マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【映画メモ】マチュー・カソヴィッツ監督『憎しみ』(1995年 フランス)

・パリ北西 シャントルー= レ= ヴィーニュ 郊外(バンリュー)
・ヴィンツ(ユダヤ人)、サイード(アラブ系)、ユベール(黒人ボクサー)
・1993年マコメ・ンボウォレ殺害事件
・ドラッグ
・屋上のシーン
・トイレのシーン
・マンションのシーン
・警察の暴力
・ギャラリーのパーティーのシーン 「階級意識」 階級によって生活のあり方や人間観や世界の見え方そのものが異なる
・ジャン=マリー・ル・ペン 1972年に国民戦線(Front national)を結成し党首になる
・スキンヘッズ 移民排斥運動
・ビルから飛び降りた男 まだ大丈夫、まだ大丈夫、まだ大丈夫 墜落
note.com
こちらのnoteが大変参考になった。以下引用。
・1970年 ジャン・ポール・サルトゥル「資本制諸国とその国内植民地」
・1971年 サルトル第三世界は郊外に始まる」
・1986年(昭和61年)12月5日から6日にかけての夜、パリで、大学改正法案に反対するデモを取り締まる共和国保安機動隊 (Compagnies républicaines de sécurité)の2名か3名の警官たちの暴力により、デモと無関係の不動産業高等学校(École supérieure des professions immobilières)の22歳の学生マリク・ウセキヌ(Malik Oussekine、1964年10月16日~1986年12月6日)が死亡した。
アルジェリ移民二世のウセキヌはローマ普遍教会の神父志望者だった。
6日から10日まで、警察に抗議するデモが連日おこなわれた。
・1993年(平成5年)4月6日、朝4時半頃、仲間2人とタバコ「ダンヒルDunhill)」120カートンを盗んだ窃盗常習犯のザイール出身の20区在住の17歳の黒人マコメ・ンボウォレ(Makomé M'Bowolé)が逮捕された。
同日、パリ18区のグランドゥ・キャリエール警察署(commissariat des Grandes-Carrières)で、38歳のパスカル・コンパン警部(l'inspecteur Pascal Compain)はマコメ・ンボウォレに自白を強いるため、弾が入っていない銃で脅そうとして、誤って弾の入った銃で頭部を撃ち、容疑者を死亡させた。
これに対する暴力的な抗議デモがグランドゥ・キャリエール警察署の前で3日間おこなわれた。
・2005年(平成17年)10月27日、フランスのクリスィ・ス・ブワ(Clichy-sous-Boi)の変電所で、警察から逃れた移民のチュニジア系の17歳の少年ズィエドゥ・ベンナ(Zyed Benna)とマリ系の15歳の少年ブナ・トゥラオレ(Bouna Traoré)が感電死した。
これがフランス各地での移民暴動の発端となった。
・2015年(平成27年)1月7日、11時30分、パリの週刊風刺新聞『シャルリ・エブド(Charlie Hebdo)』の本社にイスラーム過激派テロリストが乱入し、編集長、風刺漫画家、コラムニスト、警察官ら合わせて12人を殺害した。
このテロリズムに抗議し、表現の自由を訴えるデモがフランスおよび世界各地で起こった。
・2015年11月13日パリ同時多発テロ事件
 
◆感想:とても面白かった。パリ旅行の前に観たかったが、配信もレンタルもなく見れず。帰国後、この映画を教えてもらった会社の同僚がDVDを持っているとのことでお借りして観た。
前半はバンリュー地区の生活。後半はパリへの遠征。3人の若者の友情ものとしても見れる。
パリで警察に捕まって、ひどい暴行と侮辱を伴う尋問を受けるシーンが辛い。
ジャン=マリー・ル・ペンの名前が明確に出てくる。
自分たちの国の都合で移民を入れながら、少し不景気になると排斥運動を始めるという、
マッチポンプのような状況に、当事者(2世)たちが怒りを感じないはずがない。
根源的には大航海時代以来の植民地と奴隷制の問題がある。
奴隷制は形式的には廃止されているが、現実は他の形に変わって、差別は固定化している。
資本制とは弱者からの搾取なくしては成り立たない体制。
一夜の儚い体験の後に若者は命を落とした。社会派映画だが、俳優がよく映画的詩情がある。
メイキングも少し見たが、監督は当時まだ20代で才気煥発という感じだ。