マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【読書メモ】橋爪大三郎 x 大澤真幸『アメリカ』(河出新書 2018年)

目次

まえがき

Ⅰ アメリカとはそもそもどんな国か

1.キリスト教から考える

・教会のあり方を尊重した人びとを「カトリック」といい、聖書にもとづいて教会に抗議の声を上げた人びとを「プロテスタント」という。
・政治的権力と宗教的権力が西ヨーロッパでは一体化していない。その著しい二元性が特徴。
・ルター宗教改革 ルターに飽き足らない「改革派」→ツヴィングリ、カルヴァン「予定説」
ピューリタン=イギリスのカルヴァン派

2.ピルグリム・ファーザーズの神話

ピルグリム=分離派
・メイフラワー号 ヴァージニアに行くはずがコースを外れマサチューセッツ州プリマスに上陸
・上陸前に「メイフラワー契約」(1620)

3.教会と政府の関係はどうなっているか

・非分離派vs分離派
・カントロヴィチ『王の二つの身体』 自然的身体と政治的身体 政治神学

4.教会にもいろいろある

・長老派(プレスビテリアン)-ピラミッド型/会衆派(コングリゲーショナル)ー末端の教会の自治を重視 →民主主義の土台になる
・ユニテリアン=三位一体(父と子と聖霊)を否定し、神の唯一性を説く
・メソジスト=ジョン・ウェスレー 国教会の堕落した現状を嘆く メソッド=生活の規律 早起き・勤勉・日課 ウェスレー・アルミニウス主義(修正主義カルヴィニスト)
・→救世軍(サルベーション・アーミー)専従者が軍隊的 「社会鍋」
・→ホーリネス、ペンタコステル(霊のはたらきを重視)
・バプテスト(浸礼)=ドイツの再洗礼派 浸礼
・クエーカー(震える人)=「内なる光(インナー・ライト)」四角く並べた椅子に1時間座る 
・ペンシルヴェニア=宗教的寛容を掲げる 他にもアーミッシュ、メノナイト(メノー派)など
・ほんとうにキリスト教を信じている人たち
岩井克人 論文でマルクスを引用したら脱落したエピソード マルクスはあからさまな無神論者だから
政教分離というとき 日本→宗教の全般的な相対化 欧米→政から教が分離することで教がより純粋になるという論理構造
・クエーカー、エホバの証人、セブンスデー・アドベンチスト(安息日再臨派)=徹底して非暴力=良心的兵役拒否
・セブンスデー・アドベンチスト=『ハクソー・リッジ』 ベジタリアンケロッグ
・信仰=趣味ではなく真理が争われている 従って、信仰の自由には二律背反に近いものすごい緊張がある
・世俗社会を支配するものは真理ではなくて法律になる。法律が人と人を隔て、紛争や殺し合いを防いでいる
・日本人がわかりにくいところ 信仰を選んでいるのではない。所与のもの

5.大覚醒運動とは何だったのか

・植民地があちこちにでき、それがやがて、独立13州になります。で、それぞれの州ごとに特色がある。その特色は、それぞれの植民地が成立した経緯によりますが、とりわけ教会による色分けが重要です。
・大覚醒運動の背景 後から来た移民は、大多数が世俗的な動機で移住してきている そんなにキリスト教に熱心ではない
・回心体験 回心のウェーブ 18世紀前半 ピルグリム・ファーザーズから約100年後(三世代目)
・決定的な出来事に立ち会えなかった人のやましさからくるポテンシャル フランス革命二月革命 全共闘
・覚醒=この世界は、神に支配されているのだと直観すること
相転移 零度の水と氷
・大覚醒はプロテスタント独特の現象 特にメソジストとバプテスト 開拓期=社会が流動的
アメリカのプロテスタンティズムは基本的にすごく平等主義なんですよね。森本あんりさんが注目している「反知性主義」ですね。反知性主義というのは知性に反対しているわけじゃなくて、知性が特定の人に独占されている状態に対するアンチです。「私」が納得したいんですよね。
・人間の知性より聖霊のはたらきのほうを人びとは信頼している。
・科学革命と大覚醒は車の両輪

6.なぜ独立が必要だったのか

・イギリス国王の横暴(課税)
・世界最初の民主主義国家という強烈な自負
・その頃はウェストファリア体制(1648年 三十年戦争講和条約 主権国家体制)
・国王がいない体制を遡る → 古代ギリシア・初期ローマの民主・共和制
パトリオット愛国者)vs ロイヤリスト(王党派)
・理神論=宗教改革が行き着いた、合理主義の思想。プロテスタントは、多くの宗派や教会に分かれている。教義のうるさいことは、互いに言わない。仲間内では、宗教の話はしない。プロテスタントの信者で、自然科学を認める合理主義。これで十分ではないかと考えるのが、理神論。
・理神論を具現した団体がフリーメイソンという友愛結社 橋爪の著書もある
>>アメリカの独立は謎。純粋な商人国家の建設?実験国家の準備<<
・ヨーロッパのように分裂しない知恵

7.なぜ資本主義が世界でもっともうまくいったのか

・資本主義≒市場経済≒お金で何でも買える経済のこと。ふつうの商品のほかに、生産財(土地・労働・資本)も買えるという意味。
アメリカで資本主義がうまく行った理由、その1。自然資源が豊富だった。その2。勤勉な労働者が大勢いた。その3。科学技術が進んでいた。
・資本主義の実験場にちょうどよかった。伝統がないから新しい科学技術を取り入れやすい
・神は、ジョンが儲かると、事前に知っている。儲からなくさせることもできたが、しなかった。ならばジョンが儲けたのは、神の恵みです。利潤は正当で、市場をつうじて、神が与えてくれたことになる。=これがアダム・スミスの言う「神の視えざる手」なのですね。=予定説。
市場は、そういう意味で神聖なもので、その結果は神の意志です。人間(たとえば政治)が介入して、市場をねじ曲げてはならない。これが古典的な自由主義で、政経分離なのです。この理論が成り立つから、資本主義になる。
ウォーラーステインが言っていることですが、資本主義の特徴というのは資本の蓄積が無限になること、つまり「ここでもういいじゃん」という充足に絶対に到達しないことですね。資本主義が主流の経済システムになる前は、経済とは基本的には同じことの繰り返しでした。だから去年と同じだけ儲かればいいわけです。けれども資本主義の下では、経済主体は常により多くの利潤を求める。一旦そういう行動様式が主流になってしまうと、「俺はそんなに儲けなくてもいいよ」と言っても、その人たちはただマーケットで破産し、敗者になるだけです。失敗する人もいっぱいいるわけですが、すべての人が常により多くの利潤を求め、資本蓄積をめぐる競争から降りれないというシステムになっている。
・私が注目したいのは、アメリカにおいて「成功(サクセス)」という言葉がもっている独特の含みです。はっきり言えば、「成功」という語には、宗教的な救済に似た、プラスアルファの含みがある
・彼ら自身の世俗における成功への情熱自体が、人間のただの自然の欲望ではとても解釈できない脅迫的な過剰さをもっている。
・世俗内禁欲がちょうど裏返しになっている。禁欲が強欲、快楽に置き換えられている
>>youtuber、配信者、ニューソート<<
・ジョン万次郎 フェアヘイブン ヘンリー・H・ロジャーズ 教会や高校や図書館も寄付
・寄付 偽善 人間って、どういう意識をもっているかよりもどう行動しているかのほうが重要
・たとえば北朝鮮で、「金正恩なんて馬鹿だと思ってるけど」とか内心で思いながら命令を聞いている人がいるとするじゃないですか。内面の意識よりも命令を聞いていることのほうが社会的な現実をつくっているわけで、その人は、結局、命令を拒絶できなかった、命令に逆らえなかったということのほうが重要です。「金正恩なんか愚かだと思っているけれども」といくら内面でつぶやいていても、彼の行動はそれを裏切っている。すると真実は彼の行動のほうにあるわけで、いってみれば、彼は無意識に信じているんですよね。
・ユニタリアン:三位一体を認めない合理主義の宗派 イエスは人間→ハーバード、ケンブリッジ
・ユニバーサリスト:普遍救済を求める
・アドベンチスト:キリストの1日も早い再臨を待望(アドベント)する
モルモン教:ジョセフ・スミスという若者が「モルモンの書」を発掘。一夫多妻を実践。
クリスチャン・サイエンス:信仰が病気を治す
エホバの証人:週末が近いという切迫感をもって活動

8.アメリカは選ばれた人々の選ばれた国なのか

・特殊でローカルなアメリカ性とユニバーサルなアメリカ性のギャップ
・サッカーとアメフト 普遍化、標準化をしたことでかえって特殊に
アメリカ流資本主義は普遍的か?
・予定説

9.トランプ大統領の誕生は何を意味しているのか

宗教右派 福音主義エバンジェリカル)=「聖書は神の言葉である」と信じている人びと=科学や哲学が聖書と矛盾した場合は、当然聖書のほうをとる=ユニタリアンと反対の立場
・聖書に対しての「弾力性」

Ⅱ アメリカ的とはどういうことか

1.プラグマティズムから考える

プラグマティズム=きわめてアメリカ的な思考、アメリカでしか出てこなかった思想
・パース、ジェイムズ、デューイ ジェイムズ1906-07の連続講義
・概念の対象がどのような結果を我々の経験にもたらすかということが重要という考え
プラグマティズムは哲学か?
プラグマティズムが言っていることは、こうです。何か真理があるらしい、複数あるらしい。それはどっちが正しいか、決着しないでよろしい。自分は、その真理が語られるのを聞いて、自分の生活にプラスであればそれを受け入れ、マイナスであれば受け入れない。そういう生き方をするのでよろしく!そういう宣言なのです。
・実証的真理(=科学)と限定的真理(=その人にとって良ければ、それは真理)

2.プラグマティズムと近代科学はどう違うのか

・フランス啓蒙思想無神論、神への敵意

3.プラグマティズムはどこから来たのか

・前史 トランセンデンタリズム(超越主義)エマソン、ソロー 超絶主義は、客観的な経験論よりも、主観的な直観を強調する。その中核は、人間に内在する善と自然への信頼である。一方、社会とその制度が個人の純粋さを破壊しており、人々は本当に「自立」して、独立独歩の時に最高の状態にある、とする。
プラグマティズムには、卑俗な経験主義、実利主義の側面があります。でも、それを超えたものでもある。これが実は、アメリカの秘密なのです。資本主義でありながら、それを超えている、科学主義でありながら、それを超えている。

4.パースはこう考えた

・パースによるインクワイアリー(探求)の定義。探求とは、ダウト/懐疑という刺激によって始まって、ビリーフ/信仰・信念によって停止するプロセスである。
・語源 カント『実践理性批判』実践プラクティッシュ=道徳モラリッシュ/実用プラグマティッシュ
・カントにとっては道徳的法則のほうがずっと重要、普遍的だった。
・パース 経験を重視/ジェイムズ もう1ランク緩く、「あなたがそう感じたなら、それで良い」「限定的真理」
・神の存在論的証明に挑戦するのが中世の哲学/神が存在すると信じ、前提にしたことであなたはどうなるか、を主題にしたのがジェイムズ。
・たとえば、神を信じたことで、生きる勇気が湧いて明日も仕事をする気になるとか、自分の人生に希望がもててやる気が出るとか、ということであれば存在するということと同じ意味をもつし、存在しようがしまいがその人の生活は何ら変わらないというのだったら、神にはそもそも概念として何の意味もない。 

5.パースからジェイムズへ

・ある種の経験にとって有効性を発揮する、求めているものがそれによって得られる、我々の幸福や快楽が増加するということであれば、その限りにおいて真理であるというふうに考えるのがプラグマティズムのポイントで、いちおうは実証的真理と限定的真理を区別して、多少は従来の真理概念に対してリスペクトするスタイルは見せていますけど、限定的真理のほうにこそ、ジェイムズの議論の中心がある。
・真理よりもより上位に、経験の有用性とか、生きるのに役に立つとか、といった設定があるわけだが、それはドグマでもなく原理でもない。
・推論法 ディダクション(演繹法)「ソクラテスは人間である。人間は必ず死ぬ。ゆえにソクラテスは必ず死ぬ。」
・インダクション(帰納法)「ネコaはネズミを追いかける」「ネコbはネズミを追いかける」「ネコcはネズミを追いかける」→「全てのネコはネズミを追いかける」あくまで確率 フランシス・ベーコン
アブダクション(仮説的推論)百も承知の誤謬推理「PならばQ」→「QならばP」パース
・「信じてみようよ」ジェイムズ「信じる意志」我々人間は生きるに値するだろうかと悩む。しかし、まず人生は生きるに値すると信じようじゃないかということです。そうすれば予言の自己成就みたいなことになる。つまり信じていることが事実になる。私の人生に意味があるだろうかというふうに考え始めるとどっちとも決定不能になる。まずは、意味があると信じる意志をもちなさいと。そうすると結果的に意味があることになるんだと。
・ジェイムズ=パースがひじょうに厳格な守備範囲の中で考えていたものを、人間が生きるスタイルの全体に一般化してしまいましょう。

6.デューイはこう考えた

・デューイ インストゥルメンタリズム(道具主義)観念、知識、思想などを人間の行動のための道具、生活のための手段と考える立場。
・エクスペリメンタリズム(実験主義)感覚的要素は特定の目的の実現を目ざす観念に導かれた積極的行為によってのみとらえられるもので、このような実験的態度がなければ意義をもたないとする説。
・理論と実践は同じものだよという考え方。

7.プラグマティズムと宗教

・ジェイムズ『プラグマティズム』パピーニ ホテルの廊下の比喩 その廊下の性格 法、近代人、キリスト教

8.ふたたびアメリカの資本主義を考える

・農業 ネイチャー(神のわざ)とカルチャー(人のわざ)が合わさって、収穫物(神の恵み)が与えられるんだけど、これは、神と人間との交流です。
★P222 アメリカの先住民は…わけです。異教徒であるインディアンから土地を収奪した歴史がアメリカ資本主義の根本にあるという話
・「発明」エジソンライト兄弟、ベル、1908年T型フォード
・結局は予定説 ウェーバー『プロ倫』
・「成功するはずだ」と仮定して、あたかも現実かのように行動する。
予定説とプラグマティズム、そして資本主義、場合によってはアメリカン・スピリッツと言われるものやフロンティア精神、あるいはアメリカン・ドリーム それらに、ひとつの同じ論理の形式が貫かれていることがわかります。→神の支配
・資本主義=地上で人びとが生存するための経済活動を神が支配していますよ、という考え方。=「視えざる手」 市場の結果は、神の意志なのです。
・職業も神の意志 アメリカは才能の神話の国で、天才とかギフトとかジーニアスとかがあると考える。裏を返すと、努力(人のわざ)で、目標が達成できるとは考えない。運(ラック)とは神の意志。
・努力と成果は無関係であってよい。あんまり努力しないのに、どういうわけかすごく金持ちというひとがいれば、それは神の恵みだからよいことで、偉いのです。日本ではそういう神学は許容されない。
・日本人はプラグマティズムを、単なる努力主義とか世俗主義とか、誤解してはいけません。それは、アメリカに対する誤解の。根本だと思います。
・無意識レベルで神を信じている

9.プラグマティズムの帰結

クワイン(1908-2000)「経験主義の二つのドグマ」(1951)
デュエムクワインテーゼ=決定不全テーゼ 『ことばと対象』
・ある言語体系の中に入ればそれは真理のように見えるが、別の言語体系の中ではまったくわからない。クワインはそれを「我々はそれぞれ異なった船に乗っているようなものだ」と言っています。それぞれの船の中にはそれぞれの真理がある。けれどもそれぞれの船から独立した真の実在などというものはないのだということ。
・ローティ 近代哲学の3つの転回 ①認識論的転回②言語論的転回③解釈学的転回
・いまや真理によって哲学を基礎づけるのは不可能だということ。哲学の否定。哲学のやることはそれぞれの人間がどんな枠組みでものを見ているかをただひたすら記述する解釈学だけになる。
・ローティ『プラグマティズムの帰結』(1980)プラグマティズムの3つの重要な特徴
①アンチ-エッセンシャリズム(反本質主義)。本質的に真か偽かを考えるのではない。
②事実と価値は区別できない。認識がそのまま社会的実践だから。
③残るのはただ会話だけ。
プラグマティズムの重要な特徴は、ひとことで言えば、可謬主義です。我々の認識は常に間違っているかもしれない。だから経験によって今のところ暫定的に有効だよという言い方になる。でもそれは永続的に有効性を担保されているわけではない。常に間違っているかもしれないという前提があるために、探求は永遠に続く。
ローティの本質はポストモダン相対主義アイロニー
ポストモダン相対主義の特徴は、まず、複数の哲学体系がある。マルクス主義があって、フーコーがあって、構造主義があって、デリダ脱構築があって、そういえば現象学もあって論理実証主義もあって、いろんなことを全部勉強して、それぞれなるほどけっこうですね、と。で、そのどの立場に立ったとしても、他の立場との間に大変な矛盾や対立や葛藤が起こる。では、そのどれかの立場に立つのは、もう時代遅れでしょう、と。そういう、あまりにマジでダサいスタイルを取るまでもないでしょう、と。そういうのはやめて、横並びでいいじゃないですか、と。ペシミズムで無能力主義で、哲学を放棄してる。
・「解釈学的転回」→さらに徹底的に実在を否定するマルクス・ガブリエルら「世界は存在しない」。

Ⅲ 私たちにとってアメリカとは何か

1.なぜ人種差別がなくならないのか

アメリカの2つのトラウマ的原罪1.ネイティブ・アメリカン2.アフリカ系黒人奴隷の問題
・奴隷は、古代では合法的な制度で、聖書にもそう書いてある。イスラム世界もそれを前提にしている。ただキリスト教は、キリスト教徒を奴隷にしない慣習ができ、イスラム世界もイスラム教徒を奴隷にしなかった。その結果、キリスト教イスラム教が広まると古代の奴隷社会は消えていった。
カトリックよりプロテスタントの方が奴隷制ができやすい。顕著なのが南アフリカ
フィリップ・ロス『ヒューマン・ステイン』人間の染み、人間の穢れ 邦題『白いカラス
★自分が正しいアメリカ社会のメンバーだと思えるかどうか、の問題ですね。差別を受けると、差別されることの被害のほかに、自分で自分を肯定しにくい精神構造が生まれてしまいます。差別されることの被害は、環境が変わったり時間がたったりすれば解決するはずですが、精神構造のほうはもっと尾をひくかもしれない。
キリスト教のもっている選民思想。救われるものと救われないものがいる。
・奴隷商人は、アフリカで、部族と部族を戦わせた。負けた部族は捕虜になり、奴隷になる。それをアメリカに、商品として輸出した。奴隷は所有物である。アメリカでは、所有権は神聖だから、それを否定するわけにはいかない。結果、奴隷がどんどん増えていく。
南北戦争死者50万人 リンカーンの演説「なぜこんな大戦争になったか。それは人間を奴隷にしていた南部の人びとと、それを放置していた北部の人びとの犯した罪に対して、神が与えた罰である」
・資本主義はいつもそうですけど、どうやって廉価な労働力を調達するかということが問題になるわけです。奴隷は賃労働者ではありませんが、ともかく、買うときは少し高いかもしれないが、労働力としてトータルに計算すれば圧倒的に安く済む。つまり安い労働力をどうしても必要とする経済システムの中に入っていることが、奴隷制を要請した。
・『サバービコン』(2017)ジョージ・クルーニー コーエン兄弟 郊外の黒人一家の家が燃やされる
アメリカのコミュニティは、地元の税金で学校や公共施設を維持している。連邦の補助金はあんまりない。下町のスラムは、所得が低い人びとが多いから税収が上がらず、学校はボロボロで教員の待遇も悪い。郊外の住宅地は豊かな人びとが住み税収が上がるので、学校にお金をかける。すると住みたいひとが増え地価が上がって、資産価値が保全できる。よい投資なのです。家賃も上がるので、低所得の人びとが入ってこない。アメリカのコミュニティは、差別の再生産でできていると言ってもいいくらいです。→この対策がアファーマティブ・アクション
・ホーム・カントリーが心の拠り所になる。アフリカン・アメリカンはそれを追うのも難しい。
・アレックス・ヘイリー『ルーツ』クンタ・キンテ 
スパイク・リーマルコムX』 Xというファミリー・ネーム 不確定

2.なぜ社会主義が広まらないのか

・福祉より寄付を好む。そもそも大きな国家を望まない。国は所詮人、大事なのは神だから。
ソーシャリズム社会主義)↔インディヴィジュアリズム(個人主義
・「人にやってもらう」自分の主体性を他の人に預けることをひじょうに嫌う 極力避けたい
・ヨーロッパは公定教会がある。国がキリスト教とつながっている。だから福祉国家でいい。
・市野川容孝『社会』
プロテスタントカルヴァン派ルター派の違いが重要 カルヴァン派は予定説が厳格 人を救うのはあくまで神 人が手を出してはいけない
マルクス主義無神論は受け入れられない

3.なぜ私たちは日米関係に縛られるのか

・トランプ=『ルイ・ボナパルトブリュメール18日』=誰も正解ではない 正解の不在の代表
・ヒラリー流の「正しさ」は、彼らを苦境から少しも救ってくれるようには思えない、むしろ苦境は深刻になるように感じられる。欺瞞。
アメリカと日本 4年の戦争→無条件降伏→6年の占領 憲法制定権力
・「日本人はアメリカによって開放された」加藤典洋白井聡図式 敗戦の否認、すり替え
・戦争の総括を行えなかった ヒトラーと違って天皇も生きている
・皆悪かった=皆悪くなかった 何が悪かったのか落とし前をつけることに完全に失敗した
・1894年の日清戦争、1904年の日露戦争は通常の戦争。戦争目的がはっきりしている、国際法を守る 説明のつかない民間人の被害がない あっても極小 いちばん大事なことは、戦争に先立ち、主要国の諒解を取っているということ。「こういう理由でこういう戦争をしますけれど、いいですね?」とイギリスに言い、アメリカに言い、フランスに言い、ドイツに言い、…その上で行動している。
・まず第一に、1931年と37年(満州事変と日支事変)は「事変」で、戦争でさえない。戦争でなければ、戦時国際法に従う義務感が、きわめて薄くなる。だから民間人に対して、勝手なことをやっている。正規の戦争手続きも踏んでいない。それらが、全部間違いである。
・1941年は、やっと通常の戦争の手続きになったのだけれど、戦略がない。戦術しかない。戦争目的が曖昧である。こんな曖昧な、国家利益に適うかどうかもよくわからない重大な決定を、軍と政府当局者のごく一部で行った。そして、軍人にも民間人にも、大きな犠牲を強いてしまった。そのことの責任感や将来予測が、ほぼゼロである。
・まず第一に、わが国は強大になった、という自信があった。驕りがあった。失敗しないだろう、という見通しの甘さがあった。それから国際社会(アメリカをはじめとする列強)がどう考えどう行動するかという、リアルな認識が欠けていた。欠けていても、何とかなるだろうという自己中心的な幻想があった。リアルな認識はしていないけれど、何とかなるだろうという自己中心的な幻想で、やみくもに行動しているということは、敗戦のあとでも、今でも、まったく同じです。違う点は、日米同盟があるから、アメリカからダメ出しされる。おかげで、大きな失敗はしないで済んでいるという、これだけなんです。つまり、自立する能力がない。
・敗戦敗戦と言うけれども、むしろ敗戦よりも、戦争を始めた、開戦の段階の問題だと私は思う。だから、開戦責任のほうがずっと大きいのです、敗戦よりも。
・すべてにおいて信頼されておらず、信頼されていなければ、対話が成り立たない。ゆえに、対等の関係にない。対等の関係にないなら「俺の言うことを聞いていろ」と最後に言われるわけであって、これが対米従属の本質です。
緑内障の比喩 見えていない
ベトナム反戦運動=徴兵制が強化されたから
★この、武士の伝統が途切れてから、日本は迷走を始めたようにみえる。敗戦のときに何が起こったかというと、武装解除したからアメリカが武士になってしまって、日本は、町人と農民になった。町人と農民のカルチャーは、たしかに日本にあったかもしれない。でも、武士のカルチャーもあったはずなのです。
・武士の責任感
・覇権国の条件 世界の規範的なモデル 国際社会の価値観やルールの提供者
アメリカと違った価値観と行動様式をそなえた日本を発見することが大事
アメリカへの、ほとんど倒錯的なレベルの依存から脱するための最初の一歩として、アメリカを知ること。

あとがき

 
21/1/10読了
要約:アメリカという国をキリスト教プラグマティズムから読み解く。結局一番大きいのはプロテスタントカルヴァン派の予定説だという『プロ倫』と大体同じ結論。
感想:プロテスタントの色々な宗派が知れた。自由主義プロテスタンティズムの関係。「視えざる手」とは、自然な調整機能のことではなく、直接的に神の力(結果主義)だということが目からウロコだった。プラグマティズムのことを知りたくて、一応はわかったが、それが具体的にアメリカ人にどういうルートで影響を与えたのか、有名な自己啓発成功哲学)書との繋がり、或いはニューソートとの関係などの部分は知れず物足りなかった。プラグマティズムの負の部分に興味がある。プラグマティズムは哲学か?という問いが面白くて、自分は(見下すわけではなく)哲学ではないと思った。人生訓の類+プラグマティズムそれ自体が宗教。