マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【授業メモ】KUNILABO春期特別講座 白井聡先生『近代資本主義システムの動揺、その焦点——国家と貨幣』第3回

前回の続き

・ロシアのデフォルトの懸念
プーチンの勝算 食料、エネルギーが自給自足できる 中国、インドとの関係
中央銀行の役割 伝統的理論(中立、受動的)→責任主体へ(能動的)リフレ派による批判

アベノミクスにおける政権と日銀の攻防

・リフレ派経済学者によるインフレターゲット論の主張・・・「失われた20年の元凶」
・安倍政権によるリフレ派理論の採用・・・「異次元金融緩和によるデフレからの脱却」
・白川日銀の抵抗 我々は審判 ゲームを面白くするのはプレイヤー 経団連財務省も抵抗 しかし、自信の喪失とメディア攻勢のため屈服 「アベノミクスによって日本経済大復活」のような煽り
・黒田日銀の誕生(政権による日銀の制圧)→「中立性」の霧消、インフレ政策は奏功せず、政権による日銀の私物化へ(東証の買い支え)
・2012年から中銀資産が急拡大
・まさに恐れられていたことが起きた

アベノミクスは、なぜ失敗したのか

・異次元金融緩和の狙い・・・異次元の買いオペ(市中銀行からの国債買い上げ)によってマネタリーベースを拡大、増えたマネーが市中銀行から融資され経済好転
・禁じ手たる財政ファイナンス 国債の貨幣化
・リフレ派の主張:日本経済の復活 批判派の主張:ハイパーインフレの危機 →どちらも発生せず
・実態:増大した資金は日銀当座預金残高に積み上がり(ブタ積み)、滞留、為替操作(円安誘導)のみ
・ブタ積み→要するに、融資に回らなかった。貸すべき相手が見つからない

再び問われる中央銀行とは何か?

MMT理論・・・中央銀行は純然たる行政機関であり、かつ経済秩序の創生者である
アベノミクス・・・事実上のMMT理論の導入だった?
中央銀行・・・【公】と【私】の結節点
・近代資本主義経済・・・【私】的利益を追求する経済主体による「欲求の体系」(ヘーゲル
・近代公民国家・・・脱人格化された【公】的領域(家産国家→租税国家)北一輝 前近代国家は私物だった、それが近代以降はじめて「みんなのもの」(【公】)になった
・しかし、【公】的領域は、つねに【私】益により脅かされる運命にある(一般意志≠特殊意志の総和:ルソー)宿命的な困難
中央銀行は、各経済主体による【私】益の自由な追求を可能にするという【公】的責務を負う
ケインズ主義以降・・・近代公民国家が【公】なるものとして「欲求の体系」に介入する(ルソー的困難の増大)、中央銀行の役割(受動→能動)
ケインズ、貨幣はもともと人工物なんだから、人間の都合で操作していいんだ
・管理通貨制度の導入・・・債務危機へ、標準的貨幣観との矛盾 緊縮財政の【私】的性格、積極財政の【公】的性格
・階級対立も含んでいる
・共産圏の中央銀行はどうなっているのか 中国→中国人民銀行 ソ連→ゴスバンク 国策
 
◆要約:アベノミクスによる、日銀総裁挿げ替え→異次元金融緩和によって中央銀行の独立の原則は崩された。結果としては日本経済の復活はならず、日銀のバランスシートが膨れ上がったのみ。これから各国が利上げしていくこの先にどういう結末になるか。
◆感想:結局金融政策で経済成長をということ自体に無理があった?お金はあっても、貸し出す先の将来有望な企業もない。
現状は賃金は上がらず、円安による物価高でスタグフレーション一直線。
日銀が日経平均東証株価指数ETFを買いまくることはどういう意味をもつのか質問したかったが頭が回らなかった。