1.模倣の欲望
ルネ・ジラール(1923-)
南仏アヴィニョン パリ→インディアナ→スタンフォード大学
「欲望の現象学」(1961)
「ドストエフスキー」(1963)
「暴力と聖なるもの」(1972)
「世の初めから隠されていること」(1978)
「身代わりの山羊」(1982)
1)本能的欲求と欲望
・欲望を自発的なものと考えるのは「ロマン主義の虚偽」である
・人間の欲望は他者の欲望の模倣から生じる
・欲望における「媒介者の影響」
本能的欲求の二項図式 媒介者なしに生じる欲求need
主体→対象
欲望の三項図式 媒介者を通じて生じる欲望desire
主体 モデル 対象
2)模倣の欲望と模倣の欲望
モデル=ライバル
同じものをとらない あえて外すこと(逆をいく)も「模倣の欲望」
内的媒介 願望可能圏が重なるとき 嫉妬 憎しみも産む
外的媒介 充分な距離がある 尊敬 憧れ
「自分が自分の人生を選んでいる」は実は違う
3)現代社会
①アレクシス・ド・トクヴィルの洞察
「平等のパラドクス」 階級社会だと不満は沸かない
②ジラールの洞察
・形式上平等だが実質的な差異が目につく社会→モデル=ライバル関係が生じやすい
・模倣の欲望→相互模倣→主体とモデルが「分身関係」に
・物質的欲望の充足→欲望の抽象化:承認、尊敬、名声、人気
4)模倣の欲望を超えて
①模倣の欲望と暴力
・人間は模倣することで学ぶ→成長
・模倣の欲望は人を「モデル=ライバル」(闘争、敵対、暴力)を導く可能性がある
②福音書(聖書)のおしえ
・罪の誘惑 スカンダロン 病的な魅惑の尽きることのない源
・「キリストに従うということは、模倣の欲望を断念することです」 外的媒介 遠い尊敬
◆「モデル=ライバル関係」からの解放
(1)客観化 自覚 自尊心の乗り越え
(2)他者(モデル)が自分と異なる存在であることの自覚 内的媒介→外的媒介
(3)意識的模倣=学習
2.夏目漱石の個人主義
1)講演「私の個人主義」大正3(1914)年
「他人本位」「イミテーション」→「自己本位」
他人は関係ない
内なる「自然」に従う
利己主義 弱肉強食の問題 same placeをoccupyすることはできない
「こころ」(1914)
作田啓一「個人主義の運命」
Kにとって「御嬢さん」は生命=「自然」の象徴