マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【読書メモ】栗原康『学生に賃金を』(新評論 2015年)

2015年2月発行。

はじめに 1
 
第1章◆大学無償化の思想……………………………………………………………9
学生に賃金を 9/アウトノミア運動―ヨーロッパの大学無償化 16/高等教育の機会均等 21 医師不足の解消 28/男女の進学格差 31/ショバ代をよこせ!―ベーシックインカム再考 34 財源はあるの? 38/出発点としての高校無償化 42
 
第2章◆奨学金地獄……………………………………………………………………46
ブラックリスト化問題 46/日本の大学授業料 49/日本の奨学金制度 53
財産の差し押さえ 57/奨学金は親不孝 59/返還猶予の条件は? 62
世界の高等教育①アメリカ 65/世界の高等教育②イギリス 67
世界の高等教育③ドイツ 69/世界の高等教育④スウェーデン 71 日本の奨学金制度の迷走↓暴走 73
【補論1 対談】院生問題―いま、「学生に賃金を」を考える(秋山道宏×栗原康) 79
【補論2 論考】大学賭博論―債務奴隷化かベーシックインカムか 95
 
第3章◆〈借金学生〉製造工場………………………………………………………113
大学紛争をうけて 113/政府が大学授業料を値上げした 116/〈借金人間〉製造工場としての大学 119 奨学金制度の貸金業化 127/債務者に賃金を 137
【補論3 論考】大学生、機械を壊す―表現するラッダイトたち 147
 
第4章◆悪意の大学……………………………………………………………………170
大学の病理的雰囲気 170/大学設置基準の大綱化 173/大学院重点化政策 176/都立大学の解体 178
非常勤講師の大量リストラ 181/早稲田サークル部室の撤去 184/東京大学駒場寮問題 190 大人用処世術概論 194/悪意の大学 202
【巻末特別座談会】さよなら、就活! こんにちは、夢の大学!(渡辺美樹+大滝雅史+岡山茂+栗原康) 211
 
おわりに 229
大学はモラトリアムだ/21 世紀の怪物/じいちゃんの遺言/被曝学生、ゼロ地点にたつ
初出 243

はじめに

空海三教指帰』 嘆息
もともと京都の大学で仕官を目指して儒教の勉強
栗原 35歳 年収80万円 借金635万円
日本学生支援機構 奨学金
有利子 学部4年 400-500万 修士、博士5年 600-700万
年収300万円以下 猶予5年 → 2014年から10年
・あとでくわしくふれるが、イタリアの社会学者マウリツィオ・ラッツァラートの『<借金人間>製造工場』によれば、資本主義の根幹は借金である。あたりまえかもしれないが、もともと人間はモノとちがって交換できるものではなかった。それを可能にしたのが借金である。カネを借りて返せないのは恩知らずであり、人間ではない。切りきざまれても、なにをされても文句はいえず、それが奴隷制の起源になった。奴隷の側も、負い目があるからさからえない。むしろ、すすんでしたがってしまう。この奴隷労働こそ、人間やその行為をカネで交換可能なものにしたのであり、労働力商品の原型になったのであった。資本主義は、借金によってうごいている。
空海 山にこもり、ときに土佐の室戸岬にでかけて、お経を百万回となえた。そして書きあげたのが『三教指帰』である。この本のテーマはただひとつ。立身出世の学問である儒教を批判することだ。
・どうせ栄華をきわめたって、死んだら朽ち果てて、虫に食われて消えるだけ。

第1章◆大学無償化の思想

・知識とは、いちどつかったら消耗してしまうような商品ではなく、むしろつかえばつかうほど、100人いれば100人ぶんだけ多様な知識が加算されるものであり、しかもつねに議論の前提としてあらゆる人びとに共有されるものなのである。
・白石嘉治「原理的なことだけを言うと、大学であつかわれるような認識や言語、あるいは科学的な知識等は、本来は交換のロジックになじまない。つまり経済学が前提としているようなトレードオフ、あるいは経済学の財が前提としているような希少性のロジックには乗らないものです。そうした認識や知識などは「共同財」ともいわれます。それを提示しても手元から失われないので、交換のロジックではとらえられない。そこではトレードオフの原理は働かない。そして希少性の原理とは、あるものを無償にした場合、万人が使えば枯渇するので、そこに価値としての価格が発生するということですが、認識や知識、あるいは芸術作品の鑑賞などもふくめて、大学という場所の根幹をなす「共同財」は希少財ではない。いくら使っても枯渇しない。にもかかわらず、人間にとって価値のあるものである。」
・アルバイトが忙しくて読書の時間もとれなかったとき、それはカネだけはらわされて知的活動にかかわる権利をうばわれていたわけである。カネがなくて入学できなかったひともふくめると、大学の授業料は、ほんとうにおおくの人たちから知的活動の権利をうばいとってきた。
・もちろん、それでこの社会がよくなるかどうかなんてわからない。でも、いま生きていて息苦しいのが、小学校から高校にいたるまで、就職のためになにも考えずに受験勉強しろといわれたり、大学にはいってからも就職することだけを考えろといわれたり、就職してからも家族のためにはたらくことだけを考えろといわれたりしていることなのだとしたら、その原因はずっと就職のためにああしろこうしろといわれていて、自分の人生をゆっくりと自分で考えることもできないことにある。だから、たった4年間でいい、カネがあって好きなことを好きなだけ考えてもいい時間があったとしたら、それはどんなにすばらしいことだろう。たぶん、だれもがとてつもない解放感をかんじ、ああ生きていてよかったとほんきでおもうはずだ。その後の人生もぜんぜんかわってくるにちがいない。学生に賃金を。この息苦しい社会を終わらせよう。いつだっておもうのだ。本が読みたい、酒が飲みたい、カネがほしい。
・1960年代末、学生叛乱が世界中でふきあれた。とくに、イタリアの学生叛乱は、学生賃金をスローガンにかかげていたことで有名である。1967年2月、イタリアのピサ大学の学生が大学占拠を決行し、サピエンツァ・テーゼという綱領文書を発表した。そこにはこう書かれていた。こんにちの資本主義では、高度な先進技術にもとづいて、生産活動がおこなわれるようになっている。おおくの仕事で、大学レベルの知識が必要とされるようになっているのであり、大学生は未来をになう大切な労働力だということができる。かつて、大学にいけるのは特権的なエリートだといわれていたが、もはやそうではない。大学生は次世代の労働力であり、労働者階級の一員として考えるべきだというのであった。というか、学生は資本主義をささえるために、大学で先進技術を学習させられているのであり、その時点ですでにはたらかされている。もっとはっきりいえば、大学生はタダ働きをさせられているのであり、かんぜんに搾取されている。だとしたら、いま大学生が要求するべきなのはなにか。学生に賃金を。この言葉は、イタリアの大学占拠のスローガンとして、全国の大学にうけいれられていった。
・理論的根拠になったのは、1960年代のオペライズモであった。オペライズモは、労働者主義という意味で、当時のイタリア左翼に共通の言葉であり、共産党系の知識人から新左翼の活動家にいたるまではばひろく共有されていた。なかでも、キーワードとなったのが、マリオ・トロンティやアントニオ・ネグリによって提起された社会工場という概念である。
社会工場とは、文字どおり社会全体がひとつの工場になったことを意味しているこんにちの資本主義の支配は、工場や会社のオフィスのようないわゆる生産の領域にとどまらず、再生産の領域にまでおよんでいる。というか、そうしなければもはや資本主義がなりたたなくなっている。たとえば、工場の生産活動がなりたっているのは、再生産の領域でいそがしいい家事をやりくりする女性がいるからであるし、高度な先進技術をまなばされてきた学生がいるからであるし、いつでも安くてキケンな日雇い仕事をひきうけてくれる失業者がいるからである。みんながみんな四六時中、社会工場ではたらいている
・家事労働に賃金を/学生に賃金を/失業者に賃金を → 社会賃金
・もちろん、イタリア政府は社会賃金などみとめなかった。だが、若者たちは、それを自分たちの手で勝手に実現していった。賃金をもらうかわりに、交通機関をただ乗りしたり、オペラの入り口を強行突破してタダで観賞したり、スーパーのレジに集団でおしかけ、交渉して物品をタダ同然でもちかえったりしたのである。自発的値引きだ。また、賃金のかわりに空き家を不法占拠したり、そこで共同生活をいとなんだりした。スクウォットだ。こうした行動は、1970年代にはいるとアウトノミア運動とよばれ、1977年に大弾圧をうけるまでさらに過熱していった。
・1970年代初頭になると、学生賃金の要求は大学無償化として結実することになる。イタリアばかりではない。ドイツでもフランスでもイギリスでも、ヨーロッパ全体で高等教育の無償化がすすめられた。
・高等教育の機会均等
・1966年国際人権規約第13条 日本国憲法第26条 教育基本法第4条
国際人権規約第13条、日本は項目bとc(中等教育、高等教育の無償化)を留保。しぶしぶ2012年9月に批准。ここまで批准しなかったのは日本とマダガスカルだけ。
・「医者になれる人」
・男女の進学格差
★ほんとうのところ、「学生に賃金を」というスローガンをつかう意義は、この共同財の存在に気づくということにある。
・自由闊達
・トニー・フィッツパトリック『自由と保障―ベーシック・インカム論争』「天然資源というのは、みんなで共有すべきものであり、企業が独占していいたぐいのものではない。」
★企業は共同財を横領している。
・高等教育予算をOECD平均だせば、ちょうど2兆5000億円で大学無償化できる。
関曠野『フクシマ以後――エネルギー・通貨・主権』ベーシックインカム、政府通貨
・「高等教育の無償化は福祉ではない」
橋本徹北朝鮮暴力団と同じ」「高校無償化は拉致を切り離せない」
・外国人が入って文化が混ざり合うことは面白い。

第2章 奨学金地獄

・2008年12月奨学金返還滞納者(3ヶ月)のブラックリスト
リーマンショックの最中
・2013年大学初年度授業料 国立81万 公立93万 私立130万 +生活費
・4年で 国公立最低600万 私立800万
・大学生の74%がアルバイト
・せっかく大学にいっても、好きなことを学ぶ時間がほとんど失われている
・日本育英会日本学生支援機構
・第一種奨学金(高校の成績が3.5以上) 無利子 年額約54-77万(2012年から年収300万以下は無期限で返済猶予)
・第二種奨学金 有利子(上限3%)36-180万
・世界の常識では奨学金は給付grant。貸与型は学生ローン
・およそ4割の学生が利用
・15年前と比べて、第二種が10倍以上、貸与人数がおよそ2.5倍
・2012年の訴訟件数2004年の100倍(6193件)
・民間の債権回収会社に委託
・世界の高等教育
アメリカ 州立大学は比較的安い「ペル奨学金」給付型「スタッフォード奨学金」貸与型
②イギリス 学費は後払い(卒業後) 年収344万を超えてから 25年で債務は帳消し
③ドイツ(フランス、イタリア) 基本無料
スウェーデン パーフェクト
・2006年 奨学金有識者会議 奨学金制度の貸金業
市古夏生 お茶の水女子大学教授
加山勝俊 社団法人しんきん保証基金常務理事
黒葛裕之 関西大学教授
小林雅之 東京大学教授
斉藤鉄生 早稲田大学学生部奨学課長
白井淳一 信金ギャランティ株式会社代表取締役社長
宗野恵治 弁護士
濱中義隆 独立行政法人大学評価・学位授与機構准教授
藤村直 三井住友銀行融資管理部長

【補論1 対談】院生問題―いま、「学生に賃金を」を考える(秋山道宏×栗原康)

・2009年「ブラックリストの会」
小林雅之「わたしは利用されただけだ」
大学院重点化政策 論文を早く書いて業績を出さなくてはいけない、流行にのったものを書かなければ研究費が確保できない
・学生がたまって議論する場所
・学生が大学という場を構成する一員ではなく消費者として、サービスの受け手として管理されていくような仕組みが、いわゆる大学改革の一連の流れのなかでつくられた
・広い意味での大学のネオリベ化 大学教育の商品化
・アウトノミア たとえばミラノ大学だと、建築学科の学生と教員が、ホームレスの人たちを大学構内にがんがん入れて、居住させちゃったりする。もちろん、当局は「部外者の退去」をもとめるんですけど、そしたらこんどはホームレスの人たちを非常勤講師として扱って、講義をしてもらう。それなら学内者なので排除はできないし、非常勤講師なのでお金をもらってもいいくらいだろう、と。結局、このときは学外に退去させられてしまうんですけど、引きかえに市内に無料住宅を、電気水道代込みで提供させたらしい。
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【補論2 論考】大学賭博論―債務奴隷化かベーシックインカム

・まるで宗教にでもはまったかのように、自己啓発に駆りたてられ、「もっともっと」と正しい自分を探しもとめる。
・2008「タルナック事件」不可視委員会『来たるべき蜂起』「就職面接の受けを良くしようと笑顔の練習にはげみ、すこしでも昇級しようと歯をホワイトニングする。団体精神を培うためにディスコに通い、英語を習ってキャリアアップを図り、新たな一歩を踏み出すために結婚や離婚をするといったあの光景である。果てはリーダーになるために演劇セミナーを受講し、うまく「葛藤に対処する」ために「自己啓発セミナーに通いはじめる。どこにでもいそうな導師の一人は次のように言う、「心の奥底での『自己啓発』は感情を安定させ、くつろいだ人間関係へと解き放ち、バランスのとれた知性を研ぎ澄ましてくれます。つまり経済的パフォーマンスをたかめることへとわたしたちを導いてくれるのです」。このひしめき合う小群衆は、ナチュラルに見えることを目指して練習に励みながら、選抜・抜擢されることを待ち侘びているが、彼らが与しているのは、動員(モビリザシオン)という倫理により労働秩序を救済する企図にほかならない。」
★これはフランスで書かれた文章だが、おどろくほど日本にもあてはまる。就職活動のためにリクルートスーツを購入し、TOEICやプレゼンテーション、ディスカッションのトレーニングにはげみ、エントリーシートの書き方を洗練させる。面接官にこころないことをいわれ、不採用にでもなれば、なにが足りなかったのかと思い悩み、本屋で自己啓発本を手にとりはじめる。就職してからもおなじことだ。たかい地位にたつためには、きちんと自己管理をして、たえず自分をリニューアルさせていかなくてはならない。英語や資格を身につけるために学校にかよい、自分の生活を律するために、しきりに健康に気をつかう。スポーツジムにかよい、自然食品を買い、エコライフを満喫する、婚活だって自己啓発のひとつである。人間の生が、労働の秩序に動員されている。というか、生きることそのものが認知資本なのであり、わたしたちはたえず自己啓発という労働をさせられている
・いちど借金をすると、学生は自分の未来を完全にコントロールされてしまう。自己啓発をして良い仕事をみつけ、働いて返すこと。大学という賭けは、学生を債務奴隷化し、その未来を自己啓発へといざなっていく。
・「自己啓発とはまったく無縁なもうひとつの賭博」
・農村 北方教育運動 子供が自分自身の生活を綴り、環境を知覚し、思考と感情を自らのものにすること 閉じること 自律すること
・実のところ、大学にもまったくおなじことがいえる。就職にむかっていく時間の流れをいったん遮断して、閉じこもって自分の生きかたを自分で決めようとすること。あるいは、それをさまざまなスタイルで表現すること。北方教育運動とおなじように、大学は学生の自律性を育むところなのであった。おそらく、このことを文字どおりの意味で実践し、学生にとって大学とはなんなのかを体現してみせたのが、1960年代末の大学ストライキだろう。このころ、全共闘をなのる学生たちが、全国各地で大学でバリケード封鎖し、授業をとめて大学にたてこもっていた。よくいわれることであるが、学生にとってバリケードとは自分の未来をさえぎりたいというおもいの象徴であった。自分の意志とは関係なく、就職へとはこばれていく時間の流れ。ほんのすこしでもいいからそれをとめ、自分の人生を自分で選びなおしたい。いわば、大学ストライキは時間をストライキするこころみだったのである。
戸井十月『旗とポスター』落書きについて
・ブログ「大学生詩を撒く」
・大学や自己啓発セミナーで、もっと「強い自分」でありなさいと命令される。だが、実のところ、「弱い自分」はこの命令によってはじめてうまれる。だから正直、自己啓発に終わりはない。自分を表現し、自分を探しもとめればもとめるほど、自分を見失い、疲れはててしまう。結末はあきらかだ。うつ病になるか、自殺をするか。
・ヒューマンストライキ。それは人間の生にとって、より直接的なストライキである。認知資本主義が、人間の認知能力、もっといえば生そのものをコントロールし、利潤に変えてなりたっているのだとしたら、それをとめること。かつて、工場ではストライキをおこなうのに機械の歯車をとめればよかったが、認知資本主義では人間の生の歯車をとめなくてはならない。
・勝利しかない賭博としての大学
・『vol 04』「どうしたらいいか?」Tiqqun
自己啓発としての大学を捨てたとき、そのひとは自分の身を賭して、知性の爆発としての大学を思考しはじめる。
・人間はいちど大きな借金を背負ってしまうと、だいたいその未来を一定の方向にコントロールされてしまう。きちんと金を返済するか、あるいはそのための望ましい行動をとるかである。
・永続的な自己啓発
・自分の生のかけがえのなさを確信すること。賭けた時点で勝っている賭け。

第3章◆〈借金学生〉製造工場

・1969年10月大学占拠77校でピーク
・60→70年 10年間で大学生数が2倍 71 → 167万
・1971年(昭和46年)中教審四六答申 教育費の受益者負担
・1971年 授業料 国立1万8千円 私立9万5千円 → 国立7万3千円 14万6千円 へ値上げを促す
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フランコ・ベラルディ『プレカリアートの詩』「精神大気圏の病理的雰囲気」
・うわべだけの笑顔、偽りのコミュニケーション
・ジョン・ホロウェイ『権力を取らずに世界を変える』飼い犬の紐を長くする方法=クレジットカードやローン
・1943年 大日本育英会発足 3日後神宮外苑 学徒出陣
・教育ローンを扱う銀行からの圧力。「自由競争をさまたげている」→1983年第二臨調答申(行財政改革
奨学金に利子をつけること
②返還免除制を廃止すること
・1999年 社会経済生産性本部『選択・責任・連帯の教育改革』堤清二橋爪大三郎大澤真幸ら ポスト近代の大学
①大学入試廃止
②授業料の大幅値上げ
③教育費の全額自己負担
④銀行の「奨学ローン」拡大
育英会の見直し
・大学を卒業すると、およそ20年にわたって、労働に拘束される。どんなに認知的労働がくだらないとおもっていても、あるいは他の生きかたがしたいとおもっていても、なにも考えずにカネを稼がなくてはならない。
・「鉄を喰え、飢えた狼よ、死んでもブタには喰いつくな」尾崎豊『Bow!』
・1965年8月ワッツ暴動 当時、人種問題として扱われることの多かったこの暴動に対して、シチュアシオニスト商品世界の破壊という位置づけをおこなった。
・金融は、労働の将来的な価値をあらわしている。
世界的に金融化が進行したのは、1970年代後半からである。この時期から、金融は一部の専門家ばかりでなく、中産階級にもひらかれたものとなった。これを家庭経済の金融化というのだが、ようするに中産階級の預金を投資信託にながしこみ、とりわけ確定拠出型年金というかたちで、年金基金の運用を普及させたのであった。
★だが、ここで考えなくてはならないのは、この金融化のプロセスが貧乏人からなにをうばいとったのかということである。結果的に、住宅がうばわれたとかそういうことばかりではない。ローンをくんだことで、貧乏人は想像力をうばわれたのだ。もともと、貧乏人のあいだでは、快適な場所でくらしたいというイメージが共有されていた。そして、それを具現化する方法もいかようでもありえた。政府に公共住宅を要求してもよかったし、空き家があれば複数人で不法占拠をしてもよかった。でも、ローンをくむことで、貧乏人の思考はマイホームを購入することに直結させられてしまった。いちどカネを借りてしまうと、快適な生活のイメージは商品生活の檻のなかにしかありえない。金持ちは、貧乏人がおもいえがいてきた未来の生活のイメージを、いいかえれば、貧乏人の認知的活動を金融商品として所有し、それを売買することによって利潤をあげているのである。そしてその一方で、貧乏人はマイホームの購入を「成功」の自明のイメージとみなし、ローン返済のために地獄のような労働をしいられるのだ。
・住宅ローンばかりではない。こんにちでは、教育ローン、自動車ローン、クレジット・ローンについても、まったくおなじことがいえるようになっている。先述したように、教育ローンは金額からいっても、住宅ローンにつぐ第二のローン市場である。奨学金がかんぜんに公的性格をうしなえば、おそらく住宅ローンとおなじことがおこるだろう。だれもが大学にいけると吹聴される。ひとりあたり数百万円にもおよぶ教育ローンをくんで。おそらく、このことで夢をみることができるようになる学生もいる。それまで不可能だった大学進学が可能になるのだから。だが、借金で大学にいくことが一般化すれば、大学をめぐる想像力が、商品世界のなかに閉じこめられてしまう。もともと、大学については、政府にたいして学費無償をもとめてもよかったし、まなぶべき知識についても、就職に役だつかどうかなんて関係なく、サークルや仲間うちで好き勝手なことをやっていてもよかった。だが、大学の金融化がすすめばすすむほど、借金をして、大学教育という商品を購入するのがあたりまえになってくる借金を返すために、まなぶべき知識が就活と直結してしまう。大学にいきたいという貧乏人の思考が、商品世界にくくりつけられてしまう。貧乏人をまっているのは、借金返済のための地獄の労働、ただそれだけだ。しかも、金持ちは教育ローンを運用し、ぞんぶんに利潤をえることができる。
金融化は、人間生活のすみずみにまでいきわたっている。いまわたしたちに必要なのは、商品世界にくくりつけられた人間の思考を解きはなつことだ。商品世界の破壊(ラッダイト)。金融化にもとづいた商品世界にたいして、人間がモノよりエラいことをしめすことができるかどうか

【補論3 論考】大学生、機械を壊す―表現するラッダイトたち

・人間らしさのみじんもない仕事
・社会工場=消費もシステム(工場)の一環
・生活の場から人間性をうばいとる社会
・1960年代末の大学ストライキ、それは大学という機械をラッダイトするこころみであり、未曾有の規模でおこなわれた文化的表現の実験場
・「今、うすら寒い講堂の一室でボク達は考えてきた。
全学バリケード封鎖を
東京大学の徹底的<破壊>を
全学バリケード封鎖の意味はただ単に七項目貫徹をめざした戦術アップでは決してない。今日の社会体制を根底から支えてきた、高級管理労働者養成所としての東京大学の存在そのものを具体的に否定する行為としてまたその中にどっぷりとつかってきたボク達の日常性そのものを完璧に否定する行為としてあるのだ。総力を上げて全学封鎖へと突撃せよ!」『進撃』第2号「”崩壊”の季節」
・当然ながら、東京大学でおとなしく勉学に専念していれば、たいてい出世の階段をのぼることができる。高級官僚、大企業の重役など、エリートと呼ばれるポストに就くことも夢ではない。しかし、それは自分たちが資本主義社会の支配層になることを意味していた。それでいいのか。というか、そんな自分を否定するべきではないのか。東大生のバリケードには、そんな思いがこめられていた。
★この話だけ聞くと、東京大学にしかあてはまらないと思うかもしれない。しかし、基本的に他の大学でも考えかたはおなじであった。もちろん、東大生のようにエリートになることが約束されていたわけではない。だが、それでも大学教育をうけ、企業が必要とするような能力を身につけることができれば出世の道がひらけてくる。しかも1960年代末といえば、ちょうど高度成長のまっただなかである。このままいけば、まちがいなく楽な暮らしがまっている。だが、その背後で、日本はあきらかにアメリカのベトナム侵略に加担していたし、工業化の結果として農村、漁村が破壊され、公害問題も続出していた。自分の「平和と繁栄」のために、他の人びとを犠牲にしてもいいのだろうか。人生のレールからいったん降りて、自分の生きかたを考えなおす必要があるのではないだろうか。せめてその時間だけでもつくりたい。当時、早稲田大学の学生であった津村喬は、後にバリケードの意味をふりかえって、つぎのように述べている。
バリケードというのは、機動隊や右翼が来るということへの備えという以前に、自分たちの運ばれていく未来をさえぎるためのものだった。待ってくれ、俺たちの人生は自分で決めたい、といいたかったが、それにはまず、授業をやめる必要があった。モラトリアム、といいたいならそれもよい。何と創造的な判断停止で、それはあったことか。」
バリケードは、時間の流れをさえぎりたいという学生たちの意思表示であった。大学にたてこもり、とてつもなくヒマな時間をつくりだす。そこでは必然的にいままで話そうともしなかった学生との会話がうまれ、共同生活をつうじて信頼関係がはぐくまれる。肘をつきあわせ、機動隊と衝突でもすれば、学生のあいだには強烈な連帯意識がめばえる。空き部屋を使っては討論会や勉強会をひらき、それでもものたりなければ、自分たちで授業カリキュラムを設定し、自主講座をひらく。自分たちにとって、のぞましい文化や生活を実験してみることバリケードには、そうした文化的意味合いが強かった。バリケードは、時間をとめるシンボルであり、イメージそのものだったのである。
・社会が悪くなる過渡期、初期は実感できる。悪くなった後に育つとそれがデフォルトで気づかない。
・自分の言葉で語ること 「ぼくはぼくの言葉で語りたい」津村喬全共闘
・ポスト工業化社会=知識や情報
・たとえば、全共闘を「暴徒」あつかいしたのは、大学当局や警察ばかりではなく、情報操作をするマスコミの力であった。また、人びとが消費に駆りたてられたのも、日本が物質的に豊かになったからではなく、マスコミや広告によって、それがあたりまえと思わされるようになったからであった。
・大学では、教育する者と教育される者がはっきりと区分されている。それは生産者と消費者の区分であったし、演劇にたとえていえば役者と観客の区分であった。ポスト工業化が両者の溝をひろげ、一方的な情報伝達を促進しているのだとしたら、いちどそれを断ち切って、「自己教育」の回路をつくりだすこと。大学のなかで受動的な消費者でしかなかった学生たちが、好きなことを好きなように表現してみること。たとえば、学生たちが自分たちで授業カリキュラムをくみ、自分たちがうけてみたい授業を自分たちで催してみる。内容が左派的かどうかは問題ではない。自分たちが学びたいこと。自分たちが伝えたいことを自分たちでまかなってみる。学生たちは、こうした自主講座のこころみをつうじて、大学の知的生産は教員の専売特許ではなく、学生もおこなえるのだということを表現したのであった。
・連帯を求めて、孤立を恐れず
造反有理
帝大解体
砦の上に我らが世界を
ニャロメ!
革命でやんす
とめてくれるなおっかさん、背中の銀杏が泣いている
闘魂不滅!
・ポスト工業化社会=「言葉の秩序」を土台。
・たとえば、学生は自分たちのヘルメットに色を塗り、文字を書きこむことで、みずからのアイデンティティを示そうとしていた。政治セクトについていえば、白ヘルは中核、Zマークは革マル、青ヘルは社青同解放派、カマトンカチは第四インター、黒ヘルはノンセクト、等々。
・今でこそ。ヘルメットはセクト学生の専売特許みたいになり、一人一人の個性や意志より、集団としての力を記号化するようになってしまったが、68年から70年の頃には、それは実に多様な個性を表現する小道具として存在していた。ヘルメットをナイフで削り、何層にも重ねられたスプレーペンキの色の断層
・当時、全共闘の大学ストライキに影響をあたえたといわれているのが、第一次・第二次羽田闘争、佐世保エンタープライズ寄港阻止闘争、王子野戦病院反対闘争であった。
反戦青年委員会
・井上澄夫
・警官=秩序の象徴
・いまでは社会全体がひとつの工場であり、芸術も教育も、日常生活のすべてが工場の機械となっている。
労働組合さえもシステムの一部
・もはや労働組合も機械でしかなく、労働者が破壊すべき対象である。
・だから、いま必要なのは生産から消費にいたるあらゆる生活領域で、第二のラッダイト運動をはじめることである。こうしたドゥボールの視座が、パリの5月革命の先駆けであったことはまちがいない
・日本でも世界でも、学生は大学という機械をラッダイトしようとしていた。学生は将来、サラリーマンになることを運命づけられており、そこに口をはさむ余地さえあたえられていない。それならば大学にバリケードをはり、授業をとめてしまえばいいのではないか。とめてゆっくりと考える。
・大学ストライキは、学生たちのめいっぱいの文化的表現であり、みずからの自律をつかみとるきわめて政治的な行為だったのである。
・社会の工場化=システム

第4章◆悪意の大学

・1980年から大学改革。5つの柱
①大学の就職予備校化
②大学院重点化政策
国公立大学の「民営化」
④教職員の非正規化
⑤学生の自主活動の規制
・大学は、よりよいサービズを提供する空間なのであり、その企業イメージを損ねるような自由奔放さはとりしまらなくてはならない。サークル活動にしても、自治寮にしても、学生は大学のスペースをいかして、ここはみんなのものだといいがちだけれども、そうではない。大学は一企業の私的空間なのである。学生の自主活動なんてどうでもいい、とにかく学生はよい企業に就職して、大学の企業イメージをあげてくれればいいのである。そうすれば、また新年度に学生があつまってぼろもうけ。でも、そんな大学改革がすすめばすすむほど、大学は「病理的雰囲気」でむしばまれていく。
・1991大学設置基準の大綱化 2002年中教審「新しい時代における教養教育の在り方について」
①主体性ある人間としての自立する力、新しい時代の創造に向かう行動力、他者の立場に立つ想像力
グローバル化にともなう異文化理解とそのための語学能力
③科学技術についての理解とそれらの技術にかんする倫理的判断力
④国語力としての古典的教養
⑤礼儀作法をはじめとする身体的修養
=「新しい教養」
・ようするに、「新しい教養」とは人間の認知的能力のことである。ここで書かれていることを露骨にいってしまえば、企業の経済活動に役だつ「問題解決能力」「情報処理能力」「コミュニケーション能力」のことだといってもいい。たとえば、問題解決能力とは、キャリアプランニングやインターンシップ、フィールドワークをつうじた職業観の育成のことであり、情報処理能力とは情報機器の操作方法のことであり、コミュニケーション能力とは、企業でつかえそうな実用英語や日本語の言葉づかい、礼儀作法などのことである。
大学院重点化政策 1985年 7万人 → 2006年 26万人 「理工系のすぐれた研究員を育成し、新技術の開発や特許の獲得をおこなうこと」
→国から助成金や研究費
・現実は「ポスドク問題」「高学歴ワーキングプア
・九州大 憲法学 大学院生 放火事件
・2001-3 小泉・竹中 国公立大学の法人化
石原慎太郎 4大学統合 → 首都大学東京 すべての教員に口外不可の同意書 2005年4月 首都大学東京開校
埼玉大学 非常勤講師の大量リストラ 田隅三生学長のウソ
・大学非常勤講師 2万6000人 平均年収306万 44%は年収250万未満
・早稲田サークル部室の撤去 1995ー2001 6年間
オフィスビルと変わらないキャンパス
・もともと、大学がビラや立看板であふれていたのは、学生がサークルなどの自主活動をおこなっていたからである。学生はサークル活動をつうじて、たがいに交流をふかめたり、芸術や音楽にのめりこんだり、読書会や討論会をもよおしたり、あるいは酒を飲んだり、恋愛をしたりする場を自分たちでつくりだしていた。率直にいえば、学生の自主活動こそが大学をつくってきたのである。
・だが、「魅力ある大学」をめざす大学当局にとって、学生の自主活動はめざわりな存在でしかなかった。
・「私事になりますが、わたしは88年4月にそれまで育った尾張の農村をあとにして、青雲の志を抱きつつ、頬を赤らめて早稲田大学へと入学しました。入ってみてまず驚いたのが、自由溢れるキャンパスの雰囲気と学生が生み出す活気でした。数々の立て看が所狭しと立ち並び、トランジスタメガホンで情宣をしている左翼もいれば、ミニコミ誌の出店を出している人、ダンスパーティーの券を売る軟派学生、劇団公演のチラシを配る演劇青年など、さまざまな学生たちがおもいおもいに自己表現や主張を繰り出していました。管理教育が厳しいといわれる県で教育を受けてきたので、その対極ともいうべき大学の雰囲気に圧倒されました。」竹内一晴『空・間・開・放』
・「教育活動関連施設と課外活動関連施設の分離」新学生会館=徹底的な監視体制
・そもそも、早稲田大学のサークル文化が実り豊かであったのは、大学の枠をこえてはばひろい交流をもってきたからであった。あえていうならば、学外者こそがサークル文化の、しいていえば早稲田文化の支柱であったといってもいい。
・2001年7月31日引き渡し。およそ3000人集合。
東京大学駒場寮問題 1991-2001 10年間
駒場三鷹 相部屋→個室
北海道大学就活くたばれデモ
・大学3年からはじまる就職活動。採用面接では、コミュニケーション能力や問題解決能力がもとめられ、学生は自己啓発本を片手に、まるで宗教にでもはまったかのように自分磨きに必死になる。もちろんそれはしんどいことであるし、不採用でもかさなれば精神的にまいってしまう。
就職予備校化した大学が、学生の言葉やふるまいを就職に役だつように方向づけ、つねに他人に評価されることを意識させているのだとしたら、そんなものはいちど放棄してしまって、もっと自由な表現をさぐること、自己表現のスタイルはいくらでもありうるということをしめすこと。大切なのは、表現内容ではなく表現そのものである。純粋ビラというのは、学生たちのそんな気持ちを表現しているのではないかとおもった。
・第一に、就活のはじまる時期がとにかくはやすぎる。
・第二に、学生たちは過度に自己表現へと駆りたてられている。就活のときはもちろんのこと、「新しい教養」を重視するようになった大学は、実用英語や情報技術、ディスカッションのスキルや人間関係形成能力をたたきこむことにやっきになっている。やや極端ないいかたをすれば、学生は就活だけにむかっていく動員されたコミュニケーションをまなばされている。ほんらい、人とのつきあいかたや自己表現というのはいかようでもありうる。人間の生きかたそのものだからだ。しかし、企業はそれが仕事に役だつかどうかで選別をするわけだし、大学は企業に役だつものをただしいコミュニケーションとしておしえている。学生は、自己表現をすればするほど生を切り縮められ、しかも就活ではたいして年齢もちがわない面接官にダメだしをされ、自分の生きかたそのものを否定されている。たまらない。
・第三に、学生の根源的な知的欲求
・友人でも恋人でも、ほんきで遊んだ人間関係のなかでいつのまにか培われているもの
・一般的に、大学の起源は、13世紀初頭のヨーロッパとされている。なかでも、もっとも古いのがイタリアのボローニャ大学である。アラビア語文献の翻訳。学生たちが組合→ウニヴェルシタス(大学)。家賃交渉や教育内容、授業料の自治運営など。
・無名の、そして無数の知識人(卒業生、中退者)たちは、その生活を通じて、ヨーロッパ中に基礎の文化をひろめたのであった。
・「[大学は]世代間の批判的な対決が可能となる唯一の場である。それは恋愛や、政治や、芸術における多様な経験を可能にするかけがえのない場であり、多くの若い男女学生にとって、知識人の生活を社会秩序のなかに入るまえに多少なりとも経験できる最後のチャンスである。」クリストフ・シャルル アレゼール日本編『大学界改造要綱』
矢部史郎のスローガン「学生に賃金を」

【巻末特別座談会】さよなら、就活! こんにちは、夢の大学!(渡辺美樹+大滝雅史+岡山茂+栗原康)

渡辺美樹「ゆとり全共闘
・震災直後の2011年4月10日、「素人の乱」の松本哉さんたちの呼びかけで、高円寺で反原発デモがおこなわれ、すごい数のひとがあつまりました。わたしはそこで、大学2年生になってはじめて、社会運動が路上にでてきたのを目にしたんです。のちにいっしょに活動することになる学生たちも、このデモに触発されたという感じです。
・おなじころ、法政大学の飲酒闘争(学内での飲酒を禁止した大学当局への抵抗運動)、早稲田大学の「勝手に集会」(構内でのフリースピーチなどをつうじて自由空間をとりもどす運動)など、首都圏とその近郊の大学で、学内自治を問いなおすさまざまな活動が展開していました。それらが有機的につながったのが、ゆと全でした。当時、法政大学の5年生だった菅谷圭祐くんが連絡役となって、首都圏と近郊の大学運動の一種のハブとして機能することをめざしました。
・法政の運動との出会いには、けっこう運命的なところがありました。たまたま法政の授業に潜りにいったとき、菅谷くんがキャンパスでかき氷を配っていて、なにごとかとおもったんです。構内にはへんな漫画ビラが大量に貼ってあって、飲酒闘争とか書いてある。これはまさか!?……とおもって声をかけたんです。そこから、外堀公園での路上焼肉とかに誘われて行くようになり、早稲田のひとたちと出会ったり、ほかにも首都圏の学生との交流がたくさん生まれて、キャンパスの行き来がはじまた。ゆっと全はそのなかからできてきた、という感じです。
・高円寺のデモは「原発やめろ!」が主題でした。でも、わたし自身は、自分の足もとの問題を語っていきたかったし、法政なり早稲田なりもそういう、学生の生活圏から声をあげる運動だった。とにかく、テーマやトピックのちがいをこえて、声をあげていいんだ、ということを発見したのが、高円寺デモのおおきな影響だったとおもいます。
・2008年「年越し派遣村」「貧困問題ブーム」松本哉『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』
・7月には洞爺湖サミットがあって、反G8運動で北海道にきていた松本さんに直接お話をきく機会もあったりして、運動のイメージがさらに具体的になったところはあります。
・2009年は、ぼくは1年間休学していたのですが、そのあいだに京都大学の「くびくびカフェ」をおとずれて、ユニオン・エクスタシー(京都大学時間雇用職員組合)のひとたちと会うなど、関西との交流ができました。そして、東京では宮下公園ナイキ化反対のデモに参加することで、ようやくはじめてのデモ参加も果たしました。そのなかで、なんとなく関心はあっても、ぼんやりとしたものでしかなかった「デモの企画」というものを、自分でもやれるんじゃないか、と感じはじめた。それから、札幌に帰って前年の反G8運動にかかわっていたひとたちともコンタクトをとり、アドバイスをもらったりして、デモの具体化にむけて動きはじめました。
・なので、「就活くたばれデモ」は、就活を問題にしたデモとしては初だったけれど、反貧困運動、京大界隈のユニークな運動、ナイキ化反対運動、反洞爺湖サミットなどなど、各地のさまざまな社会運動から刺激をうけて、はじめて実現したものなんです。
・賛否両論、強い批判もあるが、議論が喚起できれば問題提起としては成功。
・身近なひとたちとの対話なくして運動もできない。
・「共同運営実験スペース りべるたん」
・ゆと全時代から、わたしたちのあいだでは、大学がたまり場ではなく通路になってしまっている、という認識がありました。各サークルをつないで当局と交渉する役割の文化連盟も、ただのお遊びサークルにすぎなくて、各サークルが島宇宙化して点在するだけで、学内に公共の空間がまったくない。大学のなかに学生がつどえる居場所がないなら、外につくろうということで、2013年夏くらいに、神楽坂に部屋を借りて「りべるたん」をオープンしました。そこから多少の経緯を経て、場所も東池袋に移り、いまにいたります。
・学生からして小官僚的になっていて、構内で鍋パーティーなんかしていると、「ちゃんとやりなよ」「やってもいいけど、ここではだめでしょ」とか言われたりする。
・ぼくも「りべるたん」になんどかおじゃましたことがありますが、だれだかわからないけど、続々とひとがあつまってくるという雰囲気ですね。あれ、すごくいいです。
・鍵はかけないようにしています。保安上どうなのか、いたいなことはあるかもしれませんが、いつもひらかれたスペースにしておきたいとおもっています。あと、大学に言論の自由や討論の場がないから、あらゆる思想のひとを排除しないことをこころがけてます。さがしづらくて、来ようとしてくれた人もよく迷うし、Google Mapにもでないような場所ですが、だれでもはいれます。以前、京大吉田寮におじゃましたときに、こういう場所って首都圏にないな、とおもったんですよね。だれでもうけいれてくれて、お酒をのんでいろいろなことを語りあったあとは、泊めてくれるような場所。
・2014年11月「シェアハウス大会議@東洋大学白山祭」
・いまの学生は、キャリアセミナーをうけさせられて、「自立」をうながされています。でもわたしは、傷をなめあうべきだし、肩をよせあうべきだとおもう。そんなふうに「共有的な自立」があってもいいとおもうんです。そういう話を学祭でやってみたかった。
・この「傷をなめあうこと」「共有的な自立」をもっと積極的に肯定していく意味で、ことしはシェアハウスをテーマにしました。貧困とか、若者の不安定雇用をベースにしたシェアハウスのありかたをさぐり、公共性を問いなおす、という問題提起だったとおもいます。
・サークルにしてもなんにしても、それぞれがタコツボ化していて、さまざまな考えかたをもった学生どうしによる侃々諤々の議論なんて、夢のまた夢という感じです。現実がそのように真逆だからこそ、公共の場としての大学、資本に唯一介入されない自由な場としての大学を、理想像としてもちたい。ひとはもっと語らっていいし、そういうことができる場であってほしいです。
・大学は、いろいろなことを考えたり、疑問をもったり、勉強したり、本を読んだりする行為が歓迎される場所だった。ほかの場所だと、「なんかむづかしいこと言ってるね」みたいな感じで敬遠されるような行為や態度が、好ましいものとされる場所。その点ですごく居心地がよかった。
・岡山茂『ハムレットの大学』「学生はみな、王子であり、王女である」
キリスト教の基盤、聖女のイメージ、美しい花のような大学都市
・知らないもの同士がともにいられる教会のような場
・学問だけでなく、自由な生をも可能にさせる場という意味では、大学こそが、賃金をもらえない、資産もない若いひとたちに、そうした場を提供するものであってほしいとおもいます。
・学び舎 廃校再利用 
・アレゼール日本 2012年首都圏非常勤講師組合 早稲田ユニオン 大学のストライキ
・菅谷圭祐「ゆとり全共闘総括文」
・京大 ユニオン・エクスタシー 2009-2011「くびくびカフェ」

おわりに

・スタミナ太郎
小林雅之『進学格差』批判する相手の本を読む
・好きなことを好きなだけまなんで、好きなように表現すればいい。たぶん、それでなにかいちどでも夢中になったことのあるひとは、その感覚をわすれはしない。卒業して何年たっても、またゼロ地点にたちもどりたい、とおもってしまう。わたしは大学に在籍しているか否かにかかわらず、そうしたことをのぞんでいる人たちのことを、学生というのだと思う。
・人類皆学生
新評論 吉住亜矢
・そもそも知識というものは、天然資源というか、ながい年月をかけて伝統的につちかわれてきた共同財というべきものである。だれのものでもなく、みんなが活用して、そのつどあたらしい知識へと錬成していく。ただ多様に、豊富になっていくだけのもの、ありがたい財産。それなのに、企業は知識をひとり占めして、ほかのひとにつかわせなかったり、値段をつけて優劣をきめたりしている。そんな迷惑行為をやっている。
・生の負債化。
・被曝学生、ゼロ地点にたつ
・2011年12月栗原の母方の祖父が死ぬ。栃木で佐野ラーメンを食べる。死を間近にすると見栄や義理など余計な欲望が削ぎ落とされて、純粋な欲望になっていく。
放射能のことを言うのはヒステリーだという圧力
立命館大学学食ふくしま定食のお盆をひっくり返せ 
・純然たる欲望(感情)に賭ける。恋がしたい、本が読みたい、おしゃべりがしたい、いっぱいかきたい、旅行がしたい、うまいものが食べたい、いますぐに。
・もういちど、もういちど。ゼロ地点はくりかえす。ひとはいつだって学生だ。いったい、わたしたちはあとなんど大学にいくことができるのだろうか。たえまないモラトリアムのために。学生に賃金を。これが本書の遺言だ。
6/20読了。老眼が進んで読めなかった。

【読書メモ】John Baichtal編 野中モモ訳『物を作って生きるには ――23人のMaker Proが語る仕事と生活』(オライリー・ジャパン 2015年)

序 ジョン・バイクタル 
はじめに ジョー・フーディ 
01 無職のやりかた ウェンディ・トレメイン 
02 INTERVIEW エミール・ペトロン(Tindie) 
03 メイカーシーンとともに進化する アレックス・ダイバ 
04 メイキング・イット ジミー・ディレスタ 
05 制約の力 マイケル・クランプス 
06 メイカースペースは旧来のアーティスト・スタジオを時代遅れのものとしたか? スーザン・ソラーズ 
07 君のメイカシェルパを連れて行け ロブ・クリングバーグ 
08 僕はメイカーじゃない、ビルダーだ ジョー・メノ 
09 実店舗をハックする アダム・ウルフ 
10 INTERVIEW ザック・スミス(MakerBot Industries共同設立者) 
11 好きなことをして生計を立てる ミッチ・アルトマン 
12 あなたはバイオキュリアス?  エリ・ジェントリーとティト・ジャンコウスキ 
13 INTERVIEW クリス・“アキバ”・ワン(Freaklab) 
14 作ることにはあなたが思っている以上に大きな力がある デヴィッド・ゴーントレット 
15 サプライチェーンは人間だ アンドリュー・“バニー”・フアン 
16 生活のためだけの仕事を辞めよう ソフィ・クラヴィッツ 
 
日本のMaker Proから
17 ワンボックスカーで旅立つ理由 ヒゲキタ 
18 七転び八起き妄想工作所 乙幡啓子 
19 INTERVIEW 山田斉(工房Emerge+) 
20 作るを作る テクノ手芸部 
21 INTERVIEW 石渡昌太(機楽株式会社) 
22 INTERVIEW 湯前裕介(株式会社ホットプロシード) 
訳者あとがき 野中モモ 

レゴファンの暗黒時代
創造的なおもちゃ
地元のハッカースペース
Arduino Raspberry Pi
Maker Faire
雑誌 「Make:
「病んだ社会に適応した健康などというものは存在しない」(ジッドゥ・クリシュナムルティ
人生を実験にしてるから、失敗にも価値がある
世界は根本的に豊か
メタルマックスDIY
Tindie
創造と販売の両方の能力が必要
kickstarter
ダフト・パンク
GetLoFi
家の地下室 ガレージ
「料理人が気持ちを込めたソウルフードがおいしいように、メイカーたちが作った製品は、その核の部分に決して取り戻すことができないそれぞれの人の時間が注がれているからこそ、特別な感じがするものなのです。」
「おかげで、自分のポートフォリオにいくつかのいい作品が加わることになった」
制約が創造性を解き放つ
(小ロットの発注)「最安値を求めてこの惑星じゅうをあたりました」
「アイデアはどこにもあるものとよく言われます。多くの人々がアイデアを持っているけれど、それをどうにかしようとする人はほとんどいません。創造性とインスピレーションがアイデアを生みますが、何かがはじまるのは実行することからなのです。」
破格で利用できる地元ハッカースペース
★「人間の真の仕事は、『おまえは稼いで暮らしを立てなければいけない』と教えられる以前に考えていたことまで戻ることだ」とバックミンスター・フラーは言っていました。
ミネアポリス Hack Factory - Twin Cities Maker
★「今日のメイカーたちは、エレクトロニクス、製造、工学、人材の使いかたに関して、何十年にもわたって積み重ねられた進歩の頂点に座っています――これらのすべてが、私たちが新しいものを生み出し、歴史上最も参入障壁の低い活発な市場にそれを送り出すことを可能にしています。20年前、私たちは工場を必要としていました。最小ロットを注文するのに前もって大金を投資しなければなりませんでした。多くの場合、昼間の仕事を辞めることを迫られました。そして、自分たちの製品を実現するのに必要な技術を学ぶために学校へ通うか、すでに学んだ誰かを雇うかしなければなりませんでした。今日、私たちに必要なものは、PayPalアカウントと、インターネット接続と、自分のアイデアは最高だと信じる、時に狂気すれすれの強い想いだけです。」
中身と同じようにパッケージにも気を配ることの大切さ
レゴ グランドエンポリウム
デザイン会社に3500ドル出して酷いデザインのロゴ
「正しいアプローチはすぐ目の前にありましたが、最初は私には見えなかったのです。私はこれをハリー・ポッターがはじめてダイアゴン横丁を見た時のような気持ちだと説明しています。」
Elance(Upwork) 途上国を選ぶ 人を雇える
「もしもあなたの作っているような製品への需要がそんなに大きいのなら、どうして他の誰かがまだそれを作っていないの?」
→「彼らは私ほどラッキーではなかったのでしょう。」
科学ギーク
「それから何年かして、カレッジに通っていた頃に里帰りしたとき、僕はレゴケースが廃品回収に出されそうになっているのを目にした。僕はいくつかのブロックを手に取り、テーブルの上で簡単な塔を作った。母はそれを見て、レゴブロックを取っておくことにした。」
レゴ サヴォア
Brickshelf レゴ・コミュニティ雑誌
街のはずれ すごく安い工場スペース
2万台製造 賭けに出た 
ハッカースペースとは、彼らの説明によれば実体のある場所で、協力的なコミュニティがある コンピューター、テクノロジー、ソフトウェア、あらゆる種類のアートとクラフト、科学、食べ物、そのスペースにいる人々が追求したいこと、やってみたいことは何でも、教え、学び、シェアするのだ。
人間にはコミュニティが必要で、かつ自分自身をクリエイティブに表現する必要があるんだ。
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
クリス・”アキバ”・ワン 千葉県鴨川
14 デヴィッド・・ゴーントレット「作ることにはあなたが思っている以上に大きな力がある」
『Making is Connecting』
19世紀後半 アーツ・アンド・クラフツ運動(ウィリアム・モリス
アーツ・アンド・クラフツ思想の一部は、たとえば中世のカテドラルにみられるガーゴイル像のような、つくりは粗いけど独特なものをおおいに賞賛したジョン・ラスキンから来ています。
ラスキンが主張していたのは、私たちが本当に評価すべきものの中に、伝えたい、自分を表現したい、何かを言いたい、他人に影響を与えたいという衝動を感じた作者の精神を見出せることが重要なのです。
DIYエートス
ロブ・ホプキンス『The power of Just Doing Stuff』(ただそれをすることの力)
ケイト・モロス『Make Your Own Luck』
ケヴィン・ケリー「1000人の本当のファン」 年1万円を1000人から
私たちは世界に「参加する」ことを期待されている
「最も重要なことはその一歩を踏み出すことだと私は考えます。あなたが何を作っているか、それが他の誰かまたは会社が作ったものと同じくらい良いか有効かきれいかどうかは関係ありません。重要なのは、あなたが何かを作ってそれを世界に送り出したということです。あなたは違いを生み出しているのです。ごく小さな違いでも、それがたったひとりにしか気づかれなくても構いません。それはあなたが踏み出した一歩なのだから、それは偉大な一歩なのです。」
情熱(パッション)が真の原動力
「メイカームーブメントがすばらしいのは、みんな単に自分がやりたいからやっているところです。」
マーク・ランコ(心理学者)「モデリング
「模倣」される。人を刺激する、意欲を起こされる。
現実には、人間の行う最もシンプルな業務は、ロボットにとっては信じられないぐらい難しいものなのです。どんな子どもでも、おもちゃがごちゃ混ぜになった箱から赤い2x1のレゴブロック一片を取り出すことができます。しかしいまのところ、この作業を人間と同じだけの速さで状況に対応して行うことができるロボットは存在しません。
深圳という21世紀の町工場都市 サプライチェーン
「会議室のパワーポイントより、ビールを介した仲間意識」
>>なぜアメリカで出来ないのか?<<
「私はパートタイムで働くのがいちばん好きです。これはフルタイムの仕事を辞めるにあたって、あきらかにいちばんリスクの少ない道です。暮らしていけるだけのお金がもらえるパートタイムの仕事に就くことができれば、ずっとやりたかったプロジェクトの制作に取り組む時間を楽しむこともできます。また、パートタイムの仕事は、今後の起業の第一歩、プロダクトデザインへの資金調達、次に何をしたいか決めるあいだの暮らしを支えるのに利用することもできるのです!」
日本編
ヒゲキタ 野尻抱介 ひとり100円
SF小説が読めて、工作ができて、ビールが飲めれば他になにもいらないではないか」
乙幡啓子
都内でも少なくなっているソフビ制作会社
JANコード
・ネーミング
・お客様の選ぶ楽しさ
・中身を最大限に魅力的に見せるにはやはりパッケージの力も重要。
ホットプロシード 湯前裕介
kickstarterなどクラウドファンディングに否定的
DIY
失敗を恐れない失敗から学ぶ
やりたいことをやっている人の清々しさ
野中モモ キム・ゴードン
5/9読了

【読書メモ】『ユリイカ 2016年1月臨時増刊号◎総特集=坂口恭平』

目次
【錯綜/交響する世界】
駆け込み訴え / 坂口恭平
苦しみの淵に降り立つ音 / 石牟礼道子坂口恭平
熊本の文人たちと坂口恭平 熊本文学隊番頭からの眺め / 跡上史郎
病者にして見者の手紙 『徘徊タクシー』と『現実脱出論』 / 安藤礼二
 
【歌う身体、その振る舞い】
西港へ / 前野健太
笑い方をデザインする / 立川吉笑
音楽集/詩集『ルリビタキ』 音源DL QRコード付 / 坂口恭平
星座を描くように / 七尾旅人
魔法使いからの贈り物 / 中納良恵EGO-WRAPPIN’
歌はどこまでもあなたとともにある 坂口恭平ライブショウについて / 矢野利裕
 
【カラーグラビア】
坂口家 / 写真・文=石川直樹
 
【書かれた空間──ウィコゲニアに向かって】
閉じた家、開いた家 坂口恭平の小説 / 都甲幸治~  親密な開かれた空間 坂口恭平の『家族の哲学』をめぐって / 篠原雅武
家族:原因でもなく処方箋でもなく創造の場としての / 柳澤田実
坂口恭平という空間 『幻年時代』を読む / 松家理恵
ポリフォニーを“聞き流す” / 斎藤環
坂口恭平の二律背反 『家族の哲学』に応答するための助走ノート / 杉田俊介
坂口について / いとうせいこう
 
【思考=都市、あるいは描線の拡散】
僕と建築の歴史から見た坂口くん / 五十嵐太郎
書斎と街の往還による建築 実現すべきユートピア設計の可能性 / 藤村龍至坂口恭平
ドローイング『アフリカの印象』 レーモン・ルーセル『アフリカの印象』のための挿絵 / 坂口恭平
恭平へ アジスアベバ、岐阜、大阪、パリ、ロンドン / 川瀬慈
ゼロセンターの思い出と坂口恭平のアート / 小倉正史
坂口恭平 新政府展──あなたは何大臣ですか?」 / 和多利浩一
映画『モバイルハウスのつくりかた』を製作して / 本田孝義
 
【知(覚)の拡張とその技法】
猿の部屋へようこそ 坂口恭平の直接行動論 / 栗原康
09081064666 / 五所純子
パブリック=プライベート / 毛利嘉孝
 
【資料】
坂口恭平活動LOG / 九龍ジョー+編集部

駆け込み訴え / 坂口恭平

太宰治『駈込み訴え』
「原稿用紙かうんたぁ」
鬱 被害妄想 自分に平手打ち 壁に頭打ち
とてつもない小心者 でかつ 新政府をはじめたりしちゃう大胆な人間

苦しみの淵に降り立つ音 / 石牟礼道子坂口恭平

子どもたちが、ばちばちめらめら焚き火を囲み、長老がなにか物語っている
お墓参りは突然行くしかない
熊本市 近津 鹿島神社 とんでもない火祭り
井戸端会議の記憶
16歳で小学教員 渡辺京二『もうひとつのこの世《石牟礼道子の宇宙》』

熊本の文人たちと坂口恭平 熊本文学隊番頭からの眺め / 跡上史郎

伊藤比呂美
沢畑亨
熊本高校 偏差値75
石牟礼道子の音楽」「これは村の祭りなのじゃ」
「さあ、大杉栄がもうすぐ死にますよ!」などと言いながら、恭平が突然ギターを掻き鳴らし始める。名曲「魔子よ、魔子よ」である。
吉本由美 村上春樹 都築響一 橙書店で朗読会
orange 池澤夏樹 高橋源一郎 伊藤比呂美 渡辺京二

病者にして見者の手紙 『徘徊タクシー』と『現実脱出論』 / 安藤礼二

ドゥルーズ『批評と臨床』
文学とは錯乱である。作家とは、錯乱の直中で、通常では見ることのできない現実の「外」にある光景を見ることができた者であり、現実の「外」にある諸感覚、響き、香り、味わい等々を感じ取ることができた者である。
錯乱は狂気と区別がつかないし、作家は病者と区別がつかない
坂口恭平は、自らの精神と自らの身体を素材――実験材料――として、錯乱と狂気、見者と病者の関係、相互に転換することを決してやめないそのプロセスを生き続けている。
社会以前あるいは社会以後に存在する者たち(子供と老人)、社会から疎外された者たち(路上生活者に代表される)以外には、世界=現実の豊饒さを認識できない。
アルチュール・ランボー「見者の手紙」 錯乱を通して現実の「外」を見る
ランボー「言葉の錬金術」 路上生活者たち「物質の錬金術
人間のなかに「太古のヒト」「野生のヒト」を甦らせる。
南方熊楠曼荼羅」(宇宙) 「都市」=思考の「巣」

【歌う身体、その振る舞い】
西港へ / 前野健太
笑い方をデザインする / 立川吉笑

カーニバルやれって。カーニバルやれないんだよ、なんでかっていうと、踊ってきてないんだよ、振る舞いしてないんだよねほんとに。
坂口恭平という演劇作品」 自身を作品として振る舞い生きる 人生なんてただ生きてただ死んでいくものだから 
「吾輩は鬱目漱石で。鬱目漱石探偵事務所を立ち上げました」

音楽集/詩集『ルリビタキ』 音源DL QRコード付 / 坂口恭平
星座を描くように / 七尾旅人

マドモアゼル朱鷺
光州ゼロセンター
音楽の所有権

魔法使いからの贈り物 / 中納良恵EGO-WRAPPIN’
歌はどこまでもあなたとともにある 坂口恭平ライブショウについて / 矢野利裕

「貧乏揺すりは、周りの人には、ただ落ち着きがないように映っているかもしれない。しかし、この貧乏揺すりこそが、創造の重要な助走なのである。」

【書かれた空間──ウィコゲニアに向かって】
閉じた家、開いた家 坂口恭平の小説 / 都甲幸治
親密な開かれた空間 坂口恭平の『家族の哲学』をめぐって / 篠原雅武

「生きるのが辛い」という簡潔だが思い問題
私との親密なものを見つけ出すためだけ 親密なもの=何となく惹かれるという感触
坂口には、社会ではなくて人間が見えている。「その人の特徴、歩んできたであろう道、これからの必須事項」が見えている。
マヌエル・デランダ アーヴィング・ゴッフマン 偶然的で予期せぬ出会いからの集まり
零亭での涙
クリストファー・アレグザンダー『都市はツリーではない』 網目状
白川 キャットコミュニティ ベンチという建築 「系」
もろもろのエレメントが共同で作用し、あるいはたがいにはたらきかけ合うことによって、相互に帰属し合う
サイバネティクス理論のいう「システム」
「現実への高度な感度」その鋭さ つくることによる現実への回帰

【カラーグラビア】
坂口家 / 写真・文=石川直樹

ゼロセンター写真 宮本常一「記録されたものしか、記憶にとどめられない」

家族:原因でもなく処方箋でもなく創造の場としての / 柳澤田実
坂口恭平という空間 『幻年時代』を読む / 松家理恵
ポリフォニーを“聞き流す” / 斎藤環
坂口恭平の二律背反 『家族の哲学』に応答するための助走ノート / 杉田俊介

多摩川文明』
坂口氏の中には、極端なラディカルさと、極端に保守的な面が混在している。金銭に対する過剰な執着と、無償で他人に分け与える大盤振る舞いと。自分の名前を売り出したいという野心と、面白い思った人には上下貴賤なく声をかける気さくさと。「英雄色を好む」的な淫蕩さと、妻子に対する純真な愛情と。
自己啓発=力の絶対信奉
疾走し蒸発した叔父さんの行方を探し続ける
ポリアモリー 不倫 <多夫多妻多子制> 男の 女の所有 子供の所有 愛情の所有 独占欲

坂口について / いとうせいこう

1920年代のパリのカフェ 

【思考=都市、あるいは描線の拡散】
僕と建築の歴史から見た坂口くん / 五十嵐太郎

長嶋千聡ダンボールハウス
今和次郎のスケッチ
家を「所有」するわれわれは、商品住宅を「購入」したり、既存の物件を「賃貸」によって暮らすのに対し、ホームレスの彼らこそが工業部材をリサイクルしながら、自らの住処をセルフビルドで「構築」しているという逆説。
土地所有の問題 司馬遼太郎 ぬやま・ひろし対談 『ひとびとの跫音』
菅直人 土地基本法第4条
「国家・内・国家を建設せよ」東北大学 デザイン講座の課題
大本教 高橋和巳邪宗門』 社会革命とオルタナティブな共同体
ウルリヒ・コンラーツ『幻想の建築』 坂崎乙郎『幻想の建築』 下村純一『不思議な建築』
シュヴァルの理想宮、ワッツ・タワー
ジャン・ジャック・ルクー ブレー ニュートン記念堂 ルドゥーの理想都市
バックミンスター・フラー 川合健二 石山修武 森川嘉一郎 東京R不動産 馬場正尊 光嶋裕介 
川俣正 PHスタジオ

書斎と街の往還による建築 実現すべきユートピア設計の可能性 / 藤村龍至坂口恭平

石山修武「幻庵」
ダイアリーとジャーナル 書斎派
クリストファー・アレグザンダー フランク・ロイド・ライト「タリアセン」 コルビュジエ
石山「星の子愛児園」「世田谷村」
北海道民芸 大原総一郎 ロゴ 芹沢銈介
書斎机 文房
トマス・モア ユートピア 「ウ・トポス」ここではない場所 「ウ・家族」
午前中に仕事を終えて、午後はお金を持ってる旦那みたいに遊んでる
「文化」っていう概念をもっとちゃんとしたものに変えたい 「文治教化」
レム・コールハース イヴ・ブリュニエ(造園家) ヤニス・クセナキス
分離派建築会 山田守 伊東忠太
おれが建築のなかで一番好きなのは動線設計だから、やっぱり人間動かしたいんだろうなと思う。
ルーラル(農村)スタジオ フィレンツェ スーパースタジオ
ゼロ山 山をただでもらったから
ジュラス 嫉妬という概念がすごい重要 人は嫉妬すればするほど同化しようとする
オルダス・ハクスリー 完全な空想都市
そこに感情っていうのが加わってくると非常におもしろい。別にパッションとかそういうのだけではなく、むしろいろいろな揺らいでる感情の色が塗られていくともっとおもしろい複雑な建築家になれると思う

ドローイング『アフリカの印象』 レーモン・ルーセル『アフリカの印象』のための挿絵 / 坂口恭平
恭平へ アジスアベバ、岐阜、大阪、パリ、ロンドン / 川瀬慈

映像人類学
マルカート=アジスアベバにある巨大で混沌とした市場
石倉敏明(文化人類学 芸術学) 新宿ゴールデン街
ロンドン テート・モダン
どっかの雑誌に、戦後70年についての見解をたずねられ「俺はいつだって戦中だ」

ゼロセンターの思い出と坂口恭平のアート / 小倉正史

高円寺4Dガーデン 
「ひとりでできること、それをひとりだけですること、坂口が子どものころから求めて実践してきたのがそれであるから、独力で尋常でないなにか(アートであろうと建築であろうと、なんであろうと)を実現していた人、あるいは、現に実現している人に、坂口の関心が引かれたのは当然のことだったろう。」
レーモン・ルーセル『アフリカの印象』
ハラルド・ゼーマン(キュレーター) アール・ブリュットアウトサイダー・アート
スイス アスコナ山中 モンテ・ヴェリタ

坂口恭平 新政府展──あなたは何大臣ですか?」 / 和多利浩一

2012年11月17日 ワタリウム美術館 新政府展 
和多利志津子 心臓発作 ナム・ジュン・パイク ドナルド・ジャッド

映画『モバイルハウスのつくりかた』を製作して / 本田孝義

天才的な記憶力 船越さんとの師弟関係

【知(覚)の拡張とその技法】
猿の部屋へようこそ 坂口恭平の直接行動論 / 栗原康

おしゃれイズム「舘ひろし コンビニにいく」
資本主義=街がゲーセン コインを入れないと遊べない
カネがなければ生きていけない社会にして、カネをコントロールすることで人間をコントロールする。
ゼロ円特区の話 アナキズム「直接行動」
「どんなに生きぬく知恵をもっていたとしても、それをねじふせて、ひとを労働に囲いこもうとするのが資本主義というものだ。ひとを借金漬けにしてでも、奴隷にしてでも。」

09081064666 / 五所純子
パブリック=プライベート / 毛利嘉孝

赤瀬川原平「宇宙の缶詰」「東京ミキサー計画: ハイレッド・センター直接行動の記錄」
寒空のボート 各国の代表がテーブルの下に潜ってディスカッション

【資料】
坂口恭平活動LOG / 九龍ジョー+編集部

横浜ZAIM BankART
2010年10月『ビートたけしの究極の大疑問SP』多摩川を案内
→ フィリップ・K・ディック パラレルワールドは存在していることを本気で信じている人だけできる。
中沢新一
矢部史郎
直島で浅田彰トーク
宮台真司 高木新平
水道橋博士
人生が作品 「誰しもついスキップしたくなる時」
 
4/26読了

【読書メモ】橘玲『幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社 2017年)


目次
Prologue あなたがいまここに存在することがひとつの奇跡
Part0 「お金持ち」と「貧乏人」の三位一体幸福論
Chapter1 幸福の3つのインフラ
幸福の3つのインフラ/「資本」と「資産」はコインの裏表/金融資本と金融資産/人的資本と社会資本
Chapter2 「最貧困」から人生を考える
リア充とプア充/デフレ化するセックス/風俗で働く高学歴女子大生/貧困への「3つの障害」
Chapter3 人生の8つのパターン
幸福の製造装置
Part1 自由のための金融資産
Chapter4 お金と幸福の関係
市場原理主義者」からの問い/誰でも億万長者になれる残酷な時代/サラリーマンが生涯に払う「税金」は1億円/お金が増えても幸福にはなれない?
Chapter5 マイナス金利の世界
市場は複雑系/資本主義ってなんだろう?/やせほそる金融資産/日本が破産したらどうする?
Part2 自己実現のための人的資本
Chapter6 人的資本は「富の源泉」
ダイエットで自己実現できる理由/経済合理的に倹約する/ノーベル賞学者の人的資本理論/20代で5500万円の人的資本/自己実現という「聖杯」/かけがえのない自分になること
Chapter7 クリエイティブクラスとマックジョブ
リベラル化する世界/トランプ現象はリベラル化への反動/知識社会に適応できなければ脱落する/クリエイティブクラスとマックジョブ/月並みの国と果ての国/ブラックスワンを夢見て/マックジョブ自己実現はあるのか
Chapter8 サラリーマンという生き方
仕事で自己実現を目指してはいけない/働くために生きているのかわからなくなってからが人生/ジョブ型とメンバーシップ型/ネットオークションが善人をつくる?/ポジティブゲームとネガティブゲーム/電気ショックを与えられたイヌ/長時間労働うつ病の原因ではない/日本では医者もサラリーマン/「身分差別社会」日本/日本人は会社が大嫌い/会社への信用も労働生産性も先進国で最低/それでも若者は「優遇」されている/日本的雇用のメリットと末路
Chapter9 オンリーワンでナンバーワンの戦略
優秀なバイオリニストは個人学習から/スペシャリストになるには/ゾウリムシに競争戦略を学ぶ/弱者の3つの戦略/会社はなぜすべてを支配しないのか?/組織の取引コストは市場より大きい/大企業からはイノベーションは生まれない/アウトソーシングされるイノベーションフリーエージェントへの道
Chapter10 超高齢社会の唯一の戦略
日本人は何歳まで生きるか?/「老後問題」とは老後が長すぎること
Part3 幸福のための社会資本
Chapter11 友だちとはなんだろう?
3つの世界/友情の核は平等体験/「市場の倫理」と「統治の倫理」/「人殺し」は政治空間でしか起こらない/愛情に包まれた億万長者は物語のなかにしかいない
Chapter12 個人と間人
日本語に混乱する日本人/「日本化」するアメリカ人/アメリカの過労死/日本的経営で変容するアメリカ企業/カルト宗教の洗脳?/搾取されるやりがい/日本の閉塞感の正体
Chapter13 うつは日本の風土病なのかうつとセロトニン/遺伝子によって未来がわかる?/うつ病になりやすいひとがもっとも楽天的?/日本人はもっと幸福になれる
Chapter14 幸福になれるフリーエージェント戦略
フットサルのルールは一人参加/高校生のセックス相関図/幸福は伝染する/煩悩から自由になった「ソロ充」/公務員とフリーエージェントフリーエージェントという戦略/「幸福な人生」の最適ポートフォリオ
Chapter15 「ほんとうの自分」はどこにいる?
Epilogue それでも幸福になるのは難しい
マイケルは幸福だったのか/幸福と逆境の不都合な関係
あとがき

Prologue あなたがいまここに存在することがひとつの奇跡

「冷静に歴史を振り返れば、「経済的成功への機会」という意味で、現在の日本が過去のどの時代よりも恵まれていることは間違いありません。」

Part0 「お金持ち」と「貧乏人」の三位一体幸福論

幸福の3つの条件
①自由 ②自己実現 ③共同体=絆
幸福の3つのインフラ
①金融資産 ②人的資本 ③社会資本
鈴木大介『最貧困女子』
"リア充"、”プア充” 「木更津キャッツアイ」イツメン(いつものメンバー)
「さっさと彼氏と共稼ぎになったほうが生活も人生も充実」するから早婚が当然で、「(この辺では)女は30代になっても賃金上がらないし、むしろ年食うほどマトモな仕事がなくなる」から、金はなくても体力がある20代で第一子を産んで、30歳になるまでに「気合で」子どもを小学校に上げる」
アジア諸国→家族 日本のマイルドヤンキー→友だち
中村淳彦『日本の風俗嬢』
3つの障害 精神障害発達障害、知的障害 現代社会最大のタブー 生活保護を頑なに拒む
プア充と最貧困女子を分かつ「社会(関係)資本(友だち、仲間)」
「人生を「金融資産」「人的資本」「社会資本」という3つの資本=資産で把握すると、幸福というとらえがたいものにある程度かたちを与え、現実的な戦略を考えることができるようになります。これが、本書の基本的なアイデアです。」

Part1 自由のための金融資産

カンボジアの観光ガイド
市場原理主義者」からの問い 食えなくても、正義を貫くことができるか?
経済的自立の意味 
ロバート・キヨサキ『金持ち父さん貧乏父さん』 
トマス・J・スタンリー&ウィリアム・D・ダンコ『となりの億万長者 ― 成功を生む7つの法則』
橘玲『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ』
=マイクロ法人 社会保険料の半分会社負担はサラリーマンの負担を軽く見せるための詐術
「限界効用の逓減」(ビールは1杯目が美味しい)
=うれしいことにも悲しいことにもいずれ慣れてしまうという、ヒトの心理にもとづく普遍的な法則
年収800万(夫婦で1500万)でほとんど限界 金融資産は1億円
単純なルールから複雑なネットワークを自己組織化していくこと=「複雑系ブノワ・マンデルブロ
私の理解では資本主義=資本市場とは「株式会社によって自己組織化した複雑系のネットワーク」
「株式会社というのは「複数の株主が有限責任で事業に投資することでリスクを分散する仕組み」で、大航海時代の商人はこれによって、嵐で商船が沈んだり、海賊に襲われて全財産を失うリスクを回避できました。」
「経済成長というのは市場取引の規模が拡大していくことですが、突き詰めて考えれば、その原動力は「もっとゆたかになりたい」「家族を幸福にしたい」というひとびと(市場プレイヤー)の欲望です。この欲望には(いまのところ)かぎりがありませんから、人口が増えたり、貧しい国のひとたちが市場に参入することで自己増殖していきます。」
マイナス金利 → 金融資産の価値が減る すなわち 人的資本、社会資本の価値が相対的に上がる
日本破綻論 → 通貨の価値は相対的なものなので、円が下がればドル(ユーロ)が上がり、ドル(ユーロ)が下がれば円が上がります。すべての通貨が一斉に下がることはないのですから、適切に資産を国際分散しておけば、円が紙くずになろうが、ドル経済が崩壊しようが、全体の資産価値は影響を受けない。

Part2 自己実現のための人的資本

「収入を増やす」ことと「支出を減らす」こと
ダイエットと片付けの自己実現
「人的資本」=ゲーリー・ベッカー
社会人になったばかりの若者の人的資本=5500万円
アブラハム・マズロー「欲求の5段階仮説」
自己実現=「かけがえのない自分になること」
自分探し=「どこかにまだ出会っていない”ほんとうのわたし”がいる」
お金はたしかに幻想ですが、それが共同幻想になるまで共有されると「現実」に変わり、私たちを魅了し、拘束するのです。
自己実現=聖杯
★いったん共同幻想になれば価値観は「現実化」する
「働くこと」に2つの目標
①人的資本からより多くの富を手に入れる
②人的資本を使って自己実現する
新しい働き方のキーワード
①知識社会化 ②グローバル化 ③リベラル化(=シリコンバレー型)
③=LGBT、国籍関係ない
米大統領選ではドナルド・トランプの人種差別的・女性差別的発言が問題とされ、それにもかかわらず多くの白人有権者がトランプに投票したことがアメリカ社会の「右傾化」を象徴しているといわれましたが、彼らは「アメリカを白人国家にしろ」とか、「奴隷制を復活させろ」と主張しているわけではありません。「反知性主義グローバリズム批判・保守化」というのは、愛煙家による「嫌煙ファシズム」批判と同じで、行きすぎた「知識社会化・グローバル化・リベラル化」に対するバックラッシュ(反動)なのです。
日本は対応出来なかった
クリエイティブクラスとマックジョブ
拡張性の有無
ニコラス・タレブ『ブラック・スワン
「月並みの国」、「果ての国」
ベルカーブ(正規分布)、ロングテール
クリエイティブクラス=果ての国
「労働」「キャリア」「天職」=バックオフィス(マックジョブ)、スペシャリスト、クリエイター
幸福研究の第一人者 ソニア・リュボミアスキー『幸せがずっと続く12の行動習慣』
「清掃の仕事」
村田沙耶香コンビニ人間』コンビニのマニュアル作業で自己実現する主人公
やりがい搾取
楠木新『人事部は見ている』『サラリーマンは、二度会社を辞める。』
「君は何か基本的なところで考え違いをしていないか?君が毎日会社で働くことができるのであれば、まず飛び抜けた個性は持ち合わせていないと思ったほうがいい。突出した個性のある人材なら入社もできないし、たとえ働き出しても長くは続かない」
「魅力ある個性や突出した能力を持つ人材は落とした」「有能だが個性的な人材は真っ先に選考から外される」
→結局うつ病になる
世界で日本にしか存在しない”ザ・サラリーマン”という「希少種」の本当の姿
2015年クリスマス 電通 高橋まつりさん SNS
「休日返上で作った資料をボロくそに言われた もう体も心もズタズタだ」「生きているために働いているのか、働くために生きているのかわからなくなってからが人生」「男性上司から女子力がないだのなんだのと言われるの、笑いを取るためのいじりだとしても我慢の限界である」「仕事も人生も、とてもつらい。今までありがとう」母にメール。
「ジョブ型」=誰でも代替可能 と 「メンバーシップ型」=会員制組織
終身雇用と年功序列で収入を安定させることは、他者の仕事との代替可能性(天職可能性)を放棄したことへの代償なのです。
サラリーマンの働き方は、スペシャリスト(専門家)に対して「ゼネラリスト」と呼ばれますが、これは「サラリーマン」と同じく和製英語で海外ではまったく通じません。
非正規社員」が日本にしかない特殊な制度で、同じ仕事をしても給与が異なるのは「身分差別」ではないかと、ILO(国際労働機関)など国際社会から疑惑を向けられている。
橘玲『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』=伽藍とバザール ネットオークションの評価
マーティン・セリグマン「学習性無力感」電気ショックの犬 =閉鎖系である伽藍空間の日本のサラリーマン
開放空間=ポジティブゲーム(できるだけ目立ち、よい評価を集める)
閉鎖空間=ネガティブゲーム(できるだけ目立たず、悪評を避ける)
プロフェッショナル=プロフェッションを持つ者
プロフェッション=神との契約によって献身を誓った職業(宗教家、医師、弁護士)
見波利幸『心が折れる職場』
(サラリーマンの)ウツの原因は実はスキル不足
「サラリーマンは”職業”ではなく、”身分”である」 ということは、非正規社員も”身分”
海外は若者の失業率が高い
「好きなことに人的資本のすべてを投入する。」
生物の「棲み分け」理論 稲垣栄洋『弱者の戦略』
①小さな土俵で勝負する ②複雑さを味方につける ③変化を好む
アダム・スミス 世の中になぜ会社があるか?→「分業した方が効率がいい」から
なぜ地球上は1社のグローバル企業=政府によって統治されないのか?
ロナルド・コース「取引コスト理論」
=組織が複雑になるほど、取引コストは幾何級数的に大きくなる
「標準化はコスト減、カスタマイズはコスト増を招く」
→大企業からはイノベーションは生まれない理由 マクドナルド徹底した標準化
ロッキード「スカンクワークス」開発チーム
管理主義と革新性はトレードオフで、その両立はきわめて困難
アウトソーシングされるイノベーション(テクノロジー、コンテンツ)
ここに活路がある
基本戦略にまとめ
①好きなことに人的資本のすべてを投入する。
②好きなことをマネタイズ(ビジネス化)できるニッチを見つける。
③官僚化した組織との取引から収益を獲得する。
ゲーム、アプリ開発

Part3 幸福のための社会資本

「幸福」は社会資本からしか生まれない
巨万の富を手にしたとしても、そのことを誰ひとり知らなければ、たんなる紙切れ(電子データ)でしかありません。人的資本は「自己実現」に必須ですが、それは会社内や社会での高い評価に依存しています。
赤ん坊が泣くことと同様に、怒りや喜びなどのあらゆる感情の基礎には、そのように振る舞うことでなんらかの利益を獲得できる「進化論的合理性」があります。
だとすれば「幸福」という感情も、同じ進化論的合理性の産物であるはずです。徹底して社会的な動物であるヒトは、家族や仲間と”強いつながり”を感じたり、共同体のなかで高い評価を得たときに幸福感を感じるような生得的プログラムを持っているのです。
人間関係 → 「愛情空間」「友情空間」「貨幣空間」
愛情空間は2人から最大でも5人くらいの小さな人間関係で、半径10メートルくらいで収まってしまいます。ところがこの小さな世界が、私たちの人生の価値の大半を占めています。
友情空間は最大でも20-30人くらいで、半径100メートルほどの人間関係です。地方の若者たちは、中学や高校の同級生でつくられたこのベタな仲間を「イツメン(いつものメンバー)」と呼んでいます。
80%、19%、1%
家族の自治 国家が介入するのはNG
困っているひとを放置して家族の幸福を優先しても、誰にも文句はいわれません。 ← >>これがおかしい!<<
友だち=たまたま学校で同じクラスになったという偶然から生まれる人間関係。それだけ。あとは会社の同期とママ友。
地球上には何十億人ものひとが生きていますが、私たちはこのきわめて限定的な条件を満たしたひととしか友だちになれません。そのうえ仮に友だちになったとしても、それを維持するのはもっと難しいのですから、「友だち」がいること自体がひとつの奇跡です。
こうして、40代を過ぎた頃から友だちは急速に減っていきます。私は「友だちが一人もいない」と悩んでいるひとを何人か知っていますが、彼らは地方から上京し、自営業で働いています。日本的な友だち関係から完全に切れたところで生活しているのですから、友だちがいないのは当たり前で、性格に問題があるとか、生き方が間違っているとか、そんなことで悩む必要はまったくありません。
友だち関係の核にあるものは何か。それをひと言でいうなら「平等体験」です。
ここで大事なのは、クラスという新しい共同体のなかで、みんなが横一列に並んでいるという主観的な経験です。これが平等体験で、お互いの関係の核にこれがあるからこそ「友情」が成立します。
「ママ友」=子どもという平等体験
「プライスレス」と「プライサブル」
ジェイン・ジェイコブズ『市場の倫理 統治の倫理』
権力ゲーム(武士道)とお金儲けゲーム(商人道)
権力ゲーム カール・シュミット「あいつは敵だ。敵を殺せ」
二つの空間が混じり合うところで、社会の根幹は腐ってしまう。
同様に、個人の人生においても金融資産(貨幣空間)と社会資本(政治空間)は原理的に両立不可能です。富(金融資産)が大きくなると、すべての人間関係に金銭が介在するようになって友情は壊れていきます。地方のマイルドヤンキーが友情を維持できるのは、全員が平等に貧しいからです。
個人と間人
リチャード・E・ニスベット『木を見る西洋人 森を見る東洋人』
西洋人 個人や倫理を重視 東洋人 集団や人間関係を重視
個人(individual man)間人(contextual man)
関係性(コンテキスト)に埋め込まれている「共同体のなかの自分」。
日本語の尊敬語と謙譲語の文化
大野正和『まなざしに管理される職場』
1979エズラ・ヴォーゲル『ジャパン アズ ナンバーワン』
チームワークとピア(仲間)プレッシャー
至上のものは仲間・同僚
日本的経営=連帯責任、パノプティコン(周囲の目)
「個サル」の話
しめった人間関係→ドライな人間関係
「弱いつながり」
アメリカの高校のセックス相関図。
A(末端)とB(リーダー)とC(トリックスター
「幸福の伝染」効果 行動科学ポール・ドーラン『幸せな選択、不幸な選択: 行動科学で最高の人生をデザインする』
「どこに引越すか?」「好きな友だちの近くに引越すべき」
荒川和久『超ソロ充社会「独身大国・日本」の衝撃』
ソロ充を本書の枠組みで説明するならば、「すべての社会資本を政治空間から貨幣空間に置き換えたひとたち」
彼女とのデートはキャバクラで代用し、セックスはデリヘルなど風俗を使い、クラブやパーティ、「個サル」…
ソロ充=人間関係の煩悩から解き放たれた悟り
「喜びを失うことで悲しまなくてもいい生き方」
ダニエル・ピンク(アル・ゴアのスピーチライター)『フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか』
デイビッド ブルックスアメリカ新上流階級 ボボズ』
橘玲推奨のポートフォリオ基本戦略
金融資産→経済的独立
人的資本→自己実現
社会資本→愛情空間(強いつながり)貨幣空間(弱いつながり)
「ほんとうの自分」とは、幼い頃に友だちグループのなかで選び取った「役割=キャラ」の別の名前。
子どもの頃の自分(キャラ)はいつまでもこころのなかに残り、「ぼく(わたし)を見つけてよ」と訴えつづけるのです。

Epilogue それでも幸福になるのは難しい

若い頃じゃなくても苦労は買ってでもしろ
あとがき
「ひとは、自分と似ているひとからの助言がもっとも役に立つ。」
4/11読了

土屋トカチ監督『フツーの仕事がしたい』

2008年10月劇場公開
皆倉信和さん
東都物流 セメント運送業
月の労働時間最長552時間
完全歩合制(残業代なし) 歩合率一方的な引き下げ
連帯ユニオン(全日本建設運輸連帯労働組合)加入
会社の妨害工作
住友大阪セメント フコックス
過積載 建設工期の問題
謝罪と環境改善を勝ち取る
音楽マーガレットズロース
2019年10月19日心筋梗塞で死亡。享年49歳。