『原子力都市』作者: 矢部史郎 出版社: 以文社

原子力都市

原子力都市

目次
柏崎
柏崎は、穏やかで調和の取れた田園工業地帯である。しかし、柏崎を知る人はみな「なにもない街だ」と言う。この街には「なにもない」。すべてが揃っているにもかかわらず、何もないのだ。人々の関心を惹きつけるような過剰や欠落、あるいは都市が表現する位置とベクトル、それらを示すなにか特徴的な差異を、この街は失っている。あらゆるものがありながら、そのdifference(=差異)が蒸発してしまっている。そして、ぞっとするようなindifference(=無関心)が、街を覆ってしまっているのである。
誰も何も見ていない。身近に起きている異変を、誰も直接に感じ取ることがない。そうして事件が発覚した後になってようやく私たちは、ずっと以前に生起していた異変の断片を、マスメディアを通じて知るのである。問題は柏崎に固有のものではない。この監禁事件(そしてDV事件)を特徴づけている不可視的性格は、原子力都市の一般的規則を示している。
かつて工業都市における情報管理は、嘘や秘密を局所的・一時的に利用するだけで充分だった。しかし、原子力都市における情報管理は、嘘と秘密を全域的・恒常的に利用する。嘘と秘密の大規模な利用は、人間と世界との関係そのものに作用し、感受性の衰弱=無関心を蔓延させる。原子力都市においては、世界に対する関心は抑制され、無関心が美徳となる。能動的な態度は忌避され、受動的な態度が道徳となる。巨大なindifference(非差異=無関心)が都市の新しい規則となるのだ。
身近に起きている現実のひだを、直接に感じ取ることがない。誰も何も見ていない。原子力都市は、無関心を新たな美徳とすることで、生活環境を不可視なものに塗り替えていく。
隔絶され密閉されているのは、原子力施設だけではない。都市生活の全体に、密室的・不可視的環境が蔓延しているのだ。
上九一色村
テクノポリス法」

キャバクラ 自衛隊 アンパンマン
自衛隊員のメンタルヘルス 
男たちの大和』には海がない
「大和」は本当に存在したのか?
砂丘
イメージと物質そのもの
都市を触っていく
京都
MKタクシー
むつ
歓楽街
かつて工業都市の経営者たちは、労働者や地域社会と交渉し、ときに譲歩することを強いられていたが、原子力都市の経営者は、交渉するのではなく管理する。土地を管理し、放射性物質を管理し、情報とイメージと政治を管理し、そうした諸々の領域にわたる管理の蓄積が、原子力産業を支えている。
この管理は、産業に由来する管理ではなく、軍事活動に由来する管理である。事業の決定から膨大な人々を排除するための秘密。異論を挟む余地もないほど現実離れした嘘。原子力化のモデルは、いまやさまざまな領域で参照され、偽装の社会を拡大している。商品の偽装や会計の偽装、法令をめぐる偽装、事業や役職そのものの偽装、そうした偽装をめぐる情報の管理が企業活動の中心に位置するようになるだろう。
秘密と嘘が交錯する中で、管理は暴走する。労働者に対する管理はエスカレートし、神経を摩滅させる労働災害が急増している。モノの生産、職場の人間関係、融資や取引の関係、そして健康状態までが、一括りに「管理」の尺度で測られ、誰もが「管理能力」を要求されるようになる。いまでは「自己管理」や「危機管理」という言葉を耳にしない日はない。人間は「働く者」ではなく、「管理する者」として表現され、新しい疎外にさらされる。嘘や秘密、欺瞞、イメージ操作が、利権と収益の中心を占めるようになるのだ。
これが、工業都市の次に来る原子力都市である。
川口
キューポラ(煙突)のある街』
第三インターナショナル記念塔」
いきいきとした商店街 活力にあふれた図書館 女たちの未来主義
日本ピラミッド
民衆の人類史的想像力
硫黄島
パルチザン
広島
広島は国民国家のかさぶた
核 国家だけが持ちうる技術が、人間を圧倒するのだ。
原爆投下二年後の「平和祭」47年8月6日
両国
レーガンサッチャー、中曽根
70年代への反動は、いきいきとした都市文化を否定し、生気のないガラクタを建設する。
都市生活の血液である美意識は、徹底的に破壊されてしまったのだ。
恐山
恐山は明るくて心が落ち着く場所
圏央道 つくばジャンクション
<多摩>の主婦 反核・反原発運動
安全安心条例で感情が停止させられる 心が死ぬ
<多摩>への反動としての<つくば>
秋田県藤里町
児童殺害事件
倫理とモラルの違い 
倫理が人間の自由に基づき多様なあり方を示すのに対して、モラルは人間への嫌悪に基づき多様性を禁じる
世界遺産」と警察的モラル
厚木 幽霊病院
総論
NANA
労働者→人材 さらなる地位の低下
信頼と協働→不信と監視
無数のナナ
つくばを離れた理由 本物の都市がないから
北方教育運動 農民の子弟をプチブルへ出世させるための教育でなく ただの農民になっていく
農村の領域に閉じること、自律することが、子供たちのいきいきとした知性を爆発させる。この自律の獲得こそが、教育の真髄であるだろう。
開放に抗して、閉じる。閉じて、爆発させる。この思考の内燃機関が、生活者に新たな動力を与える。
酒井勝軍 トンデモの元祖
八王子学園都市 教育に対する裏切り 都市計画のもっとも凶暴な性格
学生が何かを考えようとするとき、彼は必然的に都市的実践へ(そして都市論的実践へ)足を踏み入れていく。
かつて農村の子がきてきの音を知覚したように、私たちは都市を知覚する。
自律的でデモクラティックな都市的実践
あとがき
ミリオン出版 HARDCOREナックルズ KEITAIバンディッツ
7/11読了