マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【授業メモ】KUNILABO春期特別講座 白井聡先生『近代資本主義システムの動揺、その焦点——国家と貨幣』第2回

前回のまとめ

・ロシアによるウクライナ侵攻
・SWIFT(国際銀行間通信協会)からロシア排除
ロシア・ルーブル大暴落 1ルーブル=1.5円→1円
・貴金属に交換する動き
・ジャベリン 対戦車砲 1機1000万 1発800万 自動追尾ミサイル
・「有事のドル」 本当に安心できるか?
・国家債務増大の起源はニクソン・ショック(管理通貨制度)
・金兌換=自然物による制約を受ける → それがなくなった いくらでも刷れる
・貨幣理論の2種類の系譜 貨幣商品説と信用貨幣説
・商品説=貨幣自体に内在する価値があるんだ。一番わかりやすいのが金貨・銀貨。
マルクス資本論』もこちらの説をとる。金やら銀やらを掘り出すために労働が必要。
・信用説=お金に貴金属のような実体を置く必要はない。お金は借用書なんだ。紙幣。開き直られたら終わり。
・信用=国家の信用。軍票。例えば豚を徴発する。裏付けは暴力。
・貨幣国定説=信用貨幣説の代表的なもの。
・ポイントは税金。この軍票で税の支払いができるか。
・ツケ払い 木簡に正の字を書いていく=借用証書
・貨幣が必要になるのは、赤の他人とやり取りするとき。
ニクソン・ショック以降はある意味、信用貨幣説になった?
・仮想通貨=国家の後ろ盾なしに信用を調達できるんだという実験。
・圧倒的に経済学で優勢なのは商品説。

矛盾の焦点としての中央銀行

債務危機の進行と並行して中央銀行の理念(=独立性)が崩壊
アベノミクス以降の日銀が代表例 白川方明黒田東彦
ギリシャ危機時の欧州中央銀行(ECB) 金融緩和

中央銀行という謎

・本当に独立性なんてあったの?

中央銀行の任務と理念

・任務・・・通貨の供給と決済サービスの提供(インフラを提供する)、金融システムの安定性確保、金融政策の運営
・追求する目標・・・金融秩序の維持、物価の安定、完全雇用FRB)→だんだん目標の高度化→価値中立性を保つのが難しくなる
・理念・・・自立性、不偏不党=イデオロギー、価値観を持たない
・選挙に勝ちたい党派としては、いつだって金融緩和をしてバラマキをやりたがる

中央銀行という謎(役所なのか営利企業なのか?)

・きわめて高い公共性・・・事実上の行政機関
・その成り立ちの私的性格・・・行政機関ではなく、特殊な銀行(私企業)にすぎない
・日銀(のみならず世界中の中央銀行)のお手本はイングランド銀行
・1銀行に過ぎなかった。当時はそれぞれの銀行が発券。発券独占は創立の150年後の1844年
・日銀は国家主導で作ったが、わざわざ私企業的な性格をもたせている

中央銀行の逆説的性格

・政府からの独立性=反民主主義的な性格 専門的見地に立って、できないものはできないと言わなければならない
・行政機関でないがゆえに、理念に忠実でいられる
人事院公正取引委員会、検察や裁判所に似ている しかしこれらは民営化されない
・ヌエ的な存在 不思議な性質

中央銀行の受動性と能動性

伝統的理論

中央銀行の根源的に受動的な性格・・・経済活動のプレイヤーではない、ただサポートする存在

現代の中央銀行の現実

中央銀行に能動的な性格を付与・・・景気の浮沈に対して責任主体とされる
・サッカーに例えると審判の役割→プレイヤーへ
アベノミクス前のリフレ派の日銀批判=「もっと介入せよ」
・もっと能動的な役割を期待されるようになった

質問タイム

・権力の肥大化、暴走 権力の質が変わった 現代国家そのものの性質の変化
・事実上は財務省の植民地だった たすき掛け人事 日銀プロパーと財務省(大蔵省)出身者の順繰り
・日銀法改正1997年 前は1942年 改正で初めて自立性が書き込まれた
 
◆感想:見逃し配信で視聴。
なかなか面白かった。とりあえず、貨幣商品説と信用貨幣説の違いがよくわかった。
ここでいう信用とは国家の信用。それは根源的には暴力に対する信用。
暴力というのは無から有を生み出すのだなと、変に感心した。カツアゲなど。
中央銀行の謎。中立的(インフラ的)な存在だったはずが、最近では主体性を求められている。
中央銀行の話は次回へ続く。