を製造していると考えたわけではありません。人々は世界に対して、ドラマ ティックな出来事を期待するものです。疑似イベントは、人々のそうした期待に沿って提供され続けます。