マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【読書メモ】『広告批評95号 特集●明るい明日は原発から』(1987年6月号)


目次

特集●明るい明日は原発から

原発広告の「正しい」読み方 高木仁三郎

・1基建てるのに4000~5000億円。
・これは政府の立場からすると、たいへんな景気対策です。特に鉄はいま冷えこんでますが、原子炉というのは鉄の塊みたいなものですから、一つ注文がくればそういう不況産業がかなり潤う。しかも多数の会社がそこにぶら下がっているわけで、政府としてはエネルギーの問題だけでなく、産業対策としてもやっているということが言えるでしょう。
・それから、"一番大事なのは本当に石油代替性があるのだろうか”という問題。原子力は発電しかできませんから、原子力が節約している石油は、石油の中でも"C重油"、という、発電に使う部分です。ところが石油というのは"連産品"と言って、原油を買ってくると、揮発性の部分からはガソリンを取り、また精留して軽油を取り、いろいろな成分を取り出していく。そうやって最後に残ったのが重油で、その中の“C重油”のかなりの部分を発電に回しているわけですが、それは原油の3割程度なんです。漁船はだいたいA重油軽油を使ってますから、これはもうほとんど関係がない。
・いま原油の輸入量は、ガソリンの需要量で決めているんです。必要なガソリンが取れる分だけ原油を輸入して、あとに機械的に3割の重油が出てきてしまう。重油重油が余るからといって原油を輸入しないわけにはいかないのです。だから、原子力重油を浮かしてみても、逆に重油が余ったりする。すでに実際、備蓄基地がいっぱいで、タンカーが余った重油を積んだまま港をウロウロ立ち往生して、石油会社が政府に補償を求めるという事態が起こっているんです。
・ついでに言えば、石油パニックのときの"あと30年で石油がなくなる”という説、あれは立ち消えになりました。というか、いまでも"あと30年”と言っている。この数字は、その時点での確認埋蔵量を消費量で割って出しているわけですが、一方で開発がどんどん進みますから埋蔵量も増え、消費が増えてもそれでバランスが取れている。50年ぐらい前から"あと30年”と言っている、そういう性質の数字です。いまは北海油田やメキシコ油田が新たに見つかって、その数字はむしろ増えているんじゃないでしょうか。
・最近では確かに、原子力発電所の"国産化率"は上がってきたと言われています。原子炉全体の中で、国産のものが占める割合が増えてきた。ところがいまでも、アメリカに押さえられているノウハウとかパテントはずいぶんあるんです。それはある種のポンプとかそういうものだったりするんですが、それはかなり核心の部分であって、いくら国産化率が上がっても、日本の原子炉はアメリカから完全には独立できないわけです。

原発を選んだのは俺たちか 野坂昭如

・電気によって支えられる文明 電気=文明そのもの 電気文明
・いちばん大事なのは食い物 食い物があればやっていける アルゼンチン・ブラジル=牛肉と穀物
・農業と原子力発電はちょうどものごとの裏表
・人間というのは、便利なものにどうしても行ってしまうものなんですよ。だから、いままでこうやってやってきた、進歩もしてきた。だけど、それが、どこかで曲っちゃったわけね。つまり、鉛筆を作り、それを刃物で削り、それからあのガリガリと手回しの鉛筆削りを使う、そこまではまだよかった、ところが、パッとさしこむとガーッと行く、これでおかしくなってしまった。どっかで曲ってしまった。
・一切、僕は電車で座ったことがない。たかが15分か20分でしょ。それを大きく足を広げて年寄りみたいに座ってる。歩き方もダッタラダッタラしてね、そういうのを見てると、なるほど、これは植民地だと思うね。歩き方だけで類推するのは乱暴だけど、言葉にしろ、ふるまいにしろ、主体性というものをまったく持ちあわせていない。
・結局、原子力発電がいいとか悪いとかいう前に、もういっぺん、自分たちの生活のあり方、そこのところに戻って考えてみないといけないということです。それが本当に必要なものか、無駄をしていないか。僕らは文明を享受するときに金を払わなきゃいけないわけだけど、それは本当に僕たちにとって必要なものかどうか。僕らはどれほど自分たちの生き方を捨てて、文明を享受しているか。そういうことを、例えば、おしぼり一つ、合成洗剤一つから考えてみればいい。しかも、それは何度も言うけれど、便利なものなんです。

いま日本で起きていること 広瀬隆

・フランスに核廃棄物を莫大なお金を払って引き受けてもらっている。
・とにかく六ケ所村を止めること

おすぎの原発映画案内 杉浦孝明

・『十戒』『レイダース/失われた聖蹟』『ソロモンとシバの女王
渚にて』『博士の異常な愛情』『魚が出てきた日』
アトミック・カフェ』『シルクウッド』『チャイナ・シンドローム
ウォー・ゲーム』『風が吹くとき
日本映画
『原爆の子』『生きていてよかった』『はだしのゲン
太陽を盗んだ男』『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』原発ジプシー
3/14読了
 
◆感想:本間龍『原発プロパガンダ』で触れられていたので読んでみて面白かった。
高木仁三郎さんが原発広告の解説をする記事が勉強になる。
石油火力は重油を使っていて、ガソリンと軽油を精製する際に必ず付随して作られるものなので、
それを石油火力発電で使用することは理にかなっているという、単純なことだが盲点で勉強になった。
広瀬隆さんの記事でも触れられているが、電力会社としては、原子力発電をもう本当は止めたい。無理なことがわかってきた。
一番の難問は核廃棄物をどう処理・保管するかという問題が解決しなかったこと。
それなのに、(惰性で?)推進している理由は、何か制御できない大きな力に巻き込まれてしまっているのかなあとなんとなく思った。
アメリカの意向なのか、これこそがブレーキが効かない資本主義の恐ろしさなのか。
メディアの真っ只中で、この特集を組んだ天野祐吉さんに本当に敬意を表する。