マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【読書メモ】橋本健二『新・日本の階級社会』(講談社現代新書 2018年)

目次

・「格差社会」2006年新語・流行語大賞
・「生涯未婚率」
貧困層自民党を支持する矛盾
自民党が軸足を富裕層に明確に移した。富裕層の政党
・「階級社会」→明確な「階級社会」
・2015年SSM調査(社会階層と社会移動全国調査 (The national survey of Social Stratification and social Mobility) )と2016年首都圏調査

第1章 分解した「中流

1.「一億総中流」の虚実

・1977年朝日新聞夕刊 村上泰亮「新中間階層の現実性」。90%が中流意識。高度経済成長を通じて生活水準は向上し、所得格差も小さくなった。ブルーカラーとホワイトカラーの差も不明瞭になった。都市・農村を問わず「都市化」が進み、生活様式も均質化した。マスコミと大衆教育が、人々の意識を平準化した。
・ミスリードの側面も多分にある。

2.経済格差と「中流」意識の関係
3.分解する「中流意識
4.深く進行する「意識の階層化」

貧困層の支持政党。なし>自民>公明>民主>共産 共産がインテリ向けになっている

5.広がる「格差拡大肯定・容認論」と「自己責任論」

自民党が「格差拡大肯定・容認論」政党に変化した。
自己責任論低所得者層まで浸透
・自己責任論が、格差拡大肯定・容認論の最強のよりどころとなっている

6.格差社会の現段階

・勝ち組/負け組

第2章 現代日本の階級構造

1.社会の「かたち」を描く
2.現代社会の階級構造

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・資本家階級/新中間階級/労働者階級 旧中間階級

3.現代日本の階級構成

・農民 1950年 45.2%→2010年 3.2% 農民が労働者へ 
・この時期の日本は、巨大な農業国 

4.階級間格差の推移と労働者階級の分裂

・労働者階級内部で正規労働者と非正規労働者が異質性を増し、労働者階級全体が二つに分裂しはじめているという、大きな構造的変化が起きている。
非正規労働者→「(労働者)階級以下」=アンダークラス
アンダークラスを論じた著書。ラルフ・ダーレンドルフ『法と秩序』、スコット・ラッシュ『再帰的近代化』、ジョン・ケネス・ガルブレイス『満足の文化』。

第3章 アンダークラスと新しい階級社会

・4+1=5つの階級

1.5つの階級のプロフィール

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・(1)資本家階級(経営者・役員)就業人口の4.1% 世帯年収1000万、平均資産総額4863万
・(2)新中間階級(管理職・専門職・上級事務職)20.6% 高学歴、高い有配偶率
・(3)正規労働者 2192万人 35.1% 年収男性421万、女性293万 自民党支持24.1%、民主党4.7%、共産党1.7%
・(4)アンダークラス(パート・アルバイト・派遣労働者、主婦パートは含まない)929万人 就業人口の14.9% 激増を続けている 女性比率43.3% 平均個人年収186万 貧困率38.7% 女性48.5% 平均資産1119万 持ち家のない人315万 資産ゼロ31.5% 何よりもきわだった特徴は、男性で有配偶者が少なく、女性で離死別者が多いことである。男性の有配偶者はわずか25.7%で、未婚者が66.4%に上っている。アンダークラスの男性が結婚して家族を形成することが、いかに困難であるかがよくわかる。
・(5)旧中間階級(自営業者と家族従事者)806万人 下層的性格を強めるようになっている 自民党支持率35.5%

2,仕事の世界

・ハリー・ブレイヴァマン「構想と実行の分離」実行のみに関わる労働は、人の手足となって行う労働であり、労働それ自体に意味を感じることが難しい。マルクスはこのような労働を「疎外された労働」と呼んだ。

3.生い立ちと学校での経験

世襲的な傾向
アンダークラスには最終学歴を中退した人が多い。12.0%。他の階級の平均の約2.2倍。
・学校でいじめを受けた経験31.9%

4.健康状態の階級差

・健康状態のよくない人23.2%
・体格にも相関がある
うつ病や心の病気 その他の階級が7-8% アンダークラスだけ20%

5.ソーシャル・キャピタルと不安

ソーシャル・キャピタル(社会資本、人間関係資本)とは、最近よく使われるようになった用語で、人々のもつ他者との信頼関係や人間関係のネットワークを指すものである。「社会資本」と訳してしまうと、道路や港湾のような社会基盤を指す言葉と混同されやすいので、このようにカタカナで表記されることが多い。ソーシャル・キャピタルは、人々の生活を支え、不安を和らげ、さまざまなストレスやトラブルから人々を守る効果をもつとされている。
アンダークラス友人の数、町内会や同窓会への参加率、趣味やスポーツの集まりへの参加率、いずれもずば抜けて低い。

6.哀しみのアンダークラス――4対1の階級構造

★いまや資本家階級から正規労働者までが、お互いの利害の対立と格差は保ちながらも、一体となってアンダークラスの上に立ち、アンダークラスを支配・抑圧しているといえないだろうか。これは、いわば4対1の階級構造である。
アンダークラスは社会の底辺で、低賃金の単純労働に従事し、他の多くの人々の生活を支えている。長時間労働の外食産業やコンビニエンスストア、安価で良質の日用品が手に入るディスカウントショップ、いつでも欲しいものが自宅まで届けられる流通機構、いつも美しく快適なオフィスビルやショッピングモールなど、現代社会の利便性、快適さの多くが、アンダークラスの低賃金労働によって可能になっている。しかし彼ら・彼女らは、健康状態に不安があり、とくに精神的な問題を抱えやすく、将来の見通しもない。しかもソーシャル・キャピタルの蓄積が乏しく、無防備な状態に置かれている。他の四階級との間の決定的な格差の下で、苦しみ続けているのがアンダークラスである。この事実は、重く受け止める必要がある。

第4章 階級は固定化しているか

1.豊かさの連鎖と貧困の連鎖

・「社会移動研究

2.世代間移動の全体的な傾向
3.なぜ資本家階級と労働者階級は固定化したのか

・まとめ 資本家階級出身者は、資本家階級になりやすくなった。これに対して新中間階級出身者と労働者階級出身者は、資本家階級になりにくくなった。普通の勤め人の子どもが、企業内で出世するか、あるいは独立して、資本家階級になるといった移動は、かつてはある程度まで存在していたが、近年ではそのようなチャンスが閉ざされてしまったのである。

4.新中間階級出身者が新中間階級になりにくくなった理由

・60年代生まれ=安定成長期からバブル期にかけて就職の時期を迎えた世代 
・70年代生まれ=就職氷河期世代(ロスジェネ)
・新中間階級出身のロスジェネが非正規(アンダークラス)に

5.女性の世代間移動

・女性は、自分の階級所属とともに、あるいはそれ以上に、夫の階級所属の影響を受ける。だから女性内部の格差は、本人の階級所属とともに夫の階級によって、さらにはそもそも夫がいるかいないかによっても影響されるという、複雑な構造をとることになる。

第5章 女たちの階級社会

・男性以上に厳しい格差の構造

1.妻と夫の階級所属

・夫より収入が多いケースわずか6.0%、等しいケース7.8%。86.2%は夫より収入が少なく、しかも68.8%は夫の半分以下。
・夫婦の階級所属の一致度はかなり高い

2.資本家階級の女たち
3.新中間階級の女たち
4.労働者階級の女たち
5.アンダークラスの女たち

非正規労働者で配偶者なし 全女性の8.3% 平均年収169万 平均世帯年収304万 貧困率42.8% 一人暮らし20.2% 親と同居45.3% 55.1%が離死別 56.6%に子ども 41.1%は子どもと同居 抑うつ傾向 ソーシャル・キャピタルにも恵まれない 

6.旧中間階級の女たち
7.女たちと階級社会

・ライフスタイルは分岐するが、だいたい17くらいの類型に収まる

第6章 格差をめぐる対立の構図

1.若者は保守化しているか
2.格差に対する意識

・所属する階級による意識の違い 自己責任論=自らの階級を擁護し、格差を拡げてきた政府や企業を免罪。
・「格差拡大認識」「所得再分配支持」「自己責任論」=政党支持とも密接な関係がある。
・格差拡大を容認し、自己責任論を強く支持し、所得再分配をかたくなに拒否するのは、自民党支持者の特徴である。

3.「排外主義」「軍備重視」と格差に対する意識の関係

・「排外主義」「軍備重視」→アンダークラスで拡がっている=ファシズムのきざし

4.階級・格差意識・政治意識のねじれた関係

・伝統的な左翼「社会主義革命仮説」+戦争責任追求とアジアへの贖罪意識
・従来の枠組みの崩壊=新中間階級と正規労働者は、むしろ貧困層に対して冷淡であり、アンダークラスに対して敵対的
アンダークラスは、ソーシャル・キャピタルの蓄積に欠けており、相互に連帯するような機会をもたない。身体的にも、また精神的にも問題を抱えていることが少なくない。そして何よりも、格差に対する不満と格差縮小の要求が、平和への要求と結びつかず、排外主義と結びつきやすくなっている。

第7章 より平等な社会を

1.格差縮小への合意を作るためにはどうすればよいか

>>★労働者階級の矛先をそらすため、労働者階級を正規/非正規に分割し、これを対立させた。<<

2.合意形成への道:所属階級・グループによる違い

・合意形成への道 パート主婦、専業主婦層を味方につける。新中間階級と正規労働者に向けて、自己責任論はまやかしであり、間違っていると説得する。

3.格差拡大の弊害

・(1)アンダークラス貧困層の問題 生存権をはじめとする、人権が十分に保障されていないという点でそれ自体が問題
・(2)社会的コストの増大 犯罪、社会不安、ストレス 社会保障費(生活保護費)の増大
・(3)格差の固定化と社会的損失 本当は才能ある人、子どもが活躍できない

4.自己責任論の罠

・自己責任論は、格差社会の克服を妨げる強力なイデオロギーである
・比較的最近になって出てきた言葉 きっかけは金融ビッグバンで、自己責任の投資
・大きくわけて2つの問題 ①そもそも、自分に選択する余地がない→非正規雇用化は社会的な強制
★②自己責任論は、貧困を生みやすい社会のしくみと、このような社会のしくみを作り出し、また放置してきた人々を免罪しようとするものである。貧困を自己責任に帰すことによって、非正規雇用を拡大させ、低賃金の労働者を増加させてきた企業の責任、低賃金労働者の増大を防ぎ、貧困の増大を食い止めるための対策を怠ってきた政府の責任は不問に付されることになる。自己責任論は、本来は責任をとるべき人々を責任から解放し、これを責任のない人々に押しつけるものである
1999年 経済戦略会議答申「日本経済再生への戦略」 「日本の経済成長を妨げているのは「過度に平等・公平を重んじ」「頑張っても、頑張らなくても、結果はそれほど変わらない」日本社会のあり方である。だから日本は、「行き過ぎた平等社会」と決別し、「個々人の自己責任と自助努力」をベースとした「健全で創造的な競争社会」を構築しなければならない」
・この答申の発想は、「努力した人が報われる公正な税制改革」と称して、富裕層減税と低所得者増税を提言していることに、典型的にあらわれている。
・答申は、所得税最高税率を引き下げ、低所得者の税率を引き上げて税率をフラット化すれば「努力した人が報われる」ようになる、という。つまりここでは、「努力した人」と「高所得者」が同一視されている。所得の多い人は「努力した人」であり、所得の少ない人は「努力しなかった人」なのである。ここには、努力の程度は所得によって、より一般化すれば社会的な成功の程度によって測ることができるという、極度に単純な想定がある。
★ごく一般的にいえば、「努力した人が報われる」ことが必要であることはいうまでもない。だから非正規労働者として働くアンダークラスの努力は、報われる必要がある。しかし「低所得者」=「努力しなかった人」という想定の下では、彼ら・彼女らが報われることはない。ここでは「努力した人が報われる社会」というスローガンが、単に格差を正当化するためのイデオロギーとなっているのである。

5.格差をいかにして縮小するか

・(1)賃金格差の縮小 均等待遇の実現 すでにEUでは雇用形態による差別が法的に禁止
最低賃金の引き上げ
・労働時間短縮とワークシェアリング 正規雇用の労働時間を短縮すれば、正規雇用の人数を増やさなければいけなくなる
・(2)所得の再分配
累進課税の強化
所得税最高税率はもともと75%だったが、1984年に70%、87年に60%、消費税が導入された89年に50%、そして99年には37%まで引き下げられた。富裕層を対象とする減税が続けられてきたのである。他方では、逆進性の強い消費税の導入と税率の引き上げ、低所得者の住民税率の引き上げ、同じく高所得者の住民税率の引き下げなどが行われてきたから、税の累進性は大きく損なわれた。
所得税最高税率その後、2007年40%、2015年45%。
法人税 かつては40% いまは23.2%
・税が累進的になっていれば、税を徴収する前と後を比べると、徴収した後の方が格差が小さくなっているはずである。OECDの行った国際比較によると、OECD諸国の平均値で、所得格差の大きさを示すジニ係数は、税を徴収した後の方が0.034小さくなっている。ところが日本の場合、税を徴収した後のジニ係数は、徴収する前より0.003小さくなるに過ぎず、この値は主要なOECD諸国のなかで最低である。日本の税制は、所得再配分の機能をまったく果たしていないのである(OECD「不平等化の進行:OECD諸国の所得分配と貧困」)。
・累進税のメリットは、所得再分配のもっとも強力な手段であること、また支払い能力は所得が高くなるほど加速度的に高まるから、現実的にも税を徴収しやすいことである。しかし、それだけではない。それは社会的にみて、きわめて合理的である。高所得者は、本人の努力や才能だけで富を得たわけではない。富を得るためには、社会が安定していること、質の高い教育を受けた労働者がたくさん存在すること、交通や運輸・通信などの社会資本が充実していることなどの条件が揃っている必要がある。そしてこれらは、政府が税金を使うことによって実現されている。だから高所得者とは、税金からもっとも多くの利益を得る人々なのである。だとすればその分、多くの税金を負担するのは当然だろう。この意味で累進課税は、きわめて合理的な制度なのである。
・トマ・ピケティ 「累進課税の引き下げが大企業経営者の報酬を急騰させた。」
・消費税や社会保証制度にも累進課税の考え方を導入する必要がある。
・資産税の導入
・不動産についてはすでに固定資産税があるから、金融資産に対する課税を新たに導入すればよい。
・不動産は課税されるのに金融資産は課税されないという、不公平を是正することにもなる。
・資産税はこれまで、ヨーロッパの多くの国で導入されてきた。しかし、資産に課税すると富裕層が海外へ逃げる、あるいは資産が国外に流出してしまう、という批判があり、アイルランド、オランダ、スウェーデンなどが、これを理由にいったん導入した富裕税を廃止している(山口和之「富裕税をめぐる欧州の動向」)。最終的には課税回避を防ぐため、国際的な枠組みを作る必要があるだろう。
・これについてピケティは、「世界的な資本税」を提案している。彼によると、これは資産に対して世界的な枠組みで導入する累進課税であり、これによって不平等が果てしなく拡大するのを防ぎ、グローバル金融資本主義に対する民主主義のコントロールを取り戻すことが可能になる。税率についてピケティは、100万ユーロ(約1億1500万円)以下については非課税とし、100万ー500万ユーロ(約5億7500万円)に1%、500万ユーロ以上には2%課税するという案を例示している。これをEU加盟国全体に適用した場合、影響を受けるのは人口の2.5%で、税収はGDPの2%程度になるという。
生活保護制度の実効性の確保
・今日の日本では、生活保護制度が機能不全の状態にある。2007年捕捉率わずか15.3%。
スウェーデン82%、ドイツ64.6%、フランス91.6%、英国40-90%
・2つの原因。①受給条件が厳しすぎること②「水際作戦」
・①受給条件でとくに問題なのは、預貯金である。原則として生活保護申請時に預貯金があってはならず、最大でも最低生活費の1ヶ月分程度までの預貯金だけを認めるとされている。ひとり暮らしなら約10万円、家族がいてもせいぜい20数万円程度だろう。このため収入が少ないにもかかわらず、預貯金があるために生活保護を受けられない世帯がきわめて多い。
・預貯金は生活費に充てるためだけにあるのではない。急に病気になったときの備え、近く進学を迎える子どもの学費、高齢の家族がいる場合は葬儀のための費用、その他急な出費が必要になったときのためにも、預貯金は必要である。
・ちなみに英国では、1万6000ポンド(260万円)以上の貯蓄があると保護を受けることができないが、8000ポンド(130万円)以上1万6000ポンド未満の場合は減額されるものの保護を受けることができ、8000ポンド未満なら満額を受け取ることができるという。日本でも、せめて100万円くらいの貯金は認めるべきだろう。
・②水際作戦 自治体が水際作戦に走る最大の原因は、生活保護費の財源の4分の1が自治体の負担になっていることだろう。生活保護費がかさむと自治体財政が苦しくなるわけだから、制度が自治体を水際作戦に追いやっているといっても過言ではない。生活保護制度は、憲法で保障された生存権、つまり「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を守るためにあるのだから、全額を国が負担すべきだろう。自治体の財政状況によって、生存権が保障される地域とされない地域が出てくるなどということがあってはならないからである。
ベーシック・インカムの導入 
・全国民一律、審査が不要なため、事務コストが削減できる。シンプル。失業保険、基礎年金、子ども手当などがまとめられる。
・技術革新に伴う、必要労働量の減少。ケインズマルクスの主張。
・(3)所得格差を生む原因の解消
相続税の引き上げと、教育機会の平等化。
・「機会の平等」論=機会が平等なら格差はしかたない→現実には全然実現していない。
・まず遺産の有無と大きさ
・教育機会の平等の確保 奨学金制度の大幅な拡充 教育のアファーマティブ・アクション低所得者層の学生を一定数受け入れる

6.「非階級社会」の実現へ

・✕「無階級社会」「階級社会」○「非階級社会」
・まず、格差を縮小することについての合意形成。
・著者の新中間階級(民主党政権)への期待が裏切られた失望(『現代貧乏物語』(2016年))
リベラル派の結集を 「格差縮小」「再分配推進」の勢力を結集する
自民党の弱点。排外主義と軍備重視に凝り固まった特殊な人々しか、強固な支持基盤になっていないこと
格差社会の克服という一点で、弱者とリベラル派を結集する政治勢力の形成。格差社会の克服は、したがって日本社会の未来は、ここにかかっているのである。
 6/17読了
◆要約:それまで日本の階級構造は資本家階級ー新中間階級ー労働者階級と旧中間階級の4つの構造だったが、90年代くらいから労働者階級が正規労働者階級と非正規労働者階級(アンダークラス)に分裂した。アンダークラスは「自己責任論」の下に、他の4つの階級から蔑まされている。未婚率も飛び抜けて高く、ソーシャル・キャピタルも低く、鬱の人が非常に多い。最終章は累進強化や資産税など格差縮小のための方策。
◆感想:そうは感じていたが、私自身がアンダークラスだと客観的に認識できて為になった。資本家階級は労働者階級の不満の矛先を逸らすためにわざと労働者階級を分割して正規と非正規で争わせていると感じた。アンダークラスはお金がない上に、ソーシャル・キャピタル(人間関係資本)も低いことは身につまされる。私自身もともと少なかった友人を2年前から1人また1人と失っており、非常に孤独を感じている。アンダークラスソーシャル・キャピタルを少しでも増やすサークル活動のようなものを、自分のためにもしたいと思った。一億総中流から格差社会に移ったターニングポイントというか象徴として、1999年の経済戦略会議の答申「日本経済再生への戦略」が出てくる。またここでも竹中平蔵がでてきた。しかも『経世済民―「経済戦略会議」の180日』という本を出している。どこが経世済民なのか。日本で一番面の皮が厚い最悪の人間だなと思った。最終章の資産税や累進強化は本当に採用するべき政策。しかし野党第一党である立憲民主党はここでいうと新中間階級と正規労働者階級の政党なので、むしろアンダークラスと対立している面がある。連合がその象徴。ここを乗り越えて、本物の格差解消・再分配政党が生まれなければならない。