マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【イベントメモ】「第3回高円寺黒色討論集会 フランス年金改革反対闘争を語る 現地学生による報告」@まつり太鼓高円寺店

報告者:サキ(パリ第8大学学生)
ゲスト:鵜飼哲(哲学者)
主催:LINEグループ「マフノ」
 
・パリ第8大学=68年5月革命の精神を受け継ぎ、「すべての人に開かれた大学」として、ヴァンセンヌ実験大学センターが設立。エレーヌ・シクスー、ジル・ドゥルーズ、ジャン・フランソワ・リオタール、ミシェル・フーコーアラン・バディウルネ・シェレールなどが教授をつとめた。
・1923年メーデー 大杉栄 サン=ドニ労働会館の集会で演説し警察に捕まる サンテ刑務所
・フランス年金改革 受給開始年齢62歳→64歳 拠出期間43年 2023年9月から段階的に上げる 準公務員の特別制度廃止
・休む権利 長年働いた人には、老後ゆっくりと休む権利がある
マクロン権威主義新自由主義(小さな政府ではない) 80年代ワシントン・コンセンサス 「1989年のベルリンの壁崩壊後、社会主義の敗北が明らかになって以降、IMF、世銀およびアメリカ合衆国財務省の間で広く合意されたアメリカ合衆国流の新古典派対外経済戦略で、「小さな政府」「規制緩和」「市場原理」「民営化」を世界中に広く輸出し、アメリカ主導の資本主義を押し広げようとする動き」
・年金の赤字=富裕層に2%課税すれば賄える
・大学改革→開かれた大学、大学自治の解体
・学生組合 反資本主義
・2022年12月 8つの主要(産業別)労働組合ストライキを表明 23年1月から大規模デモとストライキが始まる 鉄道や電気、教員、放送事業
・毎週 火曜日か木曜日ストライキ 土曜日デモ
・祝祭感がある
・LVMHベルナール・アルノーへの抗議(保有資産2110億ドル(約28兆円)でイーロン・マスク保有資産、約23兆円)やジェフ・ベゾス保有資産、約15兆円)を抜いて世界ナンバーワンの大富豪)
・本当は建物を建てられない公園にLVMHだけ特例で美術館。
ストライキ基金 ストライキ中は基金からお金が支払われる。普段からスト基金をためておく 他の労働者が寄付して助ける
・3月、政府は憲法49条3項を用いて法案をフランス国民議会で強行可決 それの撤回を求めデモがさらに過激化
・仏憲法49条3項=もともとはアルジェリア戦争時、ド・ゴール政権に付与された非常手段 大統領を守るため首相が行う
・国内最大労組「労働総同盟」(CGT)
・2000年代に入ってから警察の目つきが変わった=教育が変わった
・ブラック・ブロック(壊し屋) デモの先頭と最後尾 資本主義的物体を壊す
ジャン・ジュネ「ゴミだらけのパリはなんて美しいんだ」68年 パリ大学ナンテール校(第10大学)
・学生の人種、年齢層の多様性
・メランション派(不服従のフランス)→第6共和制への移行(大統領権限の縮小、直接民主制の導入)
マクロン=民主主義の仮面を被った権威主義。資本の専制を死守する
・フランスの原発事情
・国家観 国家は資本の国家であってはならない
酒井隆史エキストリーム・センター」(タリク・アリ)=極左でも極右でもなく、自らを「中道」と規定し、政治的な対立そのものを否定しながら、ネオリベテクノクラート的な価値観を拡大していく、もっとも不寛容な勢力。極中。 ル・ペンでもメランションでもなく、マクロンこそがポピュリズム ボナパルティズムに近い形
フランス革命は未完成。革命の続きを。
・国民の危機意識
・23年7月6月27日 ナンテールにて北アフリカ系のナイルさんという17歳の少年が警官に射殺される→「暴動」が大爆発
・78年三里塚開港阻止闘争 仏フェニックス原発反対運動
・日本でも全学連はあった 運動のネットワーク
・フランス=基本的に労働組合が強い デモとストライキが同時   
 
◆要約:パリ第8大学現役留学生サキさんによるフランス年金改革反対闘争の報告。それに対する鵜飼哲さんのコメント。
◆感想:黄色いベスト運動以降、フランスの反資本主義運動に関心があるので、現地の生の情報を聞けて勉強になった。
これまでの運動から連続性はあるが、今回のデモの特徴は準公務員の年金についての特例も廃止したので、公務員の組合も反発し、各種ストライキが相次いだということか。
しかしそれでも憲法49条3項で強行採決されてしまう。この条項に限らず、現在の第5共和制という体制はアルジェリア戦争時を前提にした、民主主義とは相容れない時限的で強権的なものだということがわかった。
年金改革反対デモが激しかったところに6月にナイル少年が警官に射殺される事件が起きて、レイシズム反対・警察による暴力反対が加わって大暴動になった感じか。
 
これらのデモや運動について、結局負けるじゃんという無力感を植え付けられてしまうか、それとも、社会運動・民衆運動はいつでも綱引きのようなもので、0か100かじゃなくて、抵抗があるからこそ権力の方も簡単にはできないという緊張感と、一定の譲歩を引き出していて、意味があるという考え方と2通り受け止め方があると思う。後者が教科書的な回答だとは思うのだけど、自分は無力感に陥ってしまいそう。
それでもフランスには日本とはレベルが全く違う抵抗の文化と歴史があるとは思った。
 
こういう貴重なイベントを公開にしてくださるのはとても有り難い。
登壇者のお二人と主催の皆様に深く感謝したい。
 
こちらの記事が参考になった。
www.labornetjp.org